国内外における原皮の需給バランスの悪化により、国内の畜産・食肉産業を支えてきた国内の原皮業界は厳しい経営環境にさらされている。国産食肉の安定供給のためにも、と畜業務の出口部分を担う原皮事業の安定継続は不可欠だ。

こうした背景もあり、東京食肉市場や大阪市食肉市場をはじめ各地では関係者の理解を踏まえ牛原皮価格を改定する動きがみられた。そして豚原皮についても、今回、東京食肉市場が7月20日と畜分から豚原皮価格を従来の1頭当たり10円(40kg以上)を2円に価格改定を行うこととなった。

牛原皮と比べて国際シェアは高いとされる日本の豚原皮だが、国内CSF(豚熱)からの需要回復が見られないなかで、今回の世界的な新型コロナウイルス感染症のまん延の影響を受け、今春以降、輸出価格が大きく下落している。直近の6~7月は過去3年で最安値にあるとされる。

牛原皮と同様、豚原皮についても原皮事業がストップした場合、各地での一連のと畜業務が滞り、ひいては出荷者を含め国内養豚産業にも影響しかねない問題となる。上述の場合、日本の豚原皮の国際シェアは高いため需給調整による対処策を講じることで需給バランスの改善を図ることができるが、実需者である国内外タンナーの需要低下問題も含め、その需給調整をどのような形で講じていくべきか、原皮事業者だけにとどまらず、行政(国、地方自治体)や生産者、食肉市場会社など関係者を含めた抜本的な対策が求められる事態にある。

東京芝浦原皮協同組合(林英彦理事長)によると、2017年1月に867円あった豚原皮の輸出価格(FOB/枚)は、18年から下落傾向となり、2019年2月に251円まで値下がりした。こうした状況を踏まえ、各地の食肉市場会社も適宜、原皮価格の改定を行ってきた。その後、輸出価格は2019年2月を底値に、2020年2月には464円を付けるまで回復の途にあったが、その後、新型コロナの影響で再び値下がりが始まり、5月には314円まで値下がりしている。関係者のヒアリングによると、6月と7月は220円程度まで下落しているという。17年1月から比べると、約650円も値下がりした形だ。

組合によると、豚原皮の主な需要家である東南アジアのタイなどのタンナーの稼働率が大幅に低下しているという。豚原皮は最終的にスニーカーや皮靴、鞄などの素材に使用されるが、新型コロナの影響で受注量が昨対の20~30%程度しかなく、タンナー側でもウエットブルーの在庫が毎月積み上がっている状況という。

さらに、日本国内のタンナーも「週休5日と揶揄されるほど稼働率は落ち込んでいる。事業継続のため最低限仕入れた原皮も売れない」(関係筋)事態となっており、すでに国内の消費量の1カ月半から2カ月分相当のウエットブルーの在庫があると見られている。豚の塩蔵原皮コストは350~400円かかるとされ、牛原皮と同様、現状は加工処理するほど赤字が生じている状況で、仮に市場からの引取り価格が0円であっても採算に乗らない状態という。

東京芝浦原皮協同組合の中根勇専務理事は、「今回、東京都や食肉市場会社などの関係者の理解もあり、取引価格の改定が行われることになった。豚原皮の場合、日本の国際シェアは高いため、何らかの需給調整を行えば価格の回復も見込まれる。では、その需給調整のために原皮をこれからどう処理をしていくのか、我々原皮事業者の努力だけで解決できる状況ではなく、行政関係者を含め、関係業界全体の問題として、何らかの抜本的な対策を講じる必要がある」と指摘する。

さらに、林理事長は、「と畜業務の出口部分である原皮事業をいかに継続していくかが問われている。我々業界は生産者、食肉市場会社との関係性が強いが、同様に国内外のタンナーとの結びつきも強い。だからこそ、我々も使命感を持ち、採算が乗らない状況にあっても原皮事業を継続していることを理解してもらいたい」と強調している。

〈畜産日報2020年7月17日付〉