ルーシーポーク生産が1万2000頭規模に拡大、規格の安定化に注力、北米式カットも

ルーシーポーク「麦富士」
カナダ・ケベック州のルーシーポーク社は、2019年4月23日に新ヤマチチ工場(ケベック州)を稼働し、1年半が経過した。新工場では、最新鋭の製造ラインが導入され、徹底して温度管理にこだわった、衛生的かつ合理的な方法で生産能力が大幅に増強されている。

稼働当初は1週間当たり旧工場と同レベルの7,000頭規模でのスタートだったが、その後、徐々に生産規模が拡大され、今では当初目標の1万2,000頭規模に達している。新工場での従業員の慣熟とスキルアップが進み、製品の仕上がりから品質の均一化、歩留まりの向上など着実に効果が表れているところだ。

新工場の稼働2年目となる今年度は、ルーシーポーク社が提供するプレミアムポーク「麦富士」のさらなる、品質向上と製品の多様化を目指した生産体制を構築していく。

新ヤマチチ工場は、前身の旧トラハン工場を拡張し、建屋面積2万1,715平方メートル(敷地面積8万6,000平方メートル)を誇る。工場にはCO2と畜システム、垂直型スチームシャワー、ブラストチラー、塩水冷却システムなどの最新の設備が惜しみなく導入され、全く新しい工場に生まれ変わった。

この新ヤマチチ工場のファーストシフトの製造ラインで、ルーシーポーク社の「麦富士」が生産されている。旧工場では1週間当たり7,000頭規模の処理頭数だったが、新工場では最終目標となる1万6,000頭(1日3,200頭)の規模を持つ。また、新工場の稼働に合わせて、ルーシーポーク社が属するロビタイグループでは、日本市場向けに20年以上の歳月を重ねて育種改良した「Nagano Hog」の増産体制を敷いており、3農場体制での母豚数は2万7,000頭規模へと増頭、併せて飼料工場の飼料製造能力も大幅に拡大させている。

多くの製造工程に最新鋭の設備が導入された新しい工場のため、稼働から数カ月間は初期トラブルや予期しない問題に見舞われたものの、その都度、問題解決に努めた。同時に、トリミングからパッキング、箱詰めに至るまで日本市場に対する商品づくりの考え方をすべての従業員(とくに旧トラハン工場出身の従業員)に指導を徹底してきた努力の甲斐もあり、昨夏以降、順調にオペレーションが進むとともに処理頭数も増加し、現在は当初目標の1万2,000頭規模に達している。

新工場では、垂直型スチームシャワーによる脱毛方式が採用されたことで、旧工場における皮剥ぎ方式に比べ脂肪表面の細かい血合いがなく、「麦富士」の特徴である麦仕立てのきれいな白上がりの脂肪がより一層引き立てられた。皮はぎ工程処理にあった、枝肉表面への豚毛や汚物の付着も無く極めて衛生的で、伝統的な「湯槽」による湯はぎ方式と違い肉質へのダメージは皆無といえる。

肉質に大きく影響する枝肉の冷やし込み工程では、ブラストチラーへ枝肉を搬入する際に、予め肩ロース部分からモモにかけた枝肉背骨側を部分的に電動ナイフにて皮剥ぎし、短時間で効率的に冷やし込むための独自の工夫を凝らしている。真空パックされた製品は塩水冷却システムで表面が凍ることなく、肉の中心部まで均一に肉温を下げるなど、各工程で日本市場を意識したオペレーションが展開されている。

一方、今後のルーシーポーク社の重点方針は、稼働から1年半が経ち、新工場のオペレーションが安定したことを受けて、「麦富士」の品質・規格の向上をより追求する点だ。とくに、枝肉の冷やし込みやボーニングルームの温度管理をより徹底することにより、品質保持期限を従来の56日から60日への延長を計画している。

さらに、日本の顧客からのニーズを随時製造ラインに落とし込んでおり、ボーニングについては4/5ブレイクを基本としつつ、従来の日本式カットに加えてバックリブやハーフカット・スペアリブといった新製品・新規格も手掛け、多様化するニーズに対応しているところだ。このほか、カートンBOXも2ピースタイプに切り替えており、日本の顧客からのPBなど、さまざまな商品に柔軟に対応できる体制を整えている。

プレミアムポーク「麦富士」は、ここ数年日本市場で飛躍的に信認されてきたカナダ産チルドポークの中でも、最高級の品質・コンセプトを持つパイオニア的商品として評価されている。20年以上の歳月を掛けて、独自に開発・育種改良した門外不出のデュロック種「止め雄」を使用し、こだわりの飼料配合設計を行い、常に日本市場にて高く評価される品質を意識した豚肉生産を行ってきた。

ルーシーポーク社は大切な日本の顧客からの20年にわたる愛顧に応えるために、今後とも工場と日本事務所、そして顧客との緊密な連携を通じて、「麦富士」の品質およびブランド認知の向上に向けて努力を続けていく方針だ。

〈畜産日報2020年11月11日付〉