〈令和3年6月の需給展望 豚肉〉末端消費は伸び悩むも、出荷動向が相場上昇のカギに

〈月間平均で上物税抜き540〜550円、中旬以降は息切れも〉
5月の出荷頭数は1日当たり6万頭半ばと比較的安定していたこともあり、東京市場の豚枝肉相場は月間平均で上物税抜き469円と500円には届かず、軟調に推移した。前年同月は、第1回目の緊急事態宣言下で量販店を中心に巣ごもり需要が活発化したことで、豚枝肉相場も同583円と高値を付けた。しかし、2021年は同様に都内など宣言下にあったものの、量販店などでは2020年のような盛り上がりはみられず、前年同月比114円安と100円以上値下がりし、前年からの反動が大きかったようだ。需要面では大型連休明け以降、中部位の荷動きが伸び悩んでおり、動くのは比較的安価なスソ物中心という展開となった。

6月は例年、出荷頭数が減り、相場は高値に転じる時期となる。ただ、梅雨入りすることで末端消費は一段と鈍ることが予想され、盛り上がりは期待し難い。このため、実需と相場のかい離が進むことが懸念されるところ。出荷頭数や需要動向、さらには輸入チルド豚肉との兼ね合いなど、6月は上げ要因、下げ要因ともにはらんでいるが、月間を通して上物税抜き540〜550円(税込み580〜590円)と予想する。

〈供給動向〉
農水省が5月25日に公表した肉豚生産出荷予測によると、6月の出荷頭数は前年同月比4%減の127.6万頭と予測している。6月の1日あたりの出荷頭数は22日稼働で5万8,000頭前後で推移するとみられる。例年、夏にかけて出荷が細ってくる時期であることに加え、気象庁の季節予報によると、6月は東・西日本中心に例年よりも高い気温の日が多いと予想されている。とくに梅雨入り前の猛暑日が予想され、産地では増体不良などによる出荷の遅れ、上物率の低下が懸念されている。

農畜産業振興機構の需給予測によると、6月のチルド豚肉の輸入量は前年同月比2.8%減の3万1,100tと予想。概ね3万t前後のボリュームを見込むが、飼料価格の高騰やアジアを中心とした買い付けによる現地コスト高の影響から、ある程度絞った調達になるものとみられる。

〈需要見通し〉
前述の通り、大型連休明け以降、ロースやカタロース、バラの中部位の荷動きは芳しくなく、6月に入ってもその状況は変わりない。6月20日まで宣言が延長されることとなり、内食需要は底堅く推移するとみられるが、そうはいっても引続き前年の反動が顕著に現れそうだ。さらに、6月は梅雨入りで豚肉自体の消費も落ち込むため、売り場では切り落とし、小間材が中心となる傾向にある。現状でも動いているのはウデ・モモといったスソ物中心で、比較的安価な部位に引合いが集中することが予想される。

一方で、現地コスト上昇や供給量減少に伴って、量販店サイドでは輸入チルドでの販促が組み難い状況となっており、今後、国産の相場次第ではアイテムによっては国産品にシフトする可能性も考えられる。

〈価格見通し〉
1日の東京市場の上物相場は税抜き594円(税込み641円、前市比80円値上がり)を付けた。関東3市場では同587円と前市比で72円高となっている。6月はやはり出荷動向が枝肉相場のカギを握るものとみられ、農水省の出荷予測からみれば、相場は前月価格を大幅に上回っても不思議ではない。

一方で、末端消費の伸び悩みによっては、枝高・パーツ安という逆ザヤを懸念する声も聞かれる。ただ、高値で推移しても2週目以降、息切れ・中だるみする可能性も高く、唱えが下落する可能性もある。このため、東京市場の月間平均では上物税抜き540〜550円(税込み580〜590円)と予想する。

〈畜産日報2021年6月2日付〉