〈令和3年7月の需給展望 豚肉〉出荷頭数減、相場の下げ要因少なく7月も高値維持か

〈連休前後に上昇の可能性も、月平均で上物税抜き580〜590円〉
6月は関東でも梅雨入りを迎えたことに加え、経済不安定による節約志向などが相まって、豚肉の末端需要は比較的落ち着いた展開となった。一方で、供給面では一部地域での豚熱(CSF)による影響などもあり、全国の出荷頭数が6万頭を割る日も多くみられた。このため、東京市場の豚枝肉相場は、7月8日に上物税抜きで624円(税込み674円)を付けるなど上昇傾向に。中旬には一服して軟調傾向となったが、大きく下げることはなく、月間平均では上物税抜き574円(税込み620円)と、高値を付けた前年同月(上物税抜き578円)並みの価格となった。

各パーツでは、巣ごもり需要が急増した前年に比べ、ことしは月間を通してウデやモモといった安価な部位に引き合いが集中し、ロースやヒレなど中部位の動きは鈍く、枝肉高・部分肉安の流れに。このまま末端消費が冷え込めば、中間流通段階ではさらなる逆ザヤが広がることが懸念されるところ。ただ、7月も出荷頭数の落ち込みや輸入品との兼ね合いからみても相場の下げ要因は少なく、月間平均で上物税抜き580〜590円(税込み630〜640円)前後で推移するものとみられる。

〈供給動向〉
農水省が6月25日に公表した肉豚生産出荷予測によると、7月の出荷頭数は131.5万頭と前年同月比で3%減少すると予測している。2021年の7月は「海の日」「スポーツの日」を含む4連休があるため、1日当たりの出荷頭数は20日稼働で、概ね6万頭半ばで推移するものとみられる。引き続き市場への集荷が少なくなる中、関東では平年より遅れての梅雨入りとなったものの、気温が高い日も多く、猛暑による成育不良や上物率の低下など出荷への影響が懸念される。

農畜産業振興機構の需給予測によると、7月のチルド輸入は前年同月比9.4%減の3万1,400tと予測している。北米を中心とした現地価格の高騰を受けて調達を絞っていた影響などから、1割程度減少する見込みだ。輸入チルドも潤沢とはいえない中で、国産枝肉相場が高値推移しており、末端では輸入品にシフトする動きもみられる。

〈需要見通し〉
6月は上述のとおり、月間を通してウデやモモといった比較的安価な部位中心の展開となった。7月は20日以降、夏休み入りで学校給食が止まることに加え、末端消費は天候に左右される面が大きく、梅雨入りで盛り上がりは決して期待できない。一方、全国で新型コロナのワクチン接種が進んではいるものの、東京など都心では既に感染者数のリバウンドが指摘されており、まん延防止等重点措置解除の見込みは薄く、内食需要はある程度底堅く推移するものとみられる。7月に入ってからの荷動きは、引き続き安価な切り落しや小間材の引き合いが強く、ロースやヒレなど中部位の動きは低調。ロースでは荷余り感もみられるが、凍結には回さず、生鮮で売り切る動きが大勢。

〈価格見通し〉
7月1日の東京市場の上物相場は税抜588円(税込み635円、前市比1円高)、2日は589円(同636円、同1円高)を付けた。7月は農水省の予測からも出荷頭数は少なく、さらに、猛暑や天候不順による増体不良など供給面での期待は薄い。さらに、輸入チルドも潤沢ではないことなどを勘案すると下げ要因は少なく、相場は引き続き高値で張り付くことが予想される。また、4週目には「海の日」と「スポーツの日」を含む4連休を控えており、そこに向けた手当て買いの動きから、連休前後には相場が急騰する可能性も考えられる。このため、7月の月間平均相場は上物税抜きで580〜590円(税込み630〜640円)と予想する。

〈畜産日報2021年7月5日付〉