〈令和3年8月の需給展望 牛肉〉新型コロナの感染再拡大で末端の消費動向は不透明に

〈市況は2週目以降弱含みか、和牛・交雑は下げ、ホルスは横バイ〉
新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言の発令が6都府県に拡大し、5道府県にはまん延防止等重点措置が適用されたことで、例年であれば盆休みで活況を呈す8月の牛肉マーケットは再び不透明感が強まっている。感染者数の急拡大を受けて行政は外出自粛を呼びかけているが、国民の“コロナ慣れ”“自粛疲れ”により、盆休み期間の人流など、都市部と地方あるいは小売と外食での消費がどのようになるのか、読み難い状況となっている。

本来、作業スケジュールを考慮すれば、盆休み期間に向けた枝肉の手当ては8月1週目がヤマだが、問屋筋からは「例年よりも発注は後ろ倒しとなっている」「モノを集めるのに全く苦労はしていない」といった声が聞かれるなど、末端もかなり慎重なようだ。

もっとも、盆休み明け以降は消費が落ちるため、補充買いの動きも弱く、中旬以降は枝肉相場も弱含んでくるとみられる。月平均ベースでは和牛・交雑種は前月からやや下げ、ホルスは横バイで推移すると予想される。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、8月の成牛出荷頭数は和牛で3万6,900頭(前年同月比3.5%増)、交雑が1万8,400頭(前年同月比3.3%増)、乳用種が2万7,700頭(前年同月比4.0%増)となり、成牛全体では8万4,600頭(前年同月比3.8%増)と予想している。

出荷者のなかには、当初の緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の解除(8月23日〜)を目指していたが、結局、8月31日まで延長されたことで、一部前倒しで出荷が増える可能性が高い。一方、機構の需給予測によると、チルド牛肉の輸入量は2万1,800t(前年同月比12.7%増)、フローズンが2万6,300t(前年同月比5.5%減)と見込んでいる。チルドはコストが高騰するなかで、入船遅れが生じており、タイミングによっては下旬にかけて在庫がだぶつく恐れもある。

〈需要見通し〉
緊急事態宣言によって、酒類を提供する飲食店の休業要請や時短営業の要請で外食関係は厳しく、帰省の自粛など地方の観光需要も苦戦が予想される。もっとも小売需要も仕入れ原価が上昇するなか、猛暑や調理疲れで精肉よりもデリカや刺身などに消費がシフトしており、安価な切り落とし商材の売れ行きもパッとせず、各社畜産部門は前年実績をクリアするのに難儀している状況だ。

2020年は流通各社が和牛・国産牛を中心に焼肉強化を図ったことで、ロースを含めたパーツの引合いも強かったが、2021年は8月に入ってからも発注は少ない状況にある。輸出向けのロースを除いて、和牛・交雑種はバラやトモサンカクが動いているものの、ウデ・モモの動きが鈍い。クラシタは年末需要に向けた凍結回しのため出回りは少ない。ホルスもスソ物が動いておらず、ブリスケなどは切り落としに混ぜて売られている状況のようだ。

ただ、前述の通り消費動向が読み難いなかで、帰省自粛で都市部の量販店やファミリー層向け飲食店への来客は増える可能性もあり、盆休み前ギリギリで追加発注が入る期待もある。そして、盆休み明け以降は実需も一服するため、出荷頭数が多い和牛、交雑種の荷動きは鈍化し、荷余り感が強まるとみられる。

〈価格見通し〉
例年であれは、盆休み前の稼働日の関係で、8月第1週目の枝肉市況は堅調、盆休み明け以降は弱含む展開となる。だが、2021年は1週目も前年のような活況はみられず、またいつのタイミングで買いが強まるかも見通し難い状況だ。ただ、盆休み以降はこれといった上げ材料はなく、前月平均よりも一段下げの展開が予想される。

月間平均では弱含みの展開が予想され、枝肉相場(東京市場)は和去A5で2,550〜2,650円、和去A4で2,300〜2,400円、和去A3で2,000円前後。交雑去勢B3で1,550円前後、交雑去勢B2で1,350円前後、乳去B2は1,050円前後と予想される。

〈畜産日報2021年8月4日付〉