松商 業務用商品の拡大を目指して通販サイトの運営や小売・外食事業を展開〈シリーズ企業訪問〉

串揚げセット
松商(大阪市西成区、松田益睦社長)は、業務用食肉の加工・製造・卸販売、外食や中食向けにプライベートブランド商品企画・製造・販売などの事業を行っている。コロナ禍で外食チャネル向けの販売が苦戦する中、クラウドファンディングを利用した冷凍とんかつの展開、自社通販サイトでの精肉や食肉加工品の販売などに取り組んでいる。また、消費者の反応を直接知り取引先への新たな提案につなげる目的で小売・外食事業も展開している。

村上雅佳専務執行役員に、現在の取り組みなどについて話を聞いた。

大阪府堺市で1990年に創業して以来、「正直に、一生懸命に」をモットーに食肉卸売事業などを展開している。コロナ禍で外食チャネル向けの販売が減少する中、新たな試みとしてクラウドファンディングに挑戦。電子レンジで温めるだけで揚げたてのサクサク感が味わえる冷凍とんかつプロジェクトをクラウドファンディングサイトに投稿したところ、目標金額の2倍以上の支援を集めることができた。

冷凍とんかつ

冷凍とんかつ

 
「仕入れたブロック肉を加工して付加価値をつけることができるのが当社の強み」で、コロナ禍で飲食店から食肉加工品開発の問い合わせが増えているという。
 
松商では自社通販サイトの運営も行っている。「サイトでは商品ラインアップを閲覧することができる。それをみれば、当社がどんな商品を製造できるか知ってもらえる。また、商品ラインアップにニーズに合う品があれば、当社への問い合わせにつながる」とこちらもBtoBの拡大を目的としている。
 
このほかにも、消費者ニーズに、より反応できる会社にしたいとの考えから、毎週土曜日に本社で精肉や加工品の小売販売も行う。
 
2020年12月には、近鉄上本町駅近くに串揚げ・炙り焼専門店「串一番上本町店」を出店したほか、とんかつ業態のバーチャルレストラン「極とんかつゑびす」も展開している。その理由について、「卸売業者と飲食店の目線を合わせたいと考えから展開している。卸売業者は物量を増やすことにこだわるが、飲食店は商品の見栄えが大事。飲食事業を展開することで、その価値観を埋めて顧客である飲食店と同じ方向を向いていきたい。また、飲食事業を展開することで、飲食店としてのノウハウや情報を得ることができる。商品だけでなく、ノウハウや情報といった付加価値も提供していきたい」と話す。バーチャルレストランについては、飲食店へのフランチャイズ提案も行っていく考えだ。

極とんかつゑびす「とんかつ」

極とんかつゑびす「とんかつ」

 
このほか、新たな取組みとして2021年4月、食肉加工・販売事業などを行う丹波屋(大阪市西淀川区)の事業をM&Aで承継した。「丹波屋は創業者や工場長が料理人出身で商品開発力がある。丹波屋で商品を開発して松商で生産する」。今後は、業務用商品だけでなく、食卓に商品を届ける取り組みにも力を入れていく。高齢化社会であることから小分けの対応などにさらに注力していく。ニーズの細かいBtoC向けの対応を強化することで、飲食店などBtoB向けにおいても柔軟に対応できる体制を整えていく考えだ。
 
〈畜産日報2021年10月25日付〉