【米穀VIEW904】業界展望/需給と相場 107

去る5月29日に農林水産省が公表した「平成27年産飼料用米の取組状況」が、波紋を呼んでいる。「5月15日現在で6.4万ha、35万t」という水準は、全農の計画だけで60万tだったから、確かに少ないものだが、それだけではない。業界内に聞かれるのは、「飼料用米が明らかに少ない」ということより、「だからといって申請期限の1か月延長という措置は、短絡的に過ぎたのではないか」との疑問の声だ。
もともと農水省は、「途中経過」の公表にあまり熱心な官庁ではない。数少ない過去の例からすると、戸別所得補償(モデル事業)初年度の加入件数が好例だ。「あの時、1か月に一度、途中経過を公表していたが、結果的には最終の6月末段階で一挙に申請が増えた。日本の生産者は〝変化〟を嫌い、特に初年度は共通して〝様子見〟に徹する傾向がある。だから想定できた行動とも言える。ましてや今回の場合、専用品種(多収品種)の種籾が多くはないから、申請はすでに作付けた主食用品種の一部を『飼料用米ですヨ』と申請するだけ。そう手間のかかる作業ではない。『たられば』になってしまうが、つまり今回、途中経過の公表などせず、非公表の進捗度に基づき発破をかけ続けていれば、6月末に一挙に申請が進んで事なきを得た–かもしれない。あくまで可能性ではあるが」(関係者A)。
だから、そもそも途中経過を公表してしまったこと自体が誤りということになってしまうのだが、過ぎてしまったことを言っても仕方ない。問題は発破をかけるため採った「申請期限の1か月延長」という対応策だ。これを「暴挙」と表現する関係者は少なくない。「7月末が期限となれば、その結果が公表に至るのは8月のお盆前後といったところだろう。その頃には27年産がもう出回り始めている。それまでの間は、『27年産の飼料用米はダメダメなボリュームですヨ』イコール『27年産の主食用米は、大凶作にでもならない限り、確実にジャブジャブな過剰になりますヨ』というメッセージが、発信され続けることになる」(関係者B)。「生産者は往々にして〝様子見〟する。35万tを公表した以上、延長しようがしまいが『じゃあ(飼料用米なんて)やらなくていいや』に向けたインセンティブを与えたようなものになってしまう」(関係者C)。つまり途中経過の公表、期限延長は、二重の意味で「暴挙」だったことになる。

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