「何を作っても10a12万円以上の手取りを確保」

既報の通り農林水産省は1日、全国会議を開催。実需者側として登壇した上越市農林水産部・滝沢良文参事(上越市農業再生協議会事務局)の講演をお伝えする。

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当市の耕地面積は1万7,400ha、うち水田率は県内で最も高い93.7%だ。水稲の作付面積は全国4位だが、生産量は7位、さらに農業生産額では120位まで落ちる。これは水田単作地帯であるが故に、米価が変わると生産額にすぐ影響が出るからだ。では、当市の強みと弱みについてお話しする。まず強みは担い手の育成が進んでいる点だ。多くの農業生産法人や認定農業者が育成され、農地集積も進んでいる。今年12月1日現在の認定農業者数は1,174経営体、うち農業生産法人は162経営体。規模別の耕作面積割合を見ると、2005年は21.6%だった10ha以上の経営面積を持つ経営体が、2015年では49.6%まで増えた。農地集積は、2016年度の1年間で550haの集積が進み、うち340ha が農地中間管理機構を介している。結果、担い手への集積率は66%で、再生協の事務局は水田台帳の変更事務だけでも大忙しだ。当市は毎年深掘りを達成しており、その大きな要因は飼料用米。県内のコシヒカリの生産は7割を超えるが、当市のコシヒカリは主食用米に対し約60%、飼料用米を加えると50%水準まで減少している。

一方、弱みは単収の低さが挙げられる。29年産米の10a当たり基準単収は519kgで、県内でもほぼ最下位に近い。これまでコシヒカリを中心に食味重視で安心・安全の米づくりをしてきた。つまり収量を犠牲にして品質を確保する産地作りをしてきたということだ。主食用米を作る全農家のうち、有機3割減減・5割減減に取り組む農家が97%。さらに、2,500ha の中山間地を抱えているので、倒伏しやすいコシヒカリの収量を抑え、作りやすくしてきた経緯がある。

このような分析の下、当市再生協は米政策の見直しに向けた検討を行ってきた。需要に応じた生産を進めるため、昨年8月、再生協内に「水田フル活用案作成WG」を設置、昨年11月に検討結果の第1弾として全国的な米の需給動向や当市の置かれた状況、先ほどの強み・弱みなどを冊子にまとめ、全農家に配布した。農家向け説明会も頻繁に行ってきた。

そこで目安の配分について。これまでは県から配分された数量に対し、市内17地域で基準単収を設けて計算することで、個々の農家の面積配分を進めてきた。結論から申し上げれば、30年産以降、個別の農家に目安を配分することはしない。再生協の傘下には「認定方針作成者部会」、つまり集荷・販売業者の部会が存在する。今後、この方々が全国的な動向を把握し、売れる自信のある分を農家に配ってほしいということだ。これまでは農家から営農計画書を貰って調整してきたが、今後は最初に集荷・販売業者から農家に依頼があり、それを受けて営農計画書を農家が提出、我々はそれを集計する中で全体的な動向を把握し、可能ならば産地交付金などで少し調整するという流れになる。

これを実現するため、我々はプロジェクトを進めている。農研機構が開発した早生の多収新品種「つきあかり」もその1つだ。昨年8月に名前が付いたばかりの新品種だが、29年産60ha、30年産では600~650ha まで拡大する。また、米粉用米「越のかおり」にも力を入れている。2015年に大手のタイ料理店が採用したことで一気に需要が拡大した。市内農家が作り、地元製造業者が製品化して出荷する域内生産体制ができている。さらに生産コスト削減のため、国の補助事業を活用した密苗移植栽培の実証実験やICTの導入などを積極的に進めている。これはつまり、何を作っても10aあたりの手取りを12万円以上にするための取組でもある。コシヒカリは作付を減らしていく方針だが、こしいぶき・みずほの輝き・つきあかりなど全ての品種が、29年産JA仮渡金基準で12万円以上の手取りになると農家には説明している。農水省の「コメ海外市場拡大戦略プロジェクト」に当市再生協も手を挙げたが、再生協ではうちと妙高市だけだろう。再生協で参加すれば皆が参加できるからというのが最大の理由で、飼料用米を一気に1,000haまで伸ばした実績もあり、多収穫米作りの技術を輸出用米に転用できればリーズナブルなものが作れると考えて参加した。ただ先ほども申し上げたが、重要なのは12万円の手取り。輸出用米についても産地交付金での支援をお願いしたい。

〈米麦日報2017年12月11日付より〉