政府米販売等業務委託で初の不祥事、農検法違反の可能性も/三菱・日通

米麦日報 2018年7月5日付
農林水産省の「政府米販売等業務委託」で、初の不祥事が明るみに出た。農水省から委託を受けた三菱商事(株)は4日、再委託先である日通グループが政府米保管業務で「不正行為」を行っていたと公表。日本通運(株)も同様の公表を行った。それによると、すでに農水省から業務改善命令を受け、再発防止策を報告しているという。ただし農水省消費・安全局消費者行政・食育課食品表示・規格監視室は「農産物検査法違反の可能性を含めて調査していく」としている。

日通広島支店の社員が2014~2016年の計3回、検査印が押印された政府米の米袋を別のものに詰め替え、検査印を偽造したもので、主食用には流通していない。三菱商事は今年4月になって日通から報告を受け、同日、農水省にその旨を報告。農水省は5月末、三菱商事に対し業務改善命令、日通に対し(業務改善を求める)文書指導を出し、2社は7月2日付で再発防止策を報告した。

今回の件は、〈1〉2014(平成26)年6月、日通広島支店の社員が、倉庫保管中に雨漏りで外袋が濡れた24年産政府米(1袋30kg)15袋を新袋に詰め替えた上、偽造した検査印を押印、〈2〉〈3〉2015(平成27)年2月と2016(平成28)年9月頃、保管中の荷崩れなどで紙製の包装が破れた26年産政府米251袋を新袋に詰め替えた上、同様に偽造印を押印――した3件の「不正行為」。

うち、〈1〉の24年産15袋は2016年5~6月に配合飼料の原料として飼料工場1社へ出庫されたが、健康被害が発生したとの報告は確認されていない。また、〈2〉〈3〉の26年産251袋は市場流通せず現在も日通倉庫に保管されており、同じ倉庫で保管されていた他の政府米と合わせ、全量4万3,854袋(1,316t)が焼却処分される予定。

農水省政策統括官付貿易業務課によると、業務改善命令・文書指導は原因究明と再発防止を求めるもので、再発防止策については「現在確認中」とのこと。「消費者に流通した形跡は無く、純粋に契約に関することなので、従来通り公表は行わなかった。今後、貿易業務課として契約についての措置は、今回の命令・指導以外に、再発防止策に基づいた改善がなされるようアプローチを続けていく」。

また、消費・安全局消費者行政・食育課食品表示・規格監視室は「農産物検査法違反の可能性を含めて調査に着手している。農検法には『紛らわしい表示を付してはならない』(第13条2項・検査証明)と書かれている。一般論としては罰則での対応が基本。不正行為が軽微な場合は行政指導を行うが、重大と認められた場合は警察に委ねる(告発する)ことになる」としている。

なお、2014年2月には、熊本・八代市内の生産者が登録農産物検査印の認印(印鑑)と等級証印(1等・2等)を偽造。当該生産者が登録農産物検査機関ではないことから農検法違反で対応できず、九州農政局が八代署に刑事告発、有印公文書偽造・行使の容疑で熊本地検に書類送検された事例がある。しかし、政府米関連の業務委託でこうした不正行為が確認されたのは初のこと。

〈米麦日報 2018年7月5日付より〉