〈前半〉令和3年産米に向け「今できることに全力投球」/全農・高尾雅之常務インタビュー〈1〉

――今年度の米穀事業の方針を。

主に3つある。1つ目は今の情勢を産地にしっかり周知させること。

2つ目は安定取引確保に向けた連合会のガイドラインの作成。水田活用のために加工用や米粉用を作るにせよ、無尽蔵に作るわけにはいかず、当然、需要を把握する必要がある。そのためにも連合会でガイドラインを定めることとしている。

3つ目は輸出だ。輸出米が伸びているとはいえ、COVID-19(新型コロナウィルス肺炎)禍は世界中に広まっているため、必ずしも大幅な拡大とはならない。輸出専用の産地づくりをすすめ、子会社の全農インターナショナル(株)を活用し、段階的に輸出を伸ばしていきたい。日本酒やパックご飯など精米以外の武器も持ちつつ、拡大していくつもりだ。

――パックご飯といえば、4月1日付で(株)JA加美よつばラドファ(宮城)を子会社化しました。

来年度には新工場を取得して、生産能力を現在の約4倍まで拡大する方針だ。それが軌道に乗ったら、中日本と西日本でも展開するつもりだ。誰かと手を組むのか自前でやるのかはまだ具体的には決まっていないが、既に何社かから声はかかっている。こうしたことも自己改革の取組の一環だ。パックご飯に限らず、米の関連企業とは縁があればやっていきたいと思っている。

――パール卸の再編については。

昨年のインタビューでもお話したが、一昨年10月に、福岡県本部の直販部(パールライス事業)と(株)パールライス大分経済連を全農パールライス(株)が吸収し、全農パールライス(株)西日本事業本部に「福岡支店」と「大分支店」を設立した。現在、複数の県で同様の話が出ており、やはり最終的には「パールライス1社化」を目指している。

――消費拡大についてはどのような取組を。

1つは「ご炊(た)こうチャレンジ」。JAグループだけではなく、農水省や全米販にも声をかけている。また、米のオリジナルキャラクター「ライスライダー」によるSNSでの発信や、「米を食べると太る」という誤解を解くための啓発活動は、今年リニューアルする予定だ。

――話は変わりますが、農産物検査の見直しについて意見をお聞かせください。

出来秋の検査員や単協の人手不足が我々としても課題だったため、そこを効率化・合理化できるのであれば、穀粒判別器の導入等は今後も進めるべきだと思うが、目視検査と機械検査が並立することの規格の整合と、このことにより保管・物流・販売等までどのような影響があるのか、その対応を整理していく必要があると思う。

さらに問題なのは、未検玉の3点セット(産地・品種・産年)表示が可能になるということだ。トレーサビリティがはっきりしているのが大前提とはいえ、このやり方が果たして市民権を得られるのかは疑問だ。これまでは農産物検査法にもとづき、農産物検査規格に合ったスペックかどうかを担保していたが、書類だけで判断することが幅広く世の中に受け入れられるのかどうか。そこは慎重になるべきだ。

米の流通という広い視点で考えると、世界的なトレンドはブロックチェーンなので、そのような流れが到来するのは不思議なことではないが、企業がこぞって取り組んでいるDXも蓋を開けてみれば上手くいっていないケースもある。そのような末路を辿らないようにしていただきたい。

――昨年11月には(株)日清製粉グループ本社と業務提携を締結し、農林中金とともに資本提携も締結しました。その狙いは。

大きく分けて5つある。1つ目は、昨年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」では、2030(令和12)年の小麦の生産努力目標を「108万t」と掲げており、現状から28万tもの生産拡大が必要となる。我々は内麦の生産振興に注力し、増産見合いの応分の取扱拡大に協力していただきたいとお伝えしている。

2つ目は、マーケットイン型の汎用性のある品種を、実需と生産者の両サイドで連携しながら開発を進めるという新品種開発。

3つ目は、畜産関連でも連携を強化するというもの。

4つ目は、日清製粉グループ本社の総菜関連の子会社との連携や、国産農産物を使ったメニュー開発等を進めるというもの。

5つ目は、その他の製品や物流についてもお互いのリソースを活かして進めていくというもの。

――今年の8月にはコメ先物が「最後の試験上場」の期限を迎えますが。

先物については国が出す結論を注視していきたいが、JAグループとしては、以前の民主党時代に整理したコメ先物についての立場を変えてはいない。米は日本人の主食として需給と価格の安定を目指すべきものであり、投機的な要因での乱高下は目指すべきものと違った考え方となる。ただ、過去に整理した時から地域社会や事業構造が様変わりしているなかで、少なくとも、需給と価格の安定、そして生産者の所得向上に寄与する制度設計が望ましいということだ。

――最後に、令和3年産の出来秋に向けて。

これも全中の試算だが、今後、相対取引価格ベースで見ると、令和2年産は平成25年産、令和3年産は平成26年産と同水準で推移するとの見方があり、令和3年産は令和2年産から更に価格が落ちる基調となることが懸念される。価格を維持するためにも非主食用への転換が重要であり、国もそのための施策を講じている。生産者所得の向上に向けて、皆で一丸となって頑張って参りたい。

〈米麦日報2021年4月23日付〉