ヤマタネ『「続く」を支える。』企業として社会へ貢献、パートナーを構築してチャレンジ領域を開拓/2022年3月期決算説明会

ヤマタネ・山﨑元裕社長
(株)ヤマタネ(山﨑元裕社長)は5月26日、都内で2022年3月期決算説明会を開いた。山﨑社長が2022年3月期決算・2023年3月期業績見通しの説明に加え、新たに策定した長期ビジョン「ヤマタネ2031ビジョン」と新3か年中期経営計画「ヤマタネ2025プラン(2023年3月期~2025年3月期)」を解説。「当社は2024年に100周年を迎える。100年を超えて持続的成長を続けるためのビジョンを策定した。これを達成し『「続く」を支える。』企業として、事業を通じて社会に貢献していく」。

〈2022年3月期決算〉
連結ベースで売上高467億6,500万円、営業利益30億200万円(前期比▲9.1%)、経常利益26億5,500万円(▲15.5%)の減益で、当期純利益も18億3,200万円(▲10.3%)で着地した。会計基準変更に伴い売上高が13億6,200万円減少しているため、それを加味すると売上高は前期比▲1.2%となる。

〈2023年3月期業績見通し〉
売上高521億円(+11.4%)、営業利益28億9,000万円(▲3.8%)、経常利益26億5,000万円(▲0.2%)、当期純利益14億2,000万円(▲22.5%)を見込む。

ヤマタネ・2022年3月期決算概要・業績見通し

ヤマタネ・2022年3月期決算概要・業績見通し

〈ヤマタネ2031ビジョン〉
PURPOSE(存在意義)として、「多様な人材が集い、社会に貢献する力を生み出す」を置いた。「創業者の山﨑種二は15歳で上京し、事業経営だけでなく学術、芸術にも貢献した。事業活動を通じて社会に貢献するという創業者の意思を継ぎ、ヤマタネらしさを存在意義としていく。多様な人材の相互の関係は競争だけでなくシナジーを生む。異なる能力と可能性を持った社員が活躍する事業活動を進めていく」。
 
また、9年間で目指す姿を「物流と食の流通を通じ、より豊かな社会づくりにチャレンジしていく」とした。具体的には既存4事業の維持・強化を図る「コア事業領域」、新たなサービス、食の安定供給ソリューション、循環資源ソリューションに取り組む「チャレンジ領域」に分類し、価値向上を図る考えだ。「会社として、ともするとコア事業領域に偏りがちな風土がある。しっかりとチャレンジ領域を進めていく」。
 
〈ヤマタネ2025プラン〉
長期ビジョン「ヤマタネ2031ビジョン」の達成に向けた3か年中期計画。今期(2023年3月期)からスタートする。財務目標はROE(自己資本比率)5%以上、配当性向35%以上、売上高565億円、営業利益32億円、EBITDA66億円。
 
コア事業領域では、物流部門で△荷主やサプライチェーン上の各プレイヤーと連携・協働し、物流の効率化や高度化を目指す、△収益力向上のため、新倉庫の開設や既存倉庫のリプレイスを行う――とする。食品部門では△米流通の各段階において品質と安全性を保ち、安心できる商品を消費者に対して安定的に供給する、△生産・流通コストの低減を追求し、産地との結びつきを強化する――考えだ。
 
また、チャレンジ領域では、物流部門で、△新たな事業領域への進出のため、食品量販店センター運営等に取り組む――とする。
 
食品部門では△気候変動リスクや消費者ニーズの変化を踏まえ、新たな品種や商品の開発に着手する――方針を掲げた。「食品部門では安定供給はもちろん、消費者ニーズの多様化に対応していく。生産面では印西精米センターの能力をしっかりと活かす。仕入では既存の取引先JAとの関係強化を深めるだけでなく、 新たなパートナーとの関係構築に取り組む」。
 
〈質疑応答・本紙関連抜粋(回答は全て山﨑社長)〉
Q:印西精米センターの稼働状況は。 
 
A:本年1月6日に竣工し、2月8日から本格稼働している。生産・出荷とも極めて順調。また、無洗米生産で発生する排水(米のとぎ汁)の飼料化も実現している。稼働実績が3か月となり、旧工場のようにSQFやISOの取得に向けても着手している。
 
Q:印西精米センターの生産量の見通しは。
 
A:前期の当社の精米出荷実績並みとなる見通し。これまで、東京精米工場と岩槻精米工場で精米していたが、既に東京精米工場は止めた。岩槻精米工場もそろそろ止められる見通し。これまでの精米の取り扱いは全て印西精米センターに集約できる。
 
Q:萌えみのりの取り組みについて。 
 
A:3年産では非主食用の増加により、萌えみのりの取り扱いは減少した。販売は量販店の消費者向けは順調だが、業務用はやや苦戦している。4年産でも非主食用の増加により若干取り扱いが減る見込み。多収米の取り組みと捉えられがちだが、元々は持続的な稲作を目指すもの。みどりの食料システム戦略に呼応する面もあり、スピード感を持ってプロジェクトを進めていきたい。
 
Q:米の輸出についての考えは。
 
 A:現時点では国産米の輸出は考えていない。米粉であれば小麦粉の価格が高騰するなか、米食文化のない地域への輸出はありえるかもしれない。ただ、現在のヤマタネのミッションは持続可能な国内の米食への貢献だと思っている。
 
Q:今期の食品部門の売上高見通しに、「他商材の値上がりによるコメ需要の増加を見込み」とあるが、手ごたえは。 
 
A:手ごたえはまだまだない。自民党もかなり動いているが、小麦粉など他商材の値上がりに対して、米の価格が上がっていないというアピールはまだまだ伝わっていない。未だに米は下げ基調にあり、小麦などの他商材との価格はさらに開く可能性があるが、現時点では「パスタが高いから米を買おう」とか、そういった動きは見えていない。
 
Q:ヤマタネ2031ビジョンに「食の簡便化志向に対応した加工食品」とあるが、加工食品に取り組むのか。 
 
A:当社の風土として100%自前で行うという意識がある。今回、チャレンジ領域を設定し、もっと積極的に外部のパートナーを求めていく。加工食品についてもパートナーと組んで取り組みたい。
 
Q:食品部門の黒字化の見通しは。
 
A:印西精米センターの減価償却は米の商売からすると大きい。今期は2億円の営業損失の見込みだが、来期ですぐにクリアできるかというと難しい。ただ、ウクライナの問題もあって世界の食品の動向が見えない。食糧支援によっては国内の米の在庫が減少することもあるのではないか。
 
〈米麦日報2022年5月30日付〉