減塩志向さらに強まる 各社、メニュー提案で〝おいしさ〟訴求

食品に対する健康志向は、15年4月に機能性表示食品の制度の導入と「日本人の食事摂取基準」の改定(特に塩分摂取基準)が同時に行われたことから、さらに高まっている。メーカー側では、こうしたニーズに対し、多くの機能性食品や減塩調味料、さらには従来からの制度であるトクホ、栄養機能食品などに則った食品を提供しており、ヒット商品も生まれている。こうした中、調味料分野では減塩志向がさらに強まっており、商品開発に加え、下年メニューの提案が活発化している。(4面以降に調味料特集)

食品に関する健康志向の代表例は肥満防止を目的にしたカロリーカットであり、多くの分野で「カロリーハーフ」のような食品や調味料が定着している。また最近では、糖尿病予防の観点から糖質制限が注目されており、ご飯・パンなどの摂取制限の空腹感を軽くするため、糖質オフのパン、チルド麺、冷凍おにぎりなどが発売されている。

一方で、高血圧予防や肥満対策などで低塩分の食事摂取意向も着実に高まっている。減塩や塩分控えめの醤油、味噌、ソース、つゆなどは従来から発売されており、好調な商品が多いようだ。厚労省の「日本人の食事摂取基準」が15年4月に5年ぶりに改訂され、塩分摂取量が男性が1・0g、女性が0・5g低減された。国立循環器病研究センター(国循)の「かるしお認定制度」と、前述の機能性表示食品の制度の導入が同時にスタートしたことも、国民の塩分摂取低下に対する意識の高まりを後押ししている。しかし、15年の国民栄養調査(12月発表)によれば、男女とも摂取基準を上回っている(表)。

塩分の摂り過ぎは高血圧につながり、動脈硬化から心筋梗塞・脳卒中などの危険性が増す。また胃がんのリスクが高まるともいわれる。塩味の濃い食事はどうしても砂糖、みりん、食油なども多くなり、食欲増進から肥満につながりやすい。そのため減塩メニューを訴求する人は増加している。ただ、わかっていても、おいしい食事を求めるのが人情でもある。

そのため、以前から加工食品メーカーは醤油、味噌などの減塩商品を製造してきた。さらに最近では、食塩、つゆ類、ぽん酢、ソース、ケチャップ、即席スープなどにも広がっている。

今秋の新商品を見ると、レトルト麺、冷凍調理食品、味付のりなど塩分カットを謳った加工食品が見られる。もちろん減塩食品のパイオニアである調味料にも多くの新製品が登場している。

醤油カテゴリーで唯一伸びているのが減塩醤油だが、キッコーマン食品は25%カットの「鰹節香るしょうゆ」を発売。ヤマサ醤油は「鮮度生活特選塩分控えめしょうゆ」を秋から本格配荷、正田醤油も「塩分を気にする人のおいしいしょうゆ」をリニューアル。いずれも密封容器入りだ。

味の素は減塩率を50%に高めた「お塩控えめのほんだし」をリニューアル。ヒガシマル醤油の「まろやか玉ねぎぽんず」は25%カット、理研ビタミンの「おいしい減塩わかめスープ」も25%カットだ。

また、うま味や食酢などを上手に利用した減塩メニューを提案するメーカーも少なくない。Mizkanは食酢を使ったほど塩レシピを提案している。味の素も「ほんだし」などを上手に使ってうま味を活用、減塩につなげるレシピを紹介。カゴメは今年から「トマトパッツァ」を提案し、トマト味による減塩メニューを広めている。キッコーマン食品は料理にとろみを付けて減塩するトロトロ減塩法を店頭で訴求する。キユーピーはマヨネーズ自体が低塩食品であるため、調理に使った減塩メニューを提案する。ヤマサ醤油は減塩醤油などを使った減塩レシピを募集するなどで減塩を訴求している。