今の世の中、とにかく「簡便」「即食」だ。コンビニはもともとそういった商品が主力だし、ドラッグストアが扱う食品も、そういったものばかりだ。最近は両業態ともに生鮮素材も扱い始めているが、カット野菜、豚肉こま切れなどで、言ってみれば生鮮食品の中の「簡便」商品だ。生鮮素材の最大の販売チャネルであるスーパーも「簡便」「即食」。猫も杓子も「惣菜」の強化であり、生鮮食品も味付きで焼くだけ、炒めるだけの肉や魚など「加工度を高める」ことが主流だ。

ヤオコー(埼玉)が都市型小型実験店「八百幸成城店」を都内に出店した。「惣菜」の充実ぶりが有名な同社だが、惣菜はそこそこで、「生鮮素材」を強化した。今の流れに逆行した店舗で、記者たちの間でも賛否両論が出ている。しかし私は、これはヤオコーなりの「ブルーオーシャン戦略」だと感じた。

食品小売業は業態を超えた競争で、1店舗当たりの商圏は年々狭くなっている。顧客にとってはより近くで「簡便」「即食」が手に入り、便利にはなった。一方、しっかりした生鮮素材を購入できる場所は減っている。料理をしたい人は、新鮮で割安な素材を手に入れるために、少々遠くまで足を延ばさなければならない。「八百幸成城店」は都市型小型店ではあるが、実は小商圏対応ではなく、ある程度の広い商圏が狙える業態だ。

周りで激しい「簡便」「即食」戦争が繰り広げられている中、巻き込まれずに自らの商売をする。見事だ。

〈食品産業新聞2017年11月21日付より〉