〈10%・軽減税率8%の複数税率に、税率ごとに区分した請求書・領収書など必要〉
東京都豆腐組合はこのほど、今年10月に迫った消費税の軽減税率制度の導入に向けて講演会を開催した。カシオ計算機営業本部システム営業統轄部の栗林太郎氏(中小企業診断士)が講師を務め、軽減税率制度によって発生する複数税率への対応や、23年10月から始まるインボイス制度に向けて、中小企業が講じるべき対策を解説した。

栗林氏は始めに、改めて軽減税率の概要について、増税により標準税率は10%になるものの、外食・酒類を除く飲食料品と、週2回以上発行される定期購読に基づく新聞は軽減税率8%の対象になるとし、「過去にも増税は経験しているが、今回は初の複数税率制度と大きな制度変更になる」と述べ、事業者は十分な理解・準備・対策が必要だと強調した。

軽減税率制度は大部分の事業者に影響があり、例えば豆腐事業者においては、仕入では大豆、にがり、消泡剤などは軽減税率8%の対象だが、手さげ袋、パック容器、絞り布、水道光熱費といった経費は税率10%と、複数税率が発生することから、経理や事務作業において、税率ごとの対応が必要だと話した。仕入面だけではなく売上においても、例えば地方配送を行う事業者では、別途配送料を設けている場合、配送料については税率10%になり、(飲食料品の小売業においても)発生する可能性があると注意喚起した。

なお、軽減税率対象品目の捉え方についても言及。酒税法に則った商品は税率10%(みりんなど)、食品表示法に適応している商品は8%(みりん風調味料、飲料水など)、どちらにも属さない商品は10%(水道水など)だとした。

外食・場所による区分に関しては、基本的にテイクアウトは軽減税率8%、外食は10%となり、配達以外の役務を伴っている場合は、全て軽減税率の対象外となるとした。持ち帰り(8%)もしくは店内飲食(10%)の判断基準は、商品を提供した時点(商品購入時)の消費者の意思となる。意思確認の方法としては、例えば店舗の前にいすを設けている豆腐店などでは、「持ち帰りが大部分であれば、飲食する場合の申し出を促す店内掲示で対応可能。わざわざ消費者に確認する必要はない」と説明した。

○4年後にはインボイス方式、「適格請求書」の発行が課税事業者との取引に不可欠かこれらを踏まえ、事務作業上で必要なこととして、△(売上・仕入ともに)商品単位の適用税率の把握、△税率単位で分けた経理上の仕訳、△請求書や領収書のフォーマット変更――などを挙げた。加えて、今年10月1日前後では、地方消費税の比率が異なるため、同じ「8%」でも中身が異なることも理解しておくべくだとした。

具体的に請求明細書は今年10月から、「区分記載請求書」が採用され、従来の請求明細書の記載内容に加えて、軽減税率対象商品である旨の記載(記号、税率などで表記)、税率ごとに区分した金額を記載する必要があるとした。加えて、発行するレシートにも同様に、軽減税率対象商品である旨の表示や税率ごと金額を記載する必要がある。

気を付けるべき点として、納税課税事業者が申告する納税額は、売上に係る税額から仕入に係る税額を控除して計算するが、仕入先から受け取った請求書など必要に不備があった場合、税額控除ができない。ただこの場合、相手方に必要事項を確認して記載・保存すれば、税額控除できるものの、取引先に迷惑がかかるため、初めから正しいフォーマットで運用する必要性を強調した。

また、制度改正にあたっては、従業員教育や、分かりにくい表示を嫌う消費者行動にも対策が必要だと述べた。具体的には、「イートインとテイクアウトで価格が異なると、消費者にとって分かりにくい。

ある外食事業者の例では、イートイン価格(税抜100円、消費税10円、税込価格110円)とテイクアウト価格(税抜102円、消費税8円、税込110円)で、税込価格を同値にする方針をとるという」と情報提供した。

さらに、4年後の23年10月から開始する適格請求書等保存方式(インボイス)では、「区分記載請求書」に替わって、税務署から登録を受けて通知される事業者番号や、税率ごとに区分した消費税額などの記載が必要な「適格請求書」が採用される。

注意点としては、課税事業者が仕入の控除を行う際に必ず「適格請求書」が必要となるが、これを発行できるのは、適格請求書発行事業者として登録を受けた課税事業者となる。現在、(売上高1,000万円以下の)免税事業者であっても、課税事業者として登録を行い、「適格請求書」を発行できなければ、課税事業者との取引継続が困難になる可能性があるとした。

また、適格請求書等保存方式の移行までに4年間の猶予期間があるが、今年10月から同方式で運用した方が、負担が少ないとアドバイスした。

最後に、国による軽減税率対策補助金制度について、今年9月30日までに、複数税率に対応した新たなレジの導入・改修などを行い、導入・設置・改修・支払いまで完了している場合、同補助金制度の対象になると情報提供した。

〈大豆油糧日報 2019年9月4日付〉