検査ラボと官能検査パネルの誕生で高品質のエクストラバージンオリーブ油購入を担保/IOCコンファレンス

IOC ハイメ・リージョ副事務総長
スペインに本部を置く国連下部機関のインターナショナル・オリーブ・カウンシル(IOC)は12月19日、都内で「日本および世界のオリーブオイルの現状と展開動向」に関するコンファレンスを開催した。IOCのハイメ・リージョ副事務総長によるオリーブ油の国際情勢についての基調講演をはじめ、日本のオリーブ油と植物油の最新事情の講演、意見交換会の後、懇親会が実施された。近年の日本におけるオリーブ油の需要拡大と、IOC認証ラボの拡大意向を踏まえ、業界代表の日本植物油協会(日油協)、地域代表の小豆島、日本政府代表の農水省、輸入業者代表の油糧輸出入協議会などと、実務レベルでの情報交換と情報共有が図られた。

リージョ副事務総長は、IOCのキーとなる重要な活動として標準化と研究を挙げた。国際基準をつくる重要性について、「世界中のどこでも同じ基準、品質のものが手に入るように、オリーブ油の共通語をつくることが目的」と語った。IOCが認定する官能分析、理化学検査を実施する認定ラボの数は、19年時点で官能分析が87、理化学検査が100に上る。「日本に訪れた3年前は、エクストラバージン(EV)オリーブ油とバージンオリーブ油の違いを見極める手段を持つ研究所は存在していなかったが、状況は一変しており、2つの研究所、2つの官能分析パネルがオリーブ油の品質や純度に関して正しい判断を下すことが可能になっている。彼らのような組織がいるおかげで、日本の消費者が確実に高品質のEVオリーブ油を購入できることを担保する」と期待を寄せた。

昨年、香川県オリーブオイル官能評価パネルが、日本初のIOC認定を取得し、さらに、日本油脂検査協会は、日本全国対応が可能な初のラボとして、官能評価パネルの認定を受けた。

また、日油協も連携強化を進めており、昨年は自社のオイルを分析できる理化学A認証に会員社1社が認定され、今年は新たに協会会員社1社が、日本企業初となる、自社だけでなく、他から検査を請け負うことができる理化学A認定を取得している。

〈日本のオリーブ油の輸入量は7万tまで増加、昨年は21%伸長〉
リージョ副会長はIOCについて、「オリーブ油・テーブルオリーブの国際協定に基づく政府間機関で、今年で設立60周年となる」と説明した。現在は生産国のみならず、消費国にも開かれた組織となっており、45カ国(うちEU28カ国)が加盟しており、世界のオリーブ油生産国の94%を占めているとした。

グローバルなトレンドについて、「過去25年で生産量は約300万tと2倍になった」とし、消費量の変化については、生産国が集中する地中海沿岸部で消費量が減っていることを指摘し、その背景として、オリーブ油新興国の米国や日本、中国などで人気が高まり、輸出量、消費量が増えているためと説明。「オリーブ油の貿易はますます重要度が増している」と述べた。

この5年間の平均生産量の推移をみると、消費量が生産量を平均値として上回っているため、生産拡大が必要とした。IOC加盟国の消費国トップ3はEU、トルコ、モロッコの順で、非加盟国の消費国トップ3はブラジル、日本、カナダと続く。日本の輸入量については、「元々1万t以下だったが、7万tまで増加しており、昨年は21%以上輸入が伸びている」とした。

続いて、日油協の齊藤昭専務理事が「オリーブ油をめぐる事情(動向)について」と題して講演を行った。世界のオリーブ油の生産と消費について詳細な資料をもとに説明するとともに、オリーブ油にはオレイン酸が多く含まれることをはじめとした、その健康効果なども紹介した。また、「当協会としてはIOCとの連携を強める必要がある」と認識を示した。

続いて、IOC認定香川県オリーブオイル官能評価パネルリーダーである香川県小豆オリーブ研究所主席研究員の柴田英明氏が、「香川県におけるオリーブオイル生産と官能評価等の取り組み」と題して講演を行った。

遠心分離による小型搾油機の導入を推進し、品質が向上したことや、県で開発したオリーブの新品種が、21年春から生産者に供給開始予定であることなど、同県の取り組みを紹介した。

〈大豆油糧日報 2019年12月23日付〉