環境負荷低減に有効な植物性たん白の利用に注目集まる/植物蛋白食品協会セミナー

野菜料理家・庄司いずみさん
日本植物蛋白食品協会は2月17日、中央区日本橋の製粉会館で、恒例の技術セミナーを開き、野菜料理家の庄司いずみさんが「世界のベジタリアン事情と日本のこれから」と題した講演を行うとともに、「ベジタリアン・ヴィーガンクッキング実践編」を紹介した。

冒頭あいさつした中村靖技術部会長(不二製油たん白素材開発室第一グループグループリーダー)は、「世界人口は、2050年には100億人に迫ると言われており、動物資源の枯渇問題の深刻化が危惧されている。環境負荷低減に有効な植物性たん白の利用は今後ますます社会に対して、その注目と重要性が高まるはず。日本国内でも意識的に動物性食品を減らす食生活をおくるフレキシタリアンという言葉をよく聞く機会が増えてきた。若者を中心に植物性食品への食意識の変化が少しずつ浸透してきている。一方で、訪日外国人旅行者の数は年間3,000万人を超え、今年の東京オリンピック・パラリンピックを迎えるに当たり、イスラム教などの宗教上の理由で食事制限を受ける訪日外国人へのメニュー提案は今後の課題のひとつとなっている。今回の技術セミナーでは、この課題に重要な植物性たん白をよりおいしく、消費者に広く普及することに焦点をあてて講演してもらう」と述べた。

植物蛋白食品協会・中村靖技術部会長

植物蛋白食品協会・中村靖技術部会長

〈代替肉市場は今後10年で15兆円にまで拡大、訪日外国人の市場規模は468億円〉
庄司いずみさんによると、世界にはたくさんの食のルールを持つ人が存在し、宗教上の理由で肉を食べない、ムスリムが17億人、ヒンズー教徒が10億人、その他が2億人にものぼり、世界的にみても無視できない市場だと指摘した。
 
ベジタリアン・ヴィーガン・プラントベース(植物性の食品を中心とした食事法)など、日本で菜食主義と呼ばれる食スタイルの人は世界に数多く存在し、訪日外国人のうち、ベジタリアンは150万人、訪日外国人の4.8%を占めると言われ、その市場規模は468億円にものぼると強調した。
 
また、庄司さんは、アカデミー賞の昼食会で、100%ヴィーガン対応料理が提供されたことや、フランスの小学校で週一回のベジタリアン給食が義務化されたことなどを挙げ、世界的にベジタリアンやヴィーガンに向けた食の広がりが急速に浸透してきていることを紹介した。
 
これらの市場規模に関しては、米国人の31%がフレキシタリアンであり、英国人の3分の1が肉の消費を減らし、豪州人の半数も肉の消費を減らしていることなども影響して、代替肉の市場規模は今後10年で15兆円にまで拡大するとした。
 
第2部の講演テーマ「ベジタリアン・ヴィーガンクッキング実践編」では、大豆ミートをよりおいしく食べるためのコツを紹介。植物性素材は油脂分をあまり含まないので、油脂をうまく使うとコクやうま味が増し、満足感が得られるとした。また動物性の素材に比べ、植物性の素材はナトリウム含有量が少なめのため、塩やしょうゆ、発酵調味料などで少し強めに味付けするだけでも、ヴィーガン料理が変わることなどを伝授した。
 
閉会に当たりあいさつした有海正浩運営委員(日清オイリオグループ大豆蛋白営業部長)は「第1部の講演を聴いて、ベジタリアンは世界だけでなく日本でも増えていくのだと思った。第2部では大豆ミートのさまざまなテクニックを学ぶことができた。今後の業務や私生活に取り入れて、活用していただければと思う。協会では有益な情報やイベントを積極的に行っていこうと思う。今後もさまざまな課題に挑戦してクリアしていきたい」と述べた。
 
〈大豆油糧日報2020年2月20日付〉