J-オイルミルズ 価格改定はコスト改善含め提案、丁寧かつスピード感持って進める/富澤亮常務執行役員営業管掌インタビュー

J-オイルミルズ「すごい長徳」
――上期を振り返って

家庭用油脂は、巣ごもり需要により大きく市場が拡大した翌年にあたり、売上高は前年を下回った。キャノーラ油は、主原料である菜種の相場が最高値を更新し、海上運賃も含め急激にコストが上昇した。4月、6月、8月に3度の価格改定を発表し、お客様へのご説明に注力したが、予想を上回る急激なコスト上昇により、営業利益は大きく下回った。

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J-オイルミルズ 富澤常務

J-オイルミルズ 富澤常務

 
菜種はさらにコスト環境が悪化する懸念があり、11月からの4度目の価格改定を発表し、商談を進めている。
 
オリーブ油は市場が縮小するとともに競争環境が激化し、売上高は前年を下回ったが、6月については、テレビCMを投下することで前年を上回った。9月には2021年で初めて市場が前年を上回り、回復の兆しがみられた。引き続き市場動向を注視しながら、しっかりと鮮度や品質といった価値を訴求していく。原料である米の安心安全のイメージが高いこめ油は市場が拡大しており、当社の売上高も大きく前年を上回った。
 
業務用油脂は、緊急事態宣言やまん延防止等特別措置の影響により、外食向けを中心に厳しい状況が継続したが、市場が大きく減退した裏年ということもあり、販売量は前年を上回った。
 
家庭用と同様に3度の価格改定に注力してきたが、急激なコスト上昇に追い付かず、営業利益は前年を大きく下回った。価格改定に伴い、ユーザーのランニングコスト軽減に貢献するべく、長く使える油として提案を強化した「長徳」の販売量は前年を大きく上回った。
 
――価格改定の達成度は
 
外食産業を中心に、長年当社を支えていただいてきたお客様においては厳しい状況が続く中、難しい交渉をお願いしてきた。単に値上げをお願いするだけではなく、売上アップやコスト改善につながる提案なども含めて、丁寧にご説明している。特に8月実施の50円/kgは過去に例をみない水準の上げ幅だったことから、ユーザーも受け入れに時間がかかっている面もあり、想定より進捗が遅れた。計3回発表した改定に対して、流通各社・需要家から一定のご理解をいただきながら進めている。11月からの4回目の価格改定に関して、厳しい環境については一定のご理解をいただいているが、ユーザー様、販売店様の現状も踏まえつつ丁寧かつスピード感を持って進めていきたい。
 
〈「長徳」で環境・労働負荷の軽減に貢献へ、スターチ製品と組み合わせた課題対応〉
――下期の重点施策を

 
家庭用は、オリーブ油は生活者の購入視点である「鮮度が良いこと」についてバリューチェーン全体での鮮度キープの取り組みによるおいしさと健康価値訴求を推進していきたい。
 
また、ESG視点でプラスチック使用量60%減を実現し、環境に配慮した紙パック製品を上市したが、使い勝手の良さ、畳んで捨てられる捨てやすさ、Wキャップ、保管のしやすさも好評である。賞味期限が2年と長いことも好評で、今後の市場活性化を目指す。
 
業務用は、おいしさはそのままに、揚げられる期間を長くするために開発した独自技術の「SUSTEC」を活用した「長徳」の提案で、ユーザーの油の使用量を減らし、環境負荷と労働負荷の軽減に貢献していきたい。特に今年度上市した「すごい長徳」は、酸価上昇と着色を4割抑えられ、従来品より長くお使いいただけるのでユーザーのニーズに貢献できると考えている。また、「おいしさデザイン」の考え方のもと、ジューシーさの付与、食感の改良、経時劣化の抑制など、食品の品質を向上させるスターチ製品と組み合わせた提案により、ユーザーが抱える課題に対応していく。加えて、食肉や乳などの天然資源代替の提案も進めていきたい。
 
――下期の市場環境、原料コスト状況は
 
原料コストの高騰は短期的な需給要因に加えて、環境問題に端を発するバイオ燃料需要を含めて中期的に影響を及ぼす構造変化と認識している。
 
今後、原料価格、油脂製品そのものの値位置が変わってくる可能性が高いと捉えている。新穀の菜種においては、20年ぶりとなる水準での油分低下が見込まれ、カナダドル高、円安の要因も加わり、第4四半期に向けてさらに厳しさを増すと捉えている。市場が拡大しているこめ油のコスト上昇も大きな懸念材料だ。
 
――年末需要の見通しは
 
家庭用は上期と比較すると、前年の特殊要因の影響は少ないため、前年下期よりも大きく需要が減少することはないとみている。オリーブ油は10月、12月と2度の鮮度を訴求したテレビCMの投入により、需要拡大を図っていく。
 
業務用は、10月以降の規制緩和と選挙後の内需刺激策を背景に前年を上回る水準で推移するものと期待しているが、第6波への警戒感、テレワークの浸透、飲食店数自体の減少、インバウンド需要の消滅などの要因で、どこまで回復するかは不透明で、楽観はできない。
 
〈大豆油糧日報2021年11月30日付〉