食品大豆動向 最大懸念はコンテナ不足、新穀サンプル到着遅れ、在庫ひっ迫の可能性も

〈11月中旬洪水でカナダ産白目の不足懸念、品質は概ね問題ないとの見方〉
2021年産米国大豆は、米農務省の11月見通しによれば、前年度比4.9%増の1億2040万tと、過去最高に次ぐ生産量となる見通し。北西部で高温乾燥の影響や、中西部で干ばつがあったものの、概ね主産地は天候に恵まれた。一方、大豆流通関係者からは、「納豆用極小粒のメイン産地である中西部などは、干ばつ影響で若干の単収低下が懸念される」との声も聞かれる。

品質面については、アメリカ大豆輸出協会が11月にオンライン開催した「米国大豆バイヤーズアウトルック会議」の品質報告では、油分濃度は前年よりも0.7ポイント高の20.2%、一方でたん白値は0.5ポイント低い33.4%と報告されている。大豆流通関係者も、品質は悪くないとの見方を示しているが、10月に入ってからの収穫期の降雨により、水分が落ちないまま収穫されてしまった場合、大豆の汚れなどが懸念されるとしている。

昨今、大豆業界の頭を悩ませている最大の課題は、コンテナ不足による船積み遅れだ。「ブッキング自体が取りづらくなってきている。新穀2021年産のサンプルも届いていない状況だ。船積み遅れは、2~3年解消されないままではないか」と注視する声が聞かれる。

なお現状は、船積み遅れにより輸入大豆が足りないという事態には陥っていないものの、「例年であれば12月には新穀が入ってくる。新穀が入ってくるタイミングが更に遅れれば、国内在庫がひっ迫するかもしれない」といった声や、「2020年産の手当を少なめに済ませていた事業者もおり、もう少ししても新穀が入ってこない場合、騒ぎになってしまうかもしれない」(大豆流通関係者)と懸念している。なお、ベトナムでのコンテナ新造といったポジティブな情報もあるものの、いずれにしても新穀を積み出すには間に合わず、有効な解消策にはならないと見られている。

2022年産のプレミアム(作付奨励金)の提示は例年よりも遅れているもようだが、農家サイドにおいては農薬や人件費などの各種コストが上がり、加えてシカゴ相場が高値安定し生産に手間のかかるNon-GMO大豆でなくても採算がとれる環境であることから、プレミアム上昇は避けられないと見られている。

続いて、カナダ産大豆の動向は、11月中旬に豪雨に見舞われ、一時鉄道大手2社が運行を停止した。大豆流通関係者によれば、これにより、日本におけるカナダ産白目の不足が懸念されると注視している。「鉄道は動き出してはいるものの、スムーズにいかず、バンクーバーまで届かないコンテナもあるようだ」と、大豆を含む穀物輸送への影響を指摘する。

なお、2021年産カナダ大豆の生産は、米農務省によれば、前年度比7.2%減の590万tの予測となっている。生育期間の西部での乾燥影響による単収減が影響した。カナダ農務農産食品省によると、収穫面積は4.8%増の一方、単収はマニトバ州などで大幅に減少。生産量の多いカナダ東部の大豆の収穫が降雨過多で遅れが見られた。

〈令和3年産国産集荷見込17.9万t、相場は落ち着くとの見方も〉
令和3年産国産大豆は、JA全農と全集連を合わせた集荷見込み数量は、前年産比8%増の17万9968tと発表された。2021年7月時点の生産計画比では、7.9%減(約1万5463tの下方修正)となっている。

8月の大雨被害を受けた九州は、生産計画から約1万5000t減少の見通しとなっているが、北海道・東日本地区は生産計画を上回る見込み。しかし、北海道は干ばつ影響による小粒化が指摘されている。

全体的には、減産が続いた過去3年比較では量は獲れており、12月からスタートする入札は、「希望的観測もあるが、価格は多少落ち着くのではないか」(大豆流通関係者)といった見方がある一方、「平成30年産~令和2年産まで不作となり、繰越在庫を余り持っていない。3年産を前倒しで使うことになれば、余分に手当する必要が生じるのではないか」、「事業者によっては、ラベルで謳っている関係で、産地・品種指定することも考えられ、一定の大豆品種に札が集中してしまう可能性もある」と慎重な見方もなされている。

〈大豆油糧日報2021年12月22日付〉