3月末の米農務省の2022年産米国大豆の作付予想は、過去最高の9100万Aと発表された。ただ現状、大豆・トウモロコシの比価は、2.0~2.1と、農家にとって、トウモロコシ有利に動いており、天候次第で単収の伸びが大きいトウモロコシを出来る限りギリギリまで粘って作付したいという農家の声も多く聞かれるようだ。

また、穀倉地帯(穀物を多く産する地域)であるウクライナとロシアの戦争が長引けば、トウモロコシ価格がさらに高騰し、シカゴ大豆相場にも影響を与える可能性がある。予想通り作付されるかは不透明な部分もある。

兼松の食糧素材部食品大豆課の繁田亮課長に、米国大豆の作付見通しや、飼料用への転換も増えているという食品大豆の生産動向の現状、今後の安定調達に向けた対策について話を聞いた。

――米農務省の大豆作付予想をどう見るか

2021年産の大豆の在庫率は4月8日時点で5.85%と少なく、米国から中国向けの輸出需要は上方修正されたため、ひっ迫した在庫状況が続くのは変わらない。作付予想の9100万Aは確かに多く、実現できれば大豆にとっては弱材料になると思う。ただ、トウモロコシの価格も上がっている状況で、果たして9100万Aが本当に作付されるかどうかだ。

まずはトウモロコシから作付が開始されるが、予報では4月の後半にかけて気温が低めと予想され、東部を中心に降雨予報も出ており、作付が遅れることを危惧している。トウモロコシが作付されない場合、農家が大豆の作付にシフトするパターンは過去にあるが、簡単にそうなるとは思っていない。

トウモロコシ自体が割高で、大豆とトウモロコシの比価は、かなりトウモロコシ有利に動いているためだ。比価は一般的に2.4~2.5と言われ、肥料高騰により2.2~2.3と言われている。対して現在、2.0~2.1で推移している。現地のサプライヤーと話していても、農家はできる限りトウモロコシを作付したがっているが、物流混乱の問題は米国内でも影響を受けており、種や肥料も潤沢ではなく、追加で作付する準備が間に合わず、年末から年始にかけて決めた量を結果的に維持せざるを得ないという声も聞こえる。

また、天気が良くて豊作となった時の単収の伸び率はトウモロコシの方が大きいので、米国農家はギリギリまでトウモロコシを作付したいと考える。予報では5月の前半までは気温が低めの予想だが、それ以降は多少気温も上がってくるとされ、そうなると一気にトウモロコシの作付が進んでくる可能性はあるだろう。

基本的にはトウモロコシの作付けが順調にいき、大豆はうまくいけば最終的に9100万Aが上限とみている。6~8月にかけての中期予報では、気温は高めで降雨量については、西部は乾燥、東部は平年並みと出ている。気温が上がって、乾燥が進むと何らかの影響があり、作柄が悪化するため、夏場も決して楽観的になれない。総じて今年の天候相場は懸念材料が少なくない。

〈ブラジルの大豆輸出滞ればシカゴ大豆相場に影響、二期作トウモロコシは乾燥懸念も〉
――ウクライナ問題の影響と今後の見通しは


ウクライナはトウモロコシを約4000万t生産しているが、今年は半分になるという話も出ている。

ロシア関係では原油が引き続き高止まりしているが、過去の相関を見ても、原油と大豆油、シカゴ大豆は連関し、原油が上がるとシカゴ相場が上がりやすい。仮にウクライナ情勢が落ち着いても、原油の取引は何らかの制限が出てくると見られ、結果的に大豆をサポートすることになる。

南米は干ばつの影響もあって減産となるが、ほぼマーケットに織り込まれている。ただ、ブラジルの収穫は主生産地の北部はほぼ終わっているが、南部は雨が降っており、遅延の話も出てきている。生産量全体に与える影響は未定だが、輸出が滞り、収穫も遅れてくると、シカゴ大豆相場に間接的な影響を与える。

また、ブラジルが二期作目のトウモロコシの作付シーズンに入っているが、全体で見ると3割程度のエリアで雨が降っておらず、乾燥懸念がある。

トウモロコシは、ウクライナ問題で世界的に需給がひっ迫する中、過去10年ほど世界の需要を支えてきたブラジルの二期作目のトウモロコシに与える影響があれば、トウモロコシの価格が高騰し、大豆へも影響する懸念はある。南米の状況もまだまだこれから要注意だ。

〈シカゴ相場上昇でNon-GMO農家は飼料用やGMOにかなりシフト、品種の選択肢増やす〉
――Non-GMOの食用大豆の調達の見通しは


アメリカ大豆輸出協会(USSEC)の昨年後半時点の発表データでは、22年産の生産予想は500~550万tに落ち込んでいる。22年産Non-GMO(遺伝子組み換えでない)の食品大豆の農家との契約は、1年かけて行っているが、かなりの農家がGMOにシフトしている。1年前のシカゴ相場が上昇し始めた頃は、需要がそれなりにあり、プレミアムである程度調整されて生産量を維持できると思っていたが、シカゴ大豆相場の上昇具合が高く、600万tからの減産は避けられない。

また、USSEC発表のデータでは、作付面積は飼料用Non-GMOが増え、食品用Non-GMOが減ると予想されている。コンテナが取れないと輸出できず、農家は出荷できないと現金化できない。同じNon-GMOでも手間暇がかからず、品質に関係なく自分たちのタイミングで近隣の搾油メーカーに販売できるNon-GMO飼料用大豆にシフトしている。

米国内ではNon-GMO飼料用大豆で育てた畜産物や乳製品の量販店における販売も増えてはいるが、単収を重視している農家サイドの意向により、21~22年産にかけて、Non-GMO飼料用へのシフトがかなり進んできている。先日発表されたカナダのカンファレンスでは、Non-GMO大豆の生産量も微減予想となっている。北米括りの22年産の食品用Non-GMO大豆は減産となる見込みだ。

引き続き、中国、東南アジアの需要が堅調だ。中国は自国生産だけでは十分賄いきれておらず、自国産の低たん白大豆よりも加工適性が良い高たん白大豆を北米から輸入できるため、大豆食品製造の歩留まりを考えると中国の需要は今後も増加していくだろう。Non-GMO大豆の需給ギャップはさらに広がっていく。

――大豆加工品の価格改定の必要性について

足元で入ってきている大豆は1年前に値決めしたものが多い。ただし海上運賃は何倍にも上昇しており、配送費や資材費、人件費など全てのコストが1年前の値決め時点から上がってきている。コスト吸収のためにも製品価格は相応の形で上げてほしいという思いはある。

物流はまだ混乱しており、必要量の3~4割程度しか輸入できていない状況が続いている。運賃に関しては金額の問題ではない部分もあるが、ある程度は運賃を上げていきながら、安定供給に努めていくことが輸入商社の使命でもある。他の業態や他国では早々に値上げを行い、供給優先で動いている。日本のマーケット自体は値上げしづらい環境だが、状況は逐一説明しながら協力を仰いでいる状況だ。

21年産は順次入ってきているが、新穀に切り替わるタイミングで間違いなくコスト増になっている。コスト増分以上の運賃をお願いし、なんとかコンテナを取れるようにはしている。少しずつ理解を頂き始めたが、ウクライナ問題の影響が大きく、海上運賃と国内輸送の部分で、さらに値上げをお願いしないといけない状況だ。

――今後の対策としてできることは

1つは品種の選択肢を増やすことだ。Non-GMOも毎年のように新品種が出てきている。食品用大豆では用途ごとに求められている品種があるが、できる限り多様化させて、フレキシブルな形で提案し、理解してもらう。今まではスペックのみを見ていたが、農家受けする高単収の品種をテストする回数、頻度は増えている。テストの回数が増え客先には負担をかけてしまうが、引き続き、大豆加工品メーカーにも理解を得るべく働きかけていきたい。

2つ目は、値決めのタイミングを早めることだ。メーカー側も予算などの事情があり時間が掛かるのは充分理解するものの、安定確保という点でも、できるだけ早めに意思表示をして頂きたい。必要量を早めに決めてもらえば、確保に向けた現地との交渉が行いやすくなる。最近顕著なのは、見込んでいたNon-GMOの農家にGMOへのシフトを決められてしまうことだ。Non-GMO大豆の作付け意欲のある農家を逃さずに契約をしていくことが重要である。

〈大豆油糧日報2022年5月10日付〉