発売50周年「日清焼そばU.F.O.」が約40年前、杏里とともに挑んだ“東日本の壁”【シティポップと食品産業】
日清食品は2026年、アニバーサリーイヤーを迎えるカップ麺の販促を展開している。ひとつは発売55周年を迎える「カップヌードル」、そして発売50周年を迎える「日清のどん兵衛」「日清焼そばU.F.O.」の3ブランドで「日清三大祭り」を展開し、ユニークなCM展開などを通じて若年層の取り込みを図るという。

「日清焼そばU.F.O.」(以下「UFO」)の発売は1976年5月21日。同年4月に発足したばかりの同社マーケティング部が初めて送り出したヒット商品だ。その特徴は、何と言ってもソースの香ばしさ。当時マーケティング部長だった安藤宏基氏(現・日清食品ホールディングス社長・CEO)が目指したのは“一か月に何回も食べたくなるガツーンと来るにおい”だったという。
「私は『蓋を開けたらソースの香りが家中に溢れるぐらいに強くしてくれ』と頼んだ。二人はオニオンとガーリックを焦がした『ロースト・ソース』を作ってきた。(中略)最後は、本当にこんな香りでいいのかというくらい、強烈な液体ソースが開発された。これがUFO成功の鍵だったと思っている。」(『カップヌードルをぶっつぶせ!』安藤宏基・著)
初代のCMキャラクターには漫談家の松鶴屋千とせさん、翌1977年には落語家の桂三枝さん(現・桂文枝)が起用された。しばしば誤解されるがピンク・レディーの『UFO』は翌1977年12月の発売で、日清食品が二人をCMに起用したのは同曲が大ヒットしたのちの1978年のこと。いわば“後付け”のタイアップだった。
初年度からカップ焼きそば市場の60%以上を獲得する大成功を収めた「UFO」だったが、課題は東日本だった。当時日清食品は西日本では圧倒的な営業力で市場を制していたが、関東においては「ペヤングソースやきそば」(まるか食品)の牙城を崩せずにいた。
「UFO」の前年に発売された「ペヤング」は“四角い顔”の桂小益さん(現・桂文楽)が出演するCMの効果もあり、すでにスーパーから駄菓子屋まで幅広い店頭に定着。縁日の屋台で食べる焼きそばをイメージして開発された四角形の容器はストックにも都合が良く、対照的に円形の容器を使った「UFO」には流通からの不満も寄せられたという。
首都圏を攻略すべく日清食品は1980年、関東風のソースを使用した東日本限定の「UFO」を発売した。商品名も「日清ソース焼そばU.F.O」とソースの特徴を全面に打ち出し、パッケージも都会的なシンプルなデザインに変更。川崎麻世さん、三原じゅん子さん、美保純さんといった旬のアイドルタレントをCMに起用したが、販売は伸び悩んだ。
この状況を打開するため起用されたのが、テレビアニメ主題歌『CAT’S EYE』と、続く『悲しみが止まらない』でブレイクを果たしていたミュージシャンの杏里さんだった。1984年、日清食品は「キラキラハートの味がする。U.F.O.」のキャッチコピーとともに、杏里さん本人が出演する大々的なタイアップキャンペーンを展開。アップテンポな新曲『気ままにREFLECTION』がイメージソングとして使用された。
都会的で洗練された女性シンガーとカップ焼きそばのCMは一見してミスマッチな印象を受けるが、日清食品としては競合他社の強みである“屋台の焼きそば”のイメージとの差別化を図ることが大きなミッション。すでに夏や海辺のイメージを確立していた杏里さんを起用することで、カップ焼きそばの書き入れ時である夏の季節感を占有したいという意図もあったのかもしれない。
CM中で杏里さんが発する「条件反射でプリーズ」は、“一か月に何回も食べたくなる”ソースの魅力を訴求するためのものだろう、REFLECTION(反射)というキーワードとも呼応しているようだ。シングルレコードのB面に収録された曲は「S.H.A.R.E~愛をふたりで~」。“ヤングにペアで食べてもらいたい”と名付けられた商品への対抗心も見え隠れする。
杏里さんの『気ままにREFLECTION』はオリコンチャート最高7位、17.1万枚を売り上げるスマッシュヒットを記録したが、都市部の若者に狙いを定めた「UFO」のキャンペーンの効果はいまひとつに終わった。当時のメディアはこう報じている。
「同社は西日本地区ではカップ入り焼きそばで80%以上のシェアを持っている。しかし、東日本地区では約10%に過ぎない。まるか食品の『ペヤング カップやきそば』が強く約60%のシェアを持つなど他社に押され気味」(『日経産業新聞』1985年2月9日付)
翌1985年、日清食品は「UFO」のソースとパッケージをふたたび全国で統一、CM戦略も全面的に見直した。時あたかも珍獣ブームの真っただ中。新しくCMに起用されたのはアイドルでもミュージシャンでも落語家でなく、“UFOに乗ってやってきた愛の使者”、ウーパールーパー(メキシコ原産のサンショウウオの一種)だった。ちなみにCMソング『ウーパー・ダンシング』を手掛けたのはミュージシャンの尾崎亜美さん(パピ名義)。CMのテイストは大きく変わったものの、シティポップ路線の楽曲は引き継がれた、というのは少々無理があるか。
【岸田 林(きしだ・りん)】







