2024年の農産物・食品輸出、1兆5,000億円突破で過去最高、中国減も他地域でカバー

〈日本食レストランの増加、インバウンドによる日本食人気の高まりによる好調な外食需要などで〉
農水省は4日、2024年(1~12月)と12月の農林水産物・食品の輸出実績を公表した。2024年の実績(少額貨物輸出額を含む)は前年比3.7%増の1兆5,073億円となり、12年連続で過去最高額を更新、初めて1兆5千億円を突破した。
2024年上半期は、1月を除きマイナスで推移する品目が多かったが、下半期は対照的に7月を除きプラスで推移し、11-12月は2割水準で増加した。
中国・香港向けの輸出実績が、2023年夏のALPS処理水放出以降、水産物の輸入規制の影響を受け、大きく減少したが(中国:1,681億円・29.1%減、香港:2,210億円・6.6%減)、中国・香港以外の国・地域が大きく増加した結果(1兆203億円・15.4%増)、前年実績を上回った。
同省は2024年の輸出実績について、「日本食レストランの増加、インバウンドによる日本食人気の高まりなどを背景とした好調な外食需要のほか、事業者の販路拡大の取組みなどの進展が輸出増加の主な要因」としている。
ただ、「2025年2兆円/2030年5兆円」目標に関しては、まだ数値が離れている。同省は「25年目標達成には+5,000億円だが、この増加幅は過去にないレベルで伸ばす必要がある。品目によっては過去最高を記録しているものもある。輸出重点品目の中では、25年目標を既に達成しているのはコメや鶏卵など7品目。高い伸長が必要だが、中国向け輸出の再開・解禁交渉、米の輸出拡大に向けたプロジェクトなど、各種政策努力を進めている」とするにとどめた。
〈品目別実績は幅広いカテゴリーで増加〉
2024年の品目別実績では、加工食品が4.8%増の5,341億8,200万円、畜産品が5.6%増の1,395億5,300万円、穀物等で11.2%増の741億8,500万円、野菜・果実等9.1%増の732億900万円、その他農産物19.8%増の1,558億9,300万円、林産物7.5%増の667億2,800万円、水産物(調製品除く)6.3%減の2,818億7,200万円、水産調製品11.6%減の790億600万円となり、水産物・水産調整品以外はすべて前年実績を上回った。
畜産品のうち、畜産物は6.5%増の1,073億4,600万円。うち牛肉は12.1%増の648億2,800万円、豚肉が11.1%減の23億7,500万円、鶏肉が2.9%減の24億8,100万円、鶏卵1.8%増の71億1,300万円、牛乳・乳製品0.8%減の305億4,800万円だった。牛肉の輸出額は、認知度のより一層の向上を背景として、米国、台湾、東南アジア、欧州などで商流が一層拡大したことで前年から70億円増と大幅に増加した。輸出増加額の主な国別内訳は、米国41億9,900万円、台湾17億7,300万円、タイ11億1,000万円。
コメ関連では、商業用米が27.8%増の120億2,900万円、パックご飯などは44%増の14億3,000万円、米菓は7.7%増の65億7,100万円の3品目が過去最高を更新した。商業用米はアメリカや香港でおにぎり店や寿司店など、日本食レストランの増加など外食向けを中心に需要が増加している。パックご飯はアメリカ向けが中心。
日本酒は5.9%増(434億6,900万円)と北米などの日本食レストランの増加、インバウンドなど日本食への関心高まりなどから需要増加で伸長を見せたが、過去最高には及ばなかった。
なお、輸出重点品目に含まれる輸出額の増加が大きい10品は以下の通り。
ソース混合調味料 +86億円(16%増)、緑茶 +72億円(25%増)、牛肉 +70億円(12%増)、清涼飲料水 +38億円(7%増)、菓子〈米菓除く〉+36億円(12%増)、りんご +34億円(21%増)、米〈援助米除く〉+26億円(28%増)、日本酒 +24億円(6%増)、醤油 +21億円(21%増)、味噌 +12億円(25%増)。
〈国・地域別輸出実績は、米国、香港、台湾、中国、韓国の順に〉
国・地域別の輸出実績では、米国が17.8%増・2,429億円で1位となった。2位は香港(6.6%減・2,210億円)、3位が台湾(11.2%増・1,703億円)、4位中国(29.1%減・1,681億円)、5位韓国(19.8%増・911億円)。EUは18.5%増・858億円だった。
米国が1位になるのは、2004年以来20年ぶり。輸出額増額の主な品目として、ホタテ貝(生鮮等)、牛肉、日本酒が挙げられている。中国は水産物輸出規制の影響から輸出額が大幅に減少し、順位を落とした。
〈12月単月の輸出実績は22.1%増・1,543億円〉
2024年12月の輸出実績は、前年同月比22.1%増の1,543億円となった。同月は春節(旧正月)の影響から大幅に伸びたとみられる。農産物、林産物、水産物、すべての分野で前年実績を上回った。
品目別輸出実績では、加工食品12.9%増の527億5,600万円、畜産品が30.7%増の163億900万円、穀物等で17.6%増の76億9,200万円、野菜・果実等36.7%増の124億200万円、その他農産物23.1%増の162億9,600万円、林産物28.7%増の71億1,500万円、水産物(調製品除く)20.8%増の293億3,400万円、水産調製品16.0%増の380億9,000万円となった。