社員食堂で“世界の料理”の提供が拡大、背景に外国籍労働者の増加

日本で働く外国人労働者が増える中、世界の料理を提供する社員食堂が増えている。
8月には、グリーンハウスが運営を受託するスズキ本社の社員食堂で「シンガポールフェア」が開催された。
スパイスの香りとスペアリブのうま味が詰まった深みのあるスープ「バクテー」や、ココナッツミルクの甘さとえびのうま味が特徴のスパイシーヌードル「ラクサ」など、本場の味を再現したメニューを提供。食堂利用者からは、「バクテーの肉が柔らかくておいしかった」「本格的なソースで、何が入っているのか気になった」などの声が寄せられたという。
また、9月には、フジ産業が運営を受託する一部の社員食堂でハワイの料理が提供された。カリっとした独特の衣と甘辛味がやみつきになる「モチコチキン」や、パイナップルを大胆にトッピングした「ハワイアンハンバーグ」などの料理を通じて、メニューに彩りと楽しさを添えて、社員食堂を活気づけたという。
こうした世界の料理の提供の背景には、近年、日本で働く外国人の増加があるという。社員食堂の運営を担う給食会社にとって、食堂を利用する外国籍のお客様に喜んでもらうことや、世界各国の料理を提供することで、文化の違いを理解し交流のきっかけを提供するなどの狙いがあるようだ。
〈ベトナム人の技能実習生がメニュー開発に関わることで、本場の味を提供する社員食堂も〉
そうした中、中京地区の給食企業メーキューは7月、母国の味を再現できれば日本で働く外国籍の人々の励みになるのではないかと考え、運営を受託する社員食堂でアジアフェアを企画した。単に異国の料理を提供するだけでなく、同社のベトナム人実習生が持っている自国の文化や知識を活かしメニュー開発に参加する取り組みを行った。
第一弾のフェアメニューとして選ばれたのは、ベトナム中部ダナン地域で親しまれる麺料理「ミークアン」。本場では汁気の少ないスープに香草やナッツ、エビ、豚肉が彩りよく盛り付けられるこの料理は、ベトナムでも地域色が強く、日本ではなかなか味わえない。そのミークアンが選ばれたのは、実習生の中にベトナム中部地方出身者がいたからだ。

メニューは、名古屋名物きしめんを使用し、日本人の舌にもなじみやすいようスープのベースを鶏ガラに変更。さらに、ベトナム感を損なわないようナンプラーで風味を整えて両国の文化を融合した。また、乾麺ではなく生麺を使うことで調理効率を高め、スピーディな提供も可能に。試作の初期段階では味が濃すぎる、香りが強すぎるといった課題もあったが、本場の味を知るベトナム人実習生たちに細かい味の調整を手伝ってもらうことで、一歩ずつ完成へ近づけたという。その結果、ベトナムの魅力を残しつつ日本の食文化にも馴染むバランスの取れた一品に仕上げた。
フェア当日、ベトナム出身の食堂利用者から多くの「おいしい」という声がよせられたという。また、地域色の強い料理のため、ベトナム国籍の人の中にも「初めて食べた」という人が多く見られたようだ。
同社では、ベトナムに限らず、他国の料理を取り入れたフェアの計画も進行中だ。
広報担当者は「社員食堂を、単なる食事の場から多文化共生の架け橋となる交流の場へと発展させることが、私たちの目指す姿だ。これからも、多様な文化背景を尊重し、全ての従業員が『ここで働けて良かった』と感じられる職場づくりに取り組んでいく」とコメントした。

