清涼飲料の賞味期限、1か月逆転しても9割近くが購入意向、飲料大手5社が賞味期限ルールの緩和“製造ロット逆転”や軽量化ペットボトル・キャップを本格検討へ/飲料業界「社会課題対応研究会」

飲料5社が納品時の賞味期限ルールの緩和目指す、食品ロスと物流負荷の低減へ
飲料5社が納品時の賞味期限ルールの緩和目指す、食品ロスと物流負荷の低減へ

清涼飲料の賞味期限は、1か月程度の前後であれば購入時に気にしない人が多い――。飲料大手5社でつくる「飲料業界『社会課題対応研究会』」が2025年9月に実施した意識調査では、スーパーなどの店頭で1か月程度の賞味期限逆転が確認されても「購入する」と回答した人が86.5%に上った。

同研究会は、こうした結果を踏まえ、賞味期間が長い清涼飲料においては製品ルールが緩和されることで、製造ロット合わせのために生じる“過度な輸送”を年間でトラック約3万台分削減し、食品ロスと物流負荷の低減につなげられると示した。

飲料業界『社会課題対応研究会』の発表会に各社担当役員が出席
飲料業界『社会課題対応研究会』の発表会に各社担当役員が出席

同研究会は11月27日に都内で発表会を開催した。2024年にアサヒ飲料、伊藤園、キリンビバレッジ、コカ・コーラ ボトラーズジャパン、サントリー食品インターナショナルの5社が協力して研究会を発足。まずはじめに「物流2024年問題」によるトラックドライバー不足への対応に取り組んだ。同業他社や異業種企業との共同配送や往復輸送、倉庫のバース予約システム(荷降ろしスペースの事前予約)などを導入してきた。

その結果、納品先で1時間以上続くトラックの待機時間件数が5社平均で約40%減少したという。慢性的なドライバー不足の中、ライバル企業同士が協働することにより具体的な成果を上げた。

そして、今後の重要検討テーマの1つが、納品時の賞味期限ルールの緩和(製造ロットの逆転)である。現在の清涼飲料業界では、スーパーなどの店頭で賞味期限が古い商品から並ぶように、工場や倉庫で製造ロットを厳密にそろえて出荷する運用が一般化している。

この“ロット逆転の防止”のために、本来は近隣倉庫から供給できる商品を、遠方から運ぶケースも多々あり、5社合計で年間3万台分のトラック輸送が発生していると試算する。また、その輸送が叶わない場合には、店頭に並ぶ前の段階で賞味期限の前後を理由に処理されるケースもあり、食品ロスの一因にもなっている。

ただ、こうしたルールは小売・卸を含む流通全体で長年続いてきた商慣習であり、「とてもハードルが高いテーマ」だと研究会は位置づけている。それでも議論に踏み込むのは、物流効率化と食品ロス削減の両面で構造的な改善余地が大きいためだ。

購入するときに、賞味期限/消費期限を気にしている人の割合(n=2670)
購入するときに、賞味期限/消費期限を気にしている人の割合(n=2670)

発表会では、同研究会が行った賞味期限に対する生活者の意識調査(インターネットリサーチ、対象者は15歳~69歳の2670名、2025年9月実施)の詳細も示された。それによると、購入時に「賞味期限/消費期限を“気にする”」と回答した割合は、牛乳や精肉で6~8割に達した一方、賞味期間の長いペットボトル飲料・缶飲料では約15%にとどまり、賞味期限表示がないアイスクリームに次いで少ない割合だった。

ペットボトル飲料の賞味期限の日付逆転が購買行動に与える影響(n-2670)
ペットボトル飲料の賞味期限の日付逆転が購買行動に与える影響(n-2670)

さらに賞味期間が長いペットボトル飲料において、1か月程度の賞味期限の逆転があった場合でも「購入する」と回答した人は合計86.5%となった。日付の前後が購買行動に与える影響は限定的であり、ロット逆転の許容が物流負荷改善・食品ロス削減につながる可能性を裏付ける形となった。

研究会では調査結果を踏まえ、賛同する流通企業と連携して2026年1月以降に賞味期限が前後した商品の運用テストを開始すべく協議を進めていることを明らかにした。実証結果をもとに、段階的にルールの在り方を検討する。

研究会は農林水産省とも情報交換を進めており、同省は同研究会の取り組みについて「物流の効率化や食品ロス削減などによる環境負荷の低減に資する賞味期限表示のあり方の見直しに向けて、現状起きている非効率を見える化し、メーカー間や卸・小売との協議を進め、見直しの影響を受ける消費者側の受け止めについてもアンケートでの把握に取り組まれたというのは、まさにこの流れに沿ったものであり成果を期待している」とコメントしている。

ペットボトル・キャップの軽量化イメージ
ペットボトル・キャップの軽量化イメージ

また、もう一つ今後の重要検討テーマとして、ペットボトルの飲み口部分を短くした軽量化ペットボトルとキャップの導入に向けた研究が明らかにされた。過去から各社それぞれでペットボトルの軽量化は進められてきたが、飲み口部分の軽量化に限っては、日本では現時点ではまだ設備が整っていないことやユーザビリティの観点から、それほど進んでいなかった。

欧州などで導入が進む仕様をベースに、日本市場に合わせて中味品質保持は前提に、開けやすさや飲みやすさなどのユーザビリティにも配慮した、進化した形を目指す。ペットボトル1本あたり平均で約2グラムの軽量化を目標としており、国内全体に普及した場合、年間5万トンのペットボトル樹脂と約10万トンの温室効果ガス(GHG)排出量の削減につながると試算する。

このほか、外装段ボールやラベルなど容器包装資材の効率化、サプライヤー企業の余剰太陽光電力を活用する再エネ調達スキームの構築など、環境負荷低減に向けた新たな施策の検討も進める。

会見では各社代表者が今回の取り組みを「非競争領域での協働」と位置づけ、連携の意義を語った。

キリンビバレッジの坂口典優常務執行役員生産本部長は、5社で話し合いを進める中で、会社の方針やアプローチはそれぞれ個性があったとした上で、「一社で対応するには限界がある。業界が一つになって取り組むことでご理解いただける。長い間続けてきたことを変えるのは簡単なことではないが、丁寧な説明を重ねていきたい」と述べた。

コカ・コーラ ボトラーズジャパンのアンドリュー・フェレット執行役員最高SCM責任者兼最高サステナビリティ責任者兼SCM本部長は、「非競争領域で協働し、物流や環境への取り組みを一緒に進めてこられたことをうれしく思う」と述べた。

プレゼンテーションを担当したサントリー食品インターナショナルの風間茂明常務執行役員SBFジャパン生産・SCM本部長は「物流2024年問題、GHG排出量削減、食品ロス削減はいずれも一社では解決が難しい課題だ」とした上で、「さまざまなステークホルダーの皆様と具体的に検討を進めていくことで、持続可能な物流の実現や食品ロスの削減、GHG排出量の削減など社会課題に対応していき、サステナブルな社会の実現を目指していきたい」と総括した。

5社は、競争領域ではない部分で協働することにより、物流・GHG・食品ロスといった構造的課題の解決を図っていく。初年度の成果を土台に、飲料業界としての新たな取り組みがいよいよ本格化する。

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創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
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