【インタビュー】ドミノ・ピザ ジャパン新CEOが描く、次の戦略──顧客体験向上とパーソナライズ提案で競争力強化

ドミノ・ピザ ジャパン代表取締役兼CEOのディーター・ハーベル氏
ドミノ・ピザ ジャパン代表取締役兼CEOのディーター・ハーベル氏

日本のデリバリーピザ市場を牽引してきた「ドミノ・ピザ」は、1985年に国内初の宅配ピザチェーンとして登場。2025年9月に創業40周年を迎え、全国に772店舗(2025年11月12日 時点)を展開し、国内シェアトップを誇る。

コロナ禍で急速に拡大した市場を経て、同社は今、大きな転換点を迎えている。ドミノ・ピザ ジャパンでは10月20日、ディーター・ハーベル氏が代表取締役兼CEOに就任した。ハーベル氏はリーボックジャパン、ラコステジャパン、日本トイザらス、フルラジャパンで社長を務め、ECを含むマルチチャネルでの小売ビジネスに深い知見を持つ。

ディーター・ハーベル代表取締役兼CEOに、今後の戦略を聞いた。

「ドミノ・ピザ」ロゴ
「ドミノ・ピザ」ロゴ

■まず改善すべきは「アプリとWeb」。
すべては“もっと良い顧客体験”のために

――さまざまなグローバルブランドでの主要ポストを、25年以上にわたり歴任されてきました。ドミノ・ピザではどのような施策を展開しますか?

どの会社でも一番大切なのは、お客様により良い体験を提供することです。私自身も以前からのユーザーとして、ドミノの強みはよく分かっています。デリバリーは安全で速く、品質も高い。喫食体験は一定の高いレベルにあると考えています。

一方で、アプリやWebの使いやすさは、まだ改善の余地があります。日本の消費者はどの分野でも品質への期待が高い。だからこそ、注文体験の部分を強化していく必要があります。

■出店は「量より質」
コロナ禍の急拡大から、今は基盤固め

――店舗数は一時1000店を超えましたが、今後の出店戦略は?

長期的には出店を再び拡大しますが、今は既存店のレベルアップに集中する段階です。利益率、オペレーション、クルーとストアマネージャーのトレーニングなど、土台づくりがとても重要です。

コロナ期は出店のスピードが少し早すぎたかもしれません。顧客満足度を守りながら拡大するには、出店力だけでなく、教育や組織体制の整備が不可欠です。

日本のピザ需要は今後も確実に伸びるので、その成長に備える準備を進めています。

■ピザは“パーティー料理”から“日常食”へ。
変わるニーズに商品と体験で応える

――個食ニーズの高まりで「ピザBENTO」などが好調です。食シーンの変化をどう見ていますか?

ピザを食べるシーンは確実に多様化しています。おひとり様、家族、オフィス、スポーツチームなど、それぞれのニーズにどう100%に近い満足を提供できるかが大事です。

そのための商品イノベーションも重要です。たとえば「クリスピッツァバーガー」や「ピザBENTO」など、ニーズに合わせた商品を開発しています。同時にデリバリーやアプリ体験も含めて、全体の顧客体験をどう整えるかを常に考えています。

ドミノ・ピザ「ピザBENTO アメリカン」「クリスピッツァバーガー ガーリックベーコンチーズ(サイド付き)」
ドミノ・ピザ「ピザBENTO アメリカン」「クリスピッツァバーガー ガーリックベーコンチーズ(サイド付き)」

■市場拡大に向け「提案力」を強化

――競争が激化するデリバリー市場で、どういった課題を感じていますか?

宅配ピザのマーケットリーダーとして、市場の拡大に責任があります。消費者とのコミュニケーションを強化し、ピザの魅力をもっと伝えていく必要があります。

これからのマーケティングのポイントとなるのはパーソナライズです。誰に、何を、どう提案・提供するかを、今までよりも深く考える必要があります。

例えば、私は個人的にとてもシンプルなタイプで、頼むのはいつも「ドミノ・デラックス」と「アメリカン」です。私のように“毎回同じピザを頼む人”には、アプリを開いた瞬間に“いつもの注文”を数秒で確定できるような体験が必要だと思っています。そうしたユーザーの行動に合わせて、注文のプロセスそのものがよりスムーズになる状況を作りたいです。

ドミノ・ピザ「ドミノ・デラックス」「アメリカン」
ドミノ・ピザ「ドミノ・デラックス」「アメリカン」

一方で、新規のお客様にはまだ知られていない、素晴らしいメニューがたくさんあります。今回、期間限定で発売した「炭火焼ビーフと海老の贅沢ハーフ&ハーフ」など、素材が光るメニューも多い。そうした豊富な選択肢があるので、画一的なオファーではなく、個々のお客様に合った提案をしていきたいですね。

■顧客にも社員にも“最も良い経験”を

――社員へのメッセージは?

一言で言えば“人に集中する”ことです。

ここでいう人は二つの意味があります。ひとつはお客様。どの競合よりも最高の体験を提供するために何をすべきかを常に考えること。

もうひとつは社内のチームメンバー。オフィスでも店舗でも、ドミノで働く経験が楽しく、将来のキャリアにつながる知識や経験を提供したい。その両方を大切にしています。

■ドミノの魅力は「信頼性」「品質」「イノベーション」

――最後に、ドミノ・ピザの魅力は?

ドミノ・ピザには数多くの魅力がありますが、まずは信頼性です。デリバリーの速さと、店舗から直接届ける仕組みによって、常にアツアツのピザを受け取れること。これは他のデリバリーサービスと比べても大きな強みです。

次に品質。生地は店舗で粉と水から手作り※し、全ての原材料にこだわり、安定した高いクオリティのピザを提供しています。私自身、もともとユーザーとして品質の高さを感じていましたが、内部に入ってそのこだわりの深さに改めて驚きました。

※店舗の性質上、導入困難な1店舗を除く。

そしてイノベーション。常に日本の消費者に『面白い』『食べてみたい』と思わせる商品を生み出し続けています。新商品の「炭火焼ビーフと海老の贅沢ハーフ&ハーフ」のように、注文体験そのものを変える提案など、新しい価値を提供し続けます。

ドミノ・ピザ「炭火焼ビーフと海老の贅沢ハーフ&ハーフ」など
ドミノ・ピザ「炭火焼ビーフと海老の贅沢ハーフ&ハーフ」など

●プロフィール

株式会社ドミノ・ピザ ジャパン 代表取締役兼CEO
ディーター・ハーベル(Dieter Haberl)氏

出身地:オーストリア
生年月日:1962年5月6日

ドミノ・ピザ ジャパン代表取締役兼CEOのディーター・ハーベル氏
ドミノ・ピザ ジャパン代表取締役兼CEOのディーター・ハーベル氏

〈略歴〉
米レイクスーペリア州立大学を卒業後、サンダーバードグローバル経営大学院を修了。米コカ・コーラに入社しドイツと日本で勤務後、ギャップジャパン、アディダスジャパンにて日本市場を経験。リーボックジャパン社長、ラコステジャパン社長を経て、日本トイザらス社長およびフルラ ジャパンの社長を務めた。

媒体情報

食品産業新聞

時代をリードする食品の総合紙

食品産業新聞

食品・食料に関する事件、事故が発生するたびに、消費者の食品及び食品業界に対する安心・安全への関心が高っています。また、日本の人口減少が現実のものとなる一方、食品企業や食料制度のグローバル化は急ピッチで進んでいます。さらに環境問題は食料の生産、流通、加工、消費に密接に関連していくことでしょう。食品産業新聞ではこうした日々変化する食品業界の動きや、業界が直面する問題をタイムリーに取り上げ、詳細に報道するとともに、解説、提言を行っております。

創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
主な読者:
食品メーカー、食品卸、食品量販店(スーパー、コンビニエンスストアなど)、商社、外食、行政機関など
発送:
東京、大阪の主要部は直配(当日朝配達)、その他地域は第3種郵便による配送
購読料:
3ヵ月=税込15,811円、6ヵ月=税込30,305円、1年=税込57,974円