マクドナルド、店舗体験を刷新 “デジタル×人”で売上伸ばす
日本マクドナルドが、店舗改革を加速させている。2026年3月末時点で3,031店舗を展開する同社は、中期経営計画(2025~2027年度)で1000店舗超の改装と100店舗以上の純増を掲げる。鍵を握るのは「デジタル化」と「店舗の再設計」だ。来店から退店までの体験を見直すことで、店舗体験の向上と収益性の強化の両立を狙う。こうした取り組みにより、1店舗あたりの売上高は年々上昇しているという。
同社が重視するのは、価格以上の価値=“バリュー”の提供である。その中核に位置づけるのが、来店から退店までの「快適な店舗体験」だ。モバイルオーダーやテーブルサービスの普及により、注文から商品受け取りまでの流れは大きく変化しており、店舗の役割そのものが再定義されつつある。
4月17日には、最新店舗の一つである「武蔵境通り井口店」で報道関係者向けの体験会とストアツアーを開催。デジタルと人の融合によって進化する店舗の具体像が示された。
■デジタル化で変わる注文体験
店舗進化の最大の軸はデジタル化だ。
モバイルオーダーはほぼ全店に導入されており、来店客は席に座ったままスマートフォンで注文から決済まで完結できる。さらに、約2680店舗で導入されているテーブルサービスと組み合わせることで、注文後はクルーが席まで商品を運ぶ。
入店後に席を確保し、その場で注文・決済。レジに並ぶ必要がなく、後ろの客を気にして急ぐこともない。商品を取りに行く手間も省けるなど、従来のファストフードの体験を大きく変えている。
タッチパネル式注文端末(約1800店舗)も複数台設置。番号札を使うことで、テーブルサービスとも併用可能。現金を利用する人は、タッチパネルで注文し、支払いのみ有人レジで行うなど柔軟に対応可能だ。

これに伴いカウンター周りも大きく変わった。有人レジは1~2台など最小限に抑え、モバイルオーダー専用の受け取りラックを設置。通路を広く確保することで混雑を緩和し、来店客同士の動線が交錯しにくい設計としている。

さらに同店では、デリバリー専用ルームも設置。デリバリーの配達員は、通常の入り口の隣にある専用の入り口から入るため、利用客との導線を完全に分離した形だ。

■厨房も進化、生産性を底上げ
最新店舗の厨房では広いスペースを確保し、大型機器の導入が可能に。通路幅や作業台を拡張することで、複数の従業員が同時に効率よく作業できる動線設計を採用している。
また、ドライブスルー向けには、注文が入るとドリンクを自動で注ぐ機器も導入。従来はクルーが注文を聞きながら対応していた作業を自動化することで、他業務への集中を可能にしている。

メニューの多様化と注文増加に対応するため、店舗の“生産力”そのものを底上げしている形だ。
■「人」で補完 おもてなしリーダーの存在
デジタル化が進む一方で、人的サービスの強化も進める。
各店舗には接客に特化した「おもてなしリーダー」(約2950店舗)を配置。タッチパネル操作に戸惑う来店客のサポートなど、入店から退店までの体験を支える役割を担う。
デジタルによって効率化された分、クルーは接客や商品提供に集中できる体制となっている。
■店舗デザインも戦略的に最適化
内装は立地や利用シーンに応じて、5パターンを展開。
例えば、回転率が高い店舗では、明るく開放的な「Luna」デザインを採用し、滞在時間が長い店舗では、木目調を基調とした落ち着きのある「Archery」デザインを導入している。
■大型化と選別で進む店舗戦略
2011年頃から進めているのが、店舗の大型化である。
従来は小型店舗も多かったが、客席数や厨房設備の制約により、提供できるメニューや生産能力に限界があった。最新モデルでは広い厨房と客席を確保し、フルメニューの提供と高い処理能力を両立している。
広い敷地を活用したドライブスルーや駐車場を備える独立型の「フリースタンディング店舗」をスタンダードとし、来店客数の拡大と回転率の向上を図る。

一方、都心部では小型店舗の展開も継続する。ただしフルメニューへの対応を前提とし、従来のように提供商品が限定される小型店については見直しを進めている。
■1000店改装へ リモデル戦略の中身
既存店の刷新も重要施策だ。
リモデルは同一店舗内の改装を指し、場合によっては増築も行う。建て替えは「リビルド」、移転は「リロケーション」と区別し、立地や収益性に応じて使い分ける。
改装は単なる刷新ではなく、売上や来客数の増加を前提とした投資であり、店舗ごとに最適な形へ再設計することで収益性の底上げにつなげている。
■「体験」で勝つ 次の成長モデルへ
タッチパネル注文は導入当初こそ戸惑いも見られたが、サポート体制の強化により利用は定着。注文口の増設によって心理的な待ち時間も軽減され、より快適な環境が整ってきた。
マクドナルドは今後、デジタル化と人の融合を軸に、顧客体験の向上と生産性の強化を推進する。
単に商品を提供する場から、快適な時間を過ごせる空間へ――。多様化する利用シーンに対応しながら、最新店舗モデルの構築を継続する考えだ。








