ネスレ×スターバックス、“会話をデザインするマシン”で空間の質を変える

「We Proudly Serve Starbucks コーヒープログラム」の新マシン発表
リモートワークの定着により、オフィスにおける何気ない会話や偶発的な出会いが大きく減った。コロナ禍を経て、企業が直面しているのは「どうすれば人が集まり、会話が生まれる空間をつくれるか」という課題だ。
2025年5月に、ネスレ日本が開催したメディア説明会では、その課題に応える「We Proudly Serve Starbucks コーヒープログラム」における新マシンが発表された。スターバックスの本格的な味をオフィスや病院、大学で楽しめる本プログラムは、コーヒーを通じて“人が自然に集い、会話が始まる場”を生み出すものだ。
今回は、新たに2機種のマシンを投入。1つ目はFRANKE社製の「NCB600」。10インチの大型タッチモニターを備え、24種類ものカフェメニューに対応。豆やミルク、フレーバーも自動制御され、スターバックスのコーヒー体験を提供する。

2つ目の富士電機製「FCMD300ML」は、日本のメーカーとして初めてスターバックスの認証を受けたドリップ式自販機。紙フィルター不要の金属メッシュフィルターで、澄んだ味わいと豊かなコクを両立。自動洗浄やロック機能を備え、衛生性と利便性にも優れている。
これらのマシンが果たすのは、ただの“コーヒー提供”ではない。ネスレ日本 飲料事業本部の橋本研吾氏は「私たちが提供しているのは“会話の起点”です」と語り、実際の導入先では、「会話人数が7倍、ポジティブな対話も大きく増加している」とし、空間の使われ方に明確な変化が表れているとしている。
この考え方は、イトーキ、コクヨ、丹青社といったオフィス空間設計の専門家たちも共通している。

発表会で登壇したイトーキの岡純平氏は、「報告・連絡・相談だけでなく、共感や協働、創造のための“会話のシーン”をどう設計するかが、今のオフィスデザインの中心になっている」と語った。朝日新聞社のオフィス再編では、部署を越えて人が流れ込む中央ゾーンを設計し、視線の抜けや段差、植栽などで“居心地のよい雑談空間”を創出したという。

コクヨの青木耕治氏は、「今の時代は、上司がすべての答えを持っているわけではない。スクラム型で共に考える働き方が必要です。そのためには、偶然の接触機会をどう設計するかが鍵」と指摘。実際に自社オフィスでは、導線を1本化したり、見える“穴”を設けるなど、接触を促す仕掛けを取り入れている。

丹青社の安元直紀氏は、「空間は、企業のアイデンティティや文化を共有し、継承するための媒体でもある」と述べ、世代や部門を超えた会話の価値を強調した。京セラのオープンイノベーション施設では、港をモチーフにした空間演出によって、社内外の人材が気軽に交差できる環境をデザインしているという。
オフィス空間の専門家である3社の共通点は、「会話は設計できる」という信念だ。偶発的な出会いを促す導線、居心地の良い小空間、角のあるテーブル配置、サウンドマスキングによる音環境の制御。細部に至るまで、すべては「自然に声がかかる距離感」を生み出すための工夫である。
そうした空間において、スターバックスのマシンは、人が集まりやすい“香り”と“待ち時間”という、強力なトリガーを提供する。
ネスレの橋本氏は、「コーヒーを淹れる1分間が、アイスブレイクの貴重な時間になる。会議前の一杯が、チームの空気を変えることもある」と話す。

リモートでは代替できない“リアルなつながり”を、オフィスに取り戻すために。スターバックスの一杯は今、単なる飲み物ではなく、オフィスに“会話”や“集い”をもたらす企業文化の一端を担っている。