「水で溶けるコーヒー」「スリム容器の天然水」、便利さで売れた2025年夏のヒット飲料

「ネスカフェ アイスブレンド」と「サントリー天然水」1L ペットボトル
「ネスカフェ アイスブレンド」と「サントリー天然水」1L ペットボトル

売れた理由は“便利さ”だった。味は変えずに、水でサッと溶けるようになったコーヒーや、スリム形状に変わった天然水が、猛暑のヒット商品となった。

ネスレ日本は2025年3月、冷たい水やミルクにもサッと溶けるソリュブル(インスタント)コーヒー「ネスカフェ アイスブレンド」(80g瓶、スティックブラック20本、他)を発売した。世界に先駆けて導入した「クリスタルフローズン製法」により、従来はお湯で溶かして氷を入れる必要があったアイスコーヒーを、水だけで手軽に作れるようにしたことが特徴だ。

水で溶ける「ネスカフェ アイスブレンド」のラインアップ
水で溶ける「ネスカフェ アイスブレンド」のラインアップ

「クリスタルフローズン製法」は、淹れたてのコーヒー液を凍結し、風味を閉じ込めながら粉末の内部に微細な隙間を形成することで、従来にない溶けやすさを実現した技術。ネスレによれば、フリーズドライ製法(※)の製品では「ネスカフェ史上、最も溶けやすいコーヒー」という。

※食品を凍らせ、専用の機械で真空に近い状態にして乾燥させること

日本のコーヒー飲用の約4割はアイスであり(消費者行動研究所「飲み物調査」2024年)特に20代男性の65%、20代女性の44%がアイスを選ぶとされている。「ネスカフェ」の新製品は、拡大するアイス需要に応える提案だ。ユーザーからは、“溶けやすく、香りのよいアイスコーヒーが手軽に楽しめるのが良い”という声が多いという。

ネスレ日本のレギュラーソリュブルコーヒー&液体飲料ビジネス部の吉永祐太部長は、「既存製品との食い合いはほとんどなく、20~30代の新規ユーザーを獲得できた」と話す。

「サントリー天然水」1Lペットボトルは、スリムなためカバンのサイドポケットに入れる人が増加
「サントリー天然水」1Lペットボトルは、スリムなためカバンのサイドポケットに入れる人が増加

一方、サントリー食品インターナショナルが2024年5月にリニューアルした「サントリー天然水」1Lペットボトルも売れ行きを伸ばしている。従来の“ぽっちゃり形状”から“スリム形状”へ切り替えたことで、バッグやリュックのサイドポケットに収まりやすくなり、家庭用だけでなく“パーソナル大容量”としても受け入れられた。

新形状の1Lペットボトル製品は、発売から1年で販売数量が前年比165%に拡大。今年7月の「サントリー天然水」全体の販売実績は前年を上回ったが、その背景には1Lサイズの販売好調があったという。

「500mlでは足りないが、2Lでは多すぎて持ち運びにくい。1Lがちょうどいい」との声も多く、オフィスでの常備水や部活動、ジムやサウナなど幅広いシーンで利用されている。持ちやすさに配慮した「指スポット」など細部への工夫も評価され、日常に寄り添うサイズとして定着しつつある。

アサヒ飲料のラベルレス製品
アサヒ飲料のラベルレス製品

利便性によって売れた商品としては、アサヒ飲料のラベルレス飲料も好調だ。今年1~7月の累計販売数量は前年比110%の593万箱だった。2018年に同社が業界に先駆けて投入したが、いまでは「ゴミの分別が楽」「環境にやさしい」といった点が支持され、広がりを見せている。

「水に溶けるようになった」「容器がスリムになった」「ラベルがなくなった」。味は従来と大きく変わらない、もしくは全く変わらないのに、消費者の利便性に応える技術革新や工夫がヒットを生み出した。猛暑が続いた2025年の夏、生活に寄り添う“小さな変化”を遂げた商品が、飲料市場を動かしている。

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創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
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