日本茶に異変、番茶価格6倍、抹茶ブームと茶園減少で茶系飲料値上げ

日本茶市場の需給バランスが崩れている(画像はイメージ)
日本茶市場の需給バランスが崩れている(画像はイメージ)

日本茶の原料価格が異例の高騰を見せている。本来は最も安い秋冬番茶の価格が前年比約6倍に達するなど、市場で需給のゆがみが広がっている。こうした状況を背景に、伊藤園とコカ・コーラボトラーズジャパンは、3月1日から茶系飲料の価格を引き上げた。

茶価の上昇は顕著だ。国内の茶市場でこれほどの急騰は近年例がない。鹿児島県茶業会議所によると、2025年の平均茶価は1kg当たり1648円と前年の約2倍に上昇した。静岡茶市場でも平均茶価は1kg当たり1919円と約2.2倍となった。特に異例なのは秋冬番茶の高騰で、鹿児島では同2431円と前年比約5.8倍、静岡でも2097円と約6.4倍に達した。

本来、日本茶の価格は一番茶が最も高く、二番茶、三番茶、秋冬番茶の順に下がるのが一般的だ。しかし現在は最も安いはずの秋冬番茶が一番茶を上回る逆転現象が起きており、日本茶市場の需給バランスが崩れている。

資料:全国茶生産団体連合会調べ
資料:全国茶生産団体連合会調べ

二番茶以降の茶葉は緑茶飲料などの原料として広く使われており、飲料メーカーのコストにも直接影響する。今回の茶価高騰は、緑茶飲料の価格見直しにも波及している。

背景にあるのは世界的な抹茶需要の拡大だ。日本茶メーカーによれば、2023年ごろからコロナ禍後のインバウンド回復や健康志向の高まりを背景に海外需要が増加し、2024年夏から秋にかけて、抹茶製品の販売休止や購入制限が相次ぎ、抹茶不足が顕在化し始めたという。そして、2025年には、生産・供給不足により、抹茶の原料となる碾(てん)茶の価格が急騰し、「抹茶バブル」「抹茶クライシス」と呼ばれる状況も生まれているという。

資料:全国茶生産団体連合会調べ
資料:全国茶生産団体連合会調べ

需要拡大の背景にはSNSの影響も大きい。抹茶は以前、カフェメニューでは数あるフレーバーの一つだったが、近年は海外のインフルエンサーを中心に発信が広がり、抹茶ラテなどのメニューが世界的に広がった。健康意識の高まりから、抹茶をパウダーにしてさまざまな飲料や食品にふりかけて楽しむユーザーも増えている。

さらにコーヒー豆価格の高騰を背景に、カフェ業界が新たなメニューとして抹茶を採用する動きが広がったことも需要拡大に拍車をかけたとみられる。

こうした抹茶人気は、日本茶の原料市場全体にも影響を及ぼしている。抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)の需要が急増し、茶葉の需給バランスが変化しているためだ。

生産現場で碾茶向けの供給が優先されると、従来は煎茶などに回っていた茶葉にも影響が及び、緑茶飲料向け原料の調達環境も厳しくなる。抹茶が世界的に人気を集める中、日本茶は国際的な需要動向の影響も受けやすくなっている。

供給側の構造変化も続いている。農林水産省の資料「茶をめぐる情勢」(2026年1月発表)によると、日本の茶園面積は長期的に減少傾向にある。一方で生産量はおおむね7万トン前後で推移している。近年はリーフ茶向けの一番茶の生産量が減少する一方、ドリンクなどの原料となる四番茶や秋冬番茶の生産は緑茶飲料のPB製品をふくむ新規参入の動きを背景に増加傾向にある。

資料:農林水産省「作物統計」
資料:農林水産省「作物統計」

また、抹茶の原料となる碾茶の生産も近年増加しており、需要拡大の影響が生産構造にも及んでいる。日本茶の生産構造は、リーフ茶中心から飲料原料や抹茶向け原料の比重が高まる方向に変化している。

農林水産省が2月20日に公表した2025年の茶の収穫量統計では、茶園面積は減少傾向が続く一方、収量は前年を上回った。二番茶以降、特に秋冬番茶の摘採増が収量を押し上げたとみられる。生産農家の減少が続く中、生産技術の向上によって収量は維持されているとみられるが、番茶中心の増加という点では、日本茶の構造変化が進んでいる。

こうした状況の中、2025年12月1日に「綾鷹」を展開するコカ・コーラボトラーズジャパンは、緑茶飲料の価格改定を発表した。緑茶製品に使用する茶葉の価格が高騰し、飲料業界全体としてさらなるコストの上昇が見込まれると要因を述べた。緑茶飲料市場をけん引する伊藤園も同年12月4日に価格改定を発表した。他の大手メーカーは、価格改定を発表していないが、原料価格の上昇は業界共通の課題となっている。

伊藤園は、単に価格改定を進めるだけでなく、日本茶の価値を改めて伝えていく必要があるとしている。世界的な需要拡大の一方で国内の生産基盤は縮小が続く。持続的に日本茶を楽しむためには、日本で生産された茶葉の価値を守り、産地とともに日本茶文化を支えていくことがこれまで以上に重要になっている。

世界的な抹茶人気の拡大は、日本茶にとって新たな需要拡大の機会になっている。一方で、国内の生産基盤をどう維持していくかという課題も浮き彫りになった。今回の茶系飲料値上げは、日本茶産業が直面する構造変化を映し出す動きともいえそうだ。

媒体情報

食品産業新聞

時代をリードする食品の総合紙

食品産業新聞

食品・食料に関する事件、事故が発生するたびに、消費者の食品及び食品業界に対する安心・安全への関心が高っています。また、日本の人口減少が現実のものとなる一方、食品企業や食料制度のグローバル化は急ピッチで進んでいます。さらに環境問題は食料の生産、流通、加工、消費に密接に関連していくことでしょう。食品産業新聞ではこうした日々変化する食品業界の動きや、業界が直面する問題をタイムリーに取り上げ、詳細に報道するとともに、解説、提言を行っております。

創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
主な読者:
食品メーカー、食品卸、食品量販店(スーパー、コンビニエンスストアなど)、商社、外食、行政機関など
発送:
東京、大阪の主要部は直配(当日朝配達)、その他地域は第3種郵便による配送
購読料:
3ヵ月=税込15,811円、6ヵ月=税込30,305円、1年=税込57,974円