伊藤園、日本茶の需給変化に危機感 「お~いお茶」に純国産茶葉100%表記、生産者支援を強化へ

伊藤園が日本茶の持続的な発展に向けた取り組みを発表(画像はイメージ)
伊藤園が日本茶の持続的な発展に向けた取り組みを発表(画像はイメージ)

伊藤園は5月12日、東京都内で日本茶の持続的な発展をテーマにした発表会「日本茶の発展的未来に向けて~生産者とともに。日本茶を世界へ~」を開催した。世界的な抹茶需要の拡大で日本茶の輸出が伸びる一方、国内では茶農家の減少や生産量の縮小、緑茶輸入の増加が進んでいる。同社は日本茶の需給構造が転換期を迎えているとの危機感を示し、「お~いお茶」ブランドで「純国産茶葉100%」の表記を5月18日から順次開始すると発表した。

「純国産茶葉100%」表記を順次開始する「お~いお茶」ブランド
「純国産茶葉100%」表記を順次開始する「お~いお茶」ブランド

発表会で、伊藤園執行役員マーケティング本部長の志田光正氏は、海外のコーヒーチェーンなどで抹茶メニューが広がり、日本国内にはなかった新たな需要が生まれていると説明した。その一方で、志田氏は日本茶の輸出量が過去20年で約11倍に拡大し、抹茶原料となる碾茶の生産量も増える中、日本茶全体の生産量は過去20年で約3割減少し、茶農家戸数も大幅に減っていると指摘。需要拡大と生産基盤の縮小が同時に進む現状を問題提起した。

その問題は、茶価にも表れている。鹿児島の茶市場では、今年の新茶価格が前年の約1.7倍、2年前比では約2.5倍に上昇した。同社の「緑茶白書2026」でも、2025年に茶飲料にも使われる秋冬番茶の平均価格が一番茶を上回る異例の事態が示されている。背景には、抹茶需要の拡大を受け、生産者の間で煎茶から碾茶への転換が進んでいることがある。

志田執行役員
志田執行役員

ただ、抹茶需要の拡大は追い風だけではない。志田氏は「このブームが本当に続くのかという不安を、生産者の皆さんも抱えている」と述べた。碾茶の生産には設備投資が必要で、投資回収には5年、7年といった時間もかかる。急激な需要変化に対応するには、生産者が安心して挑戦できる体制づくりが欠かせない。

海外産茶葉の輸入増も、危機感の一つだ。2025年の緑茶輸入量は4610トン、輸入金額は50億円となり、数量・金額ともに前年比約1.5倍に拡大した。志田氏は、海外産茶葉そのものを否定する考えはないとしたうえで、国産茶葉と海外産茶葉の違いを生活者に分かりやすく伝える環境づくりが重要だと指摘した。

日本茶の生産基盤の変化を示した資料(農林水産省「作物統計」)
日本茶の生産基盤の変化を示した資料(農林水産省「作物統計」)

抹茶需要に対応して碾茶生産が増える一方で、日常的に飲まれてきた煎茶の生産基盤が弱まることにも懸念を示した。世界的な抹茶ブームが落ち着いた時、国内で煎茶を再びつくろうとしても、海外産茶葉が市場に広がり、生産者が戻る余地を失う可能性があるという。志田氏は「今まさに産業として継承できるかどうかのタイミングに来ている」と述べ、日本茶産業の持続性に強い危機感を示した。

こうした状況を受け、伊藤園は「純国産茶葉100%」「茶産地育成事業の進化」「グローバル展開の推進」を柱に据える。生産者が碾茶・煎茶の需要変化に対応できる体制を整え、日本茶の価値向上につなげる考えだ。茶産地育成事業では、碾茶と煎茶の双方を状況に応じて生産できる「ハイブリッド生産方式」を推進する。1976年に始まった同事業は今年で50年を迎えた。今後も、生産者が急激な需給変化に対応できるよう支援する。

また、日本茶の価値向上に向け、伊藤園はナショナルGI「日本茶」構想にも賛同している。国産茶葉を使った日本茶の価値を国内外に分かりやすく伝える取り組みとして位置づける。

ナショナルGI「日本茶」構想で示されたGIマーク
ナショナルGI「日本茶」構想で示されたGIマーク

トークセッションには、契約茶農家の堀口園代表取締役・堀口将吾氏、鹿児島堀口製茶代表取締役・堀口大輔氏と、CMに出演する有村架純さんが登壇した。堀口氏らは伊藤園の茶産地育成事業に参画し、需要変化に対応しながら品質と供給量を安定させる取り組みを続けている。茶産地育成事業は、全量買い取りを前提とした契約栽培などを通じ、茶農家の経営安定や設備投資、後継者育成にもつながる仕組みだ。

発表会の登壇者(左から)志田執行役員、なかやまきんに君、有村架純さん、堀口将吾さん、堀口大輔さん
(左から)志田執行役員、なかやまきんに君、有村架純さん、堀口将吾さん、堀口大輔さん

堀口将吾氏は、生活者のニーズに合った品質や量を安定的に供給していく責任を語った。堀口大輔氏は、抹茶需要の拡大で日本茶への関心が高まる一方、生産現場では需給変化への対応が求められている現状について、「ピンチでもあるが、大きなチャンスでもある」と述べた。仲間を増やしながら取り組みを広げていく考えも示した。有村さんは、生産者の取り組みに触れ、「日本茶を守ろうとしてくださる熱量が、日本人にとっての安心感になっている」と話した。

伊藤園は、国産茶葉の価値を明確に伝えながら、生産者とともに日本茶の持続的な成長を支える考えだ。

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食品産業新聞

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昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
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