動き出す介護食 導入への店舗、ファミマも開始

◎2018年介護保険法改正で飛躍的拡大か

高齢者向け食品、いわゆる介護食の売場が拡大している。高齢者人口の増大に伴い、在宅介護のニーズが高まる中、ここ数年で取り扱う店舗は大幅に増えた。ドラッグストア(Dgs)や総合スーパー(GMs)の介護売場に加え、コンビニエンスストア(CVs)も参入。ローソンに続き昨年末には、ファミリーマートも一部店舗での取り扱いを開始した。参入の背景のひとつにあるのが、在宅介護への移行を促す2018年介護保険法の改正で、改正を機に、介護食の需要は飛躍的に高まると見られる。

団塊の世代が75歳以上となる2025年には国民の5人に1人が75歳以上の高齢者となり、在宅療養患者の数が増加することが予想されている。ファミリーマートは昨年末、今後身近なCVsが在宅療養の受け皿となる必要性も高まると考え、介護食を含む「メディカルフーズ(療養食)」の取り扱いを、病院近隣店舗などを中心に拡大すると発表した。取り扱うのは、キユーピー「やさしい献立」などやわらか食のほか、明治の経口濃厚流動食「メイバランスMini」などの栄養強化食品で、塩分量やたんぱく量など、食事に配慮が必要な人の向けの食品も陳列した。専用の売場を設置し、農水省が普及・推進に取り組む新しい介護食品「スマイルケア食」のマーク利用の許諾を獲得し表示。在宅療養者・地域住民に分かりやすい売場づくりを目指している。「CVsで手軽に買えて助かるといった声もあり、売上も好調に推移している」(同社)とし、8月末現在で全国に50店舗を出店、17年度末までに200店舗の導入を目指す。

一方、介護相談窓口やサロンスペースを設置し社会変化に対応した次世代コンビニモデル「ケア(介護)拠点併設型店舗」の出店を進めているのはローソンだ。同業態では介護食も含めた介護関連商品の品揃えを充実させており昨年4月に1号店をオープン後、7月末現在まで6店舗(埼玉2、新潟1、大阪1、福岡1、山口1)を展開。17年までに30店舗を出店予定で、提携する介護事業者を募集し、全国へと拡大していく。

最も身近な売場としてCVsまでもが介護食の取り扱いを開始した背景には、18年に介護保険法の改正を控えている点も理由のひとつとして挙げられる。3年ごとの改正を進めている介護保険法は18年の改正で、「地域包括ケアシステム」(医師の往診や訪問看護、介護を受けながら、住み慣れた地域で最期まで暮らせるようにする態勢。厚労省では、団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに実現を目ざしている)の運用を本格化させる。「国としては、最期まで在宅で過ごして貰おうという方針で、在宅で介護食が使われる場が確実に増える予想だ」(介護食メーカー)。介護食について保険適用が実現されれば、飛躍的な拡大につながる。なお今年度の診療報酬の改定では、がんの他、摂食・嚥下機能低下、低栄養状態の患者が、栄養食事指導の対象として拡充されており、低栄養予防に推進されている経口濃厚流動食の販売実績は4月以降、大きく伸長している。介護保険法の改正が、介護食市場に大きな変革をもたらすのか注目だ。