2025年の食品安全問題にみる中国市場のトレンド 食品を巡る日中関係の潮流/森路未央(寄稿)

北京「西貝」2024年10月31日(筆者撮影)
北京「西貝」2024年10月31日(筆者撮影)

〈「透明性」を巡る課題〉

第9位は、消費者が「透明性」を強く訴求するというトピックであった。日本でも報道された中国外食チェーン「西貝」の事例から、規則・基準と消費者をつなぐ透明性のある情報公開について考えたい。

「西貝」は内陸部の内モンゴルや西安で常食される小麦麵食、羊肉、トマトなどを主な素材に、店舗内で注文後に「手作り」され、「出来たて」で提供される料理として消費者に評価されている。その強みを背景に、1人当たり単価が70〜80元の比較的高価格帯でありながらも中国国内で約350店舗を展開する大規模飲食チェーンである。

2025年9月、インフルエンサーの羅永浩氏が「西貝」で食事の後「ほとんどが温めるだけの調理済食品(預制菜)を提供しているわりに価格が高すぎる」とする投稿をきっかけに、創業社長の贾国龍氏が「調理済食品は一切使用していない」「当社の主張が伝わっていない」と反論した。

贾社長は消費者に理解を求める誠実さが欠けたと批判を受けた後に、「創業者である社長が反省して学習し改める」とSNS投稿し、羅氏もこれ以上は反応しないと投稿し、論争は落ち着いた。しかし、この結果、「西貝」は102店舗を閉店し、従業員約4000人の転属や解雇を伴う経営調整を余儀なくされ、25年9月〜26年3月までの累計赤字は6億元超と予測されている。

〈店舗側と消費者との間の「情報の非対称性」の改善〉

消費者は「店舗での手作りや出来立てに対する期待」を抱いて来店するも「セントラルキッチンで加工、店舗で加熱提供」という現実を知ったことで、法規的には問題ないが、消費者がイメージを裏切られたことや、その後の反論対応により、経営悪化に至っている。

国家市場監督管理総局によると、セントラルキッチンで洗浄やカットなど一次加工および調理された食材は調理済食品ではないので、規則上の問題はない(2026年1月26日付「人民日報」)。しかし、消費者は生鮮野菜を店舗で切ったばかりの状態で調理を始めて提供されていると思っている。この情報の非対称性に対して、店舗側と消費者との間で情報をどのように公開していくかが求められているようだ。

これについて、投稿があった数日後の9月21日、国務院食品安全委員会弁公室等政府関連部門は、調理済食品の国家基準の迅速な推進、飲食段階で使用する調理済食品の情報開示の普及による、消費者が知る権利と選択する権利の確保を真摯に研究すると表明した。

直近では2026年1月22日、「調理済食品に関する国家食品安全基準」(食品安全国家標準:預制菜)「「調理済食品の用語と分類」(預制菜術語和分類)および「飲食段階の料理の加工・製造方式の自主的な明示を促進することに関する公告」を起草し、近日中にパブリックコメントを行うと発表した。

筆者が「全国標準信息公共服務平台」などで同基準を検索したところ、全文はまだ公開されていない。中国政府は情報公開の透明性の確保をどのように規定化するのだろうか、今後の公開が待たれるところである。

〈森 路未央(もり・ろみお)〉 大東文化大学外国語学部准教授

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