災害時の食支援を進化させる新たな動き、ドローンで物資輸送、キッチンカーとの連携も

ドローンを使った物資輸送の研究も開始
ドローンを使った物資輸送の研究も開始

被災地に温かい食を迅速に提供するため、自治体が企業・地方公共団体などと災害時の炊き出し支援に関する協定を結ぶことが全国的に増えている。

2024年4月以降、宮城県、鹿児島市、長崎県、山口市、奈良県、石川県などが相次いで締結。内閣府が同年11月に改定した避難所運営に関する指針では、市町村が最優先で取り組む対策の1つに「協定の締結」があがり、政府は新しい地方創生交付金の対象にキッチンカーの導入なども盛り込んでいる。

また2025年6月には、キッチンカーやトイレカーといった車両をデータベースに登録する制度が始まるなど、災害支援の環境整備が進みつつある。そのような中、名古屋学芸大学と、病院や福祉施設などの食事提供を行う富士産業は6月3日、災害時食支援のための連携協定を結んだ。災害時の食支援の研究を協力して行い、キッチンカーやドローンの活用に関する教育・研究、とそのための人材育成を進めていく。

両者はこれまでもキッチンカーの衛生管理システムの構築に共同で取り組み、その成果として、『キッチンカー衛生管理マニュアル』を作成している。災害時は食中毒が発生しやすい状況となることから、食中毒予防のための衛生管理に注意が必要だが、キッチンカーは作業スペースが限られるため調理・提供には様々な工夫が必要となる。

マニュアルは、衛生管理の国際基準HACCP(ハサップ)の考え方を取り入れ、調理工程ごとに必要な作業や注意点を盛り込み、分かりやすく記載。大学のホームページで公開している。協定を機に、災害時における更なるマニュアルの実用化と普及を目指す。

また、ドローンを使った物資輸送の研究も開始する。

富士産業は、東日本大震災や熊本地震、能登半島地震など数々の被災地にキッチンカーを派遣し、現地での食支援を行ってきた。同社がキッチンカーを開発したきっかけは、2004年に淡路島で得意先の介護施設が被災し、厨房が水没するなど甚大な被害を受けたことだった。

対応の最中、代替施設の必要性を痛感。緊急時に病院厨房の代替えとなり、かつ医療給食に対応できる設備を備えるキッチンカーの開発に踏み切り、衛生的な環境はもちろん様々な献立を作ることができるよう工夫した。

しかし、能登半島地震への対応では多くの課題が見つかったという。被災地の近くまでは行けたが、ラスト1マイルには近づけなかったことが悔やまれ、キッチンカーでは一カ所しか支援できないジレンマもあったという。そこで、ラスト1マイルにも、複数箇所にも物資を届けられる方法を模索した結果、ドローンの活用が決まった。

危機管理課の西村友裕課長は「ドローンを使えば、孤立集落にも物資を届けることができる。キッチンカーがセントラルキッチンとなって、ドローンを飛ばすことで複数箇所に食事が提供できる。このドローンとキッチンカー、2つの機能の応用がこれからの研究テーマだ。連携協定で研究活動を強化し、予測される広域災害の被害をできる限り小さく、かつ短期間で迅速に支援できる準備とそのための啓発を進めていきたい」と語った。

近い将来、ドローンを使った物資輸送が災害支援の標準になるかもしれない。

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