病院給食の経営改善と課題解消に向けて、医療・栄養の関連団体が議論、給食業務の合理化も
全国の病院の6割以上が営業赤字となる中、医療・栄養の関連8団体のトップが集結し、病院給食の持続性確保に向けて話し合う緊急シンポジウムが11月19日、都内で開かれた。参加した団体は、日本栄養士会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本病院会、日本病態栄養学会、日本栄養治療学会、日本臨床栄養学会、日本医師会。主催は、医療・福祉施設のための総合展示会「HOSPEX Japan 2026」を手掛ける日本能率協会。
帝国データバンクによると、民間が経営する病院900法人のうち、2024年度に営業赤字となった病院の割合は61%に上り、過去20年で最悪の水準となった。債務超過の割合は13.6%となり、前年度から大幅に増加。コスト高や人材不足が影響し、特に地方病院での赤字が顕著に。政府も、2026年度に予定される診療報酬改定に向けた議論を活発化している。
病院給食においては、人手不足による人材確保の悪化と、人件費、食材費、水道光熱費、厨房設備機器などのコスト増が、病院経営の収支を圧迫。病院内の厨房で、手作りで調理、提供することが困難になってきている。登壇者はそれぞれの立場で取り組んでいることを発表。課題を共有し、解決策を探った。
8人の講演後、座長を務めた日本栄養士会の中村丁次会長は「緊急シンポジウムということで、開催まで時間がなかったが、画期的な集会になった。皆さんの話を聞くと、大変な危機状況にあるが、やるべき方向性は同じだ」と感想を述べた。そのうえで、「先生方からいろいろな意見があったが、共通点が5つある」と述べ、次のとおり内容を整理した。
1つ目は、治療食の標準化。「病院食の特徴である治療食を簡素化し、標準化した方が良いのではないか」。
2つ目は、給食業務の合理化。「最新の技術を使って、もっと合理化を図るべきだ。合理化というのは、科学的な技法によって理屈が合う方法をいう。つまり、無駄なことをしないということだ」。
3つ目は、病院給食の経営改善。「やればやるほど赤字になるような状況ではなく、経営努力をして収益が上がるような仕組みを作らなければいけない」。
4つ目は、地域・在宅への提供拡大。「病院給食は現状、入院患者に限定されているが、これを外来患者、地域、在宅へ拡大することだ。病院の厨房は、患者の食事を作るだけの場所から、地域の食事を担当するコアになるべきである。それが収益事業になるのではないか」。
5つ目は、新しい時代を担うべき専門職(管理栄養士・栄養士・調理師・医師)への再教育が必要だということ。
なお、日本の病院の約3分の1が加入している全日本病院協会は2025年3月、「病院給食改革に向けたプロジェクト」を発足。次の5つの検討を進めている。
〈1〉基準統一
治療食における栄養基準の簡素化・標準化を図り、全国レベルでの統一や栄養成分別分類による食事管理をすすめる。
〈2〉提供方法
病院給食の提供方法を分類し、整理する。特徴的な取組みの具体事例を収集する。
〈3〉規制緩和
病院給食・学校給食にかかる関係法令・規制を整理し、ハードルとなる規制の緩和を求める。
〈4〉対外発信
マスメディアを通じた世論の形成や、新たな給食提供システムの構築などへの補助金・助成金の必要性を訴求する。
〈5〉現場研修
管理栄養士の意識改革を図る。







