給食業界の発展と職場環境の改善を目指してフードネクサスジャパンが設立、中村代表理事「給食の価値を社会に伝える」
深刻な人手不足と止まらない物価上昇、価格競争の激化と、苦境が続く給食業界。そんな状況を打開するため、病院・福祉施設給食大手の富士産業、社員食堂給食大手のグリーンハウス、学校給食大手の東洋食品が業態の垣根を越えて団結。業界の発展と職場環境の改善を目指す一般社団法人フードネクサスジャパンを設立した。
帝国データバンクが実施した2022年度の調査によると、社員食堂や学生食堂の運営企業374社のうち、34%にあたる127社が赤字運営だったことが分かった。前年度から「減益」となったケースを含めると、全体の6割超で業績が悪化。値上げ交渉が難航する事業者が多くみられ、厳しい採算状況を強いられている。
その後も、24年から続くコメ価高騰の影響は甚だしい。給食事業は飲食店のように企業の独自判断で値上げを実施するのは難しく、病院・福祉施設給食では赤字経営が増加し、学校給食では、主食のコメ価高騰のあおりを受けて、おかずやデザートの提供機会が減少するなどの事態が現に、起こっている。
そうした物価高騰に加え、最低賃金の上昇や人手不足に伴う人材募集広告費の増加で、状況はさらに悪化している。学校給食では、そうした支出増を見込まず安い価格で入札に参加する事業者が増えており、人件費高騰に耐え切れず契約期間の途中で倒産し給食提供が中止する事態も発生している。また、病院・福祉施設、社員食堂、学校と、いずれの給食業態も、支出が増える一方で、その価格転嫁が十分にできないため、給食事業者の経営は悪化の一途をたどっている。まさに、給食事業の持続可能性が危うくなってきている。

12月12日には都内会議室で設立記念フォーラムが開催され、中村仁彦代表理事(富士産業代表取締役)は、給食事業の公益性の高さについて、「給食は、子どもから高齢者まで、全ての世代の健康と暮らしを支える社会の基盤だ。栄養バランスの整った食事を届けることは、健康寿命の延伸や生活の質の向上に直結しており、医療や福祉の現場や学校などでも重要な役割を担っている。また、『口から食べる喜び』を守ることは、人の尊厳を支える大切な営みでもある」と説明した。
そのうえで、「しかしながら給食業界は、その社会的意義の大きさに比べ、評価や職場環境が十分とは言えない。現場で働く方々が誇りを持って働き続けられる職場づくりが必要だ」とし、「給食の価値を広く社会に伝える啓発活動をはじめ、行政や関係団体との連携、持続可能な仕組みや技術の研究・開発を通じて、業界の発展と職場環境の改善に取り組んでいく」と団体設立の狙いを語った。
フードネクサスジャパンは、〈1〉業界横連携プラットフォーム、〈2〉人財育成・教育研修、〈3〉職場環境の改善と働き方支援。〈4〉多様な働き方と雇用の確保――の4つの事業を行う。フォーラムでは、〈4〉の雇用確保の方法の1つとして、非営利型一般社団法人こもれび代表理事の吉川孝之氏が、『給食業界における障がい者雇用の可能性』と題し、講演した。
設立フォーラム開催日時点の正会員は上記代表会員3社。協賛会社は設立発表後、日に日に増えており26社となった。
フォーラムの懇親会には、村上誠一郎衆議院議員(前、総務大臣)が応援に駆け付け、「本法人の設立は、給食の未来を支え、社会全体に明るい展望をもたらすことを確信している」と語った。







