冷凍パン市場に飛躍の兆し

「2020年どこまで行けるか」

冷凍パン市場が転換期を迎えている。ホテルやバル、喫茶業態など、食の洋風化に伴ってメニューとしてパンを必要とする業態が広がっている。一方でサービス業における人手不足が深刻化しており、いまや店内作業の軽減が店舗における最大の課題となっている。このようなターゲット業態の顕在化と加工度の高い製品への需要拡大を商機と見て、冷凍パンメーカー各社も業態別の商品開発や提案に取り組みを強めている。

「本当においしいハード系の冷凍パンがなかったため、市場にも冷凍に対する抵抗感があったが、ここ1~2年で状況が変わってきた」(タカキフードサービスパートナーズ石伊邦恒取締役常務執行役員)。

焼成済み冷凍パンでトップクラスの販売を誇るタカキFsPは、石窯で焼いたフランスパンを得意とする。ただその品質が認知され始めたのは最近のことだ。

フランスパンは小麦粉と水、塩、イーストだけで作るため、職人の技術力が求められ、カリッと焼き上げるのには時間がかかる。外食店に限らず、ベーカリーショップでもリベイクするだけで提供できる商品のニーズがあった。

同社ではあくまでも良質な食事パンの展開にこだわるが、収益性に苦しむスーパーのインストアベーカリーに向けて、経時劣化の少ない、リーズナブルな商品展開に踏み込むという。

バルなどの洋風居酒屋の台頭も、ワインにつきもののパンにとって商機となっている。

テーブルマークはこれまでホテルビュッフェを中心に、自然解凍で美味しく食べられる冷凍パンの市場を広げてきたが、近年、料飲店へのバゲットの販売が拡大している。

製パンメーカーにはない冷食メーカーの強みとして、パン周辺の自社商材との総合提案を練ることができ、プラスに働いているという。

群馬県の冷凍パンメーカー、スタイルブレッドは今年1月から自社通販で、パンと健康的なスープのダイエットセットを販売している。スープは実践女子大と提携して、栄養と塩分に配慮したオリジナルメニューを開発した。

「当社が扱っている食事パンは単品で提案するより、スープと一緒のほうがわかりやすいと考えた」(同社)。モニターセットの販売を順調に積み上げている。

コンビニコーヒーの普及とともにスイーツ系ベーカリーの市場も顕在化している。「2020年までにどこまで行けるか」–焼成冷凍パン市場は本格的な成長期に入ると期待が高まっている。