“浸ける”コーヒーが続々、各社「手間を省く」挑戦続く

UCCのコーヒーバッグはパッケージのイラストで作り方を紹介(左)、キーコーヒーはマイボトルで持ち運べる製品を提案(右)
〈簡便性でライトユーザー取り込みへ〉
コーヒーは、ポリフェノールなどの機能成分を豊富に含むことから、近年健康価値が注目され、日本での消費量は拡大傾向にある。ただ、あまりコーヒーを飲まない人にとっては、他の飲料に比べておいしく淹れるのが難しく、面倒だという声も少なくない。簡便型と言われる一杯抽出のドリップコーヒーも蒸らし方や注ぎ方により出来上がりに差が出るのが実情だ。そこで、コーヒーメーカーはコツも手間もいらない、お湯に“浸ける”だけのコーヒーバッグ製品を相次いで投入する。

従来のバッグタイプの製品は、本格コーヒーの香りと味わいを出すのが難しく、コンビニコーヒーでレギュラーコーヒーの香りと味に親しんだユーザーが満足できるものは少なかった。だが、今秋発売の製品は、原料の豆の品質を高めるとともに新たな抽出方法の採用により、事前の消費者調査でも味覚評価が高い。パッケージもカジュアルなものが多く、女性やトレンドに敏感な層に注目されそうだ。

UCC上島珈琲は「BEANS&ROASTERS(ビーンズアンドロースターズ)コーヒーバッグ」シリーズ2品(各8P)を9月3日から発売する。レギュラーコーヒー100%使用で、カップに入れてお湯を注げば2分で出来上がる。同社担当者は、「レギュラーコーヒーを使用するので微粉が出るが、消費者調査ではコク深くなると好評だった。フレンチプレスのような味覚が楽しめる。ドリップだけがコーヒーではないので、いろいろな飲み方を楽しんでいただきたい」とする。

キーコーヒーは、マイボトルに入れてお湯を注げば約30分で出来上がる「まいにちカフェ コーヒーバッグ」(5P)を9月1日に発売する。バッグは出来上がり後に取り除かなくても、一定以上濃くならない点も特徴。コーヒーは品質の高いアラビカ種を100%使用した。担当者は、「既存品に比べ、豆の配合を大きく変えた。カウンターコーヒーを意識して開発しており、時間が経ってもおいしく飲めるマイルドな味わいを目指した」としている。

日本ヒルスコーヒーも、お湯に3分浸けるだけで2~3人分のコーヒーが出来上がる「ポットでカフェ コーヒーバッグ」(4P)を9月10日に発売。レギュラーコーヒー100%の香り高くまろやかな味わいだ。「ひと言でいえば“お湯出しコーヒー”。忙しい朝食時に利用したいという女性の声が多い」(同社担当者)。

日本ヒルスコーヒー「ポットでカフェ コーヒーバッグ」は“忙しい朝食時に”という女性の声が多い

日本ヒルスコーヒー「ポットでカフェ コーヒーバッグ」は“忙しい朝に”という女性の声が多い

ネスレ日本は、「ネスカフェ 香味焙煎 DIP STYLE(ディップスタイル)」シリーズ3品(各5P)を9月1日から発売する。レギュラーソリュブルコーヒーと挽き豆を組み合わせることで、希少な豆の特長を最大限に引き出した。世界一のコーヒー抽出士と共同で開発したというこだわりの抽出方法は、カップのお湯に90秒間浸けるだけ。振らずに取り出せば完成する。担当者は、「ドリップコーヒーと比べ、圧倒的に短い時間で完成し手間もない。誰でも簡単に本格的なコーヒーが楽しめる」とした。

「ネスカフェ 香味焙煎」は内袋のイラストにもこだわり

「ネスカフェ 香味焙煎」は内袋のイラストにもこだわり

簡便型の代表格であるスティック製品も、トップシェアの味の素AGF社を中心に今秋はアイテムを拡充している。忙しい現代人に選ばれる飲料を目指し、各社の“手間を省く”挑戦は続く。

〈食品産業新聞 2018年8月30日付より〉