紅茶の抗インフルエンザ活性が注目されている。紅茶に含まれる紅茶ポリフェノール(テアフラビン)の働きによるもので、最大の特徴は従来型や新型を問わず、全インフルエンザウイルスの感染力を奪うこと。

バイオメディカル研究所、獣医師・医学博士の中山幹男氏は、「効果があるのは、インフルエンザ患者から健康な人への飛沫感染を阻止すること。治療には役立たない。インフルエンザは鼻からの呼吸によって感染するため、健康な人が紅茶でうがいをしても予防効果はないが、患者が1時間ごとに紅茶を一口飲んで口内のウイルスを死滅させれば、周囲への感染が広がるのを防ぐことができる」と話す。

まもなくインフルエンザの流行が始まる。うがい・手洗いやマスクの着用、湿度管理などの対策と併せて、学校や企業が主体となり、より多くの人が紅茶を飲むことは、感染拡大のリスクを低減しそうだ。

中山氏によると、インフルエンザ患者は解熱後約4日間、タミフルなどの治療薬で早く熱の下がった患者は解熱後6日間ほど、ウイルスを出し続ける。「学級閉鎖や学校閉鎖は、熱が下がりインフルエンザが治ったと思って登校する子どもたちから感染が広がるのを防ぐために行われるもの。先生と生徒、全員で紅茶を飲めば、インフルエンザの流行を止めることができる」(中山氏)。

このような紅茶の抗インフルエンザ活性は、不発酵茶の緑茶に含まれるカテキン成分が、紅茶へと醗酵する過程で生まれた有効成分、テアフラビンによる。このテアフラビンは、インフルエンザウイルスがヒトの細胞に付着して感染する能力を奪うことが分かっているという。

〈10秒でウイルスの99.99%を無力化〉
中山氏が過去に行った実験で、常用濃度の紅茶はわずか10秒でサンプル中のインフルエンザウイルスの99.99%を無力化させた。これは塩素剤400ppmの効果に匹敵するという。

この実験では、ティーバッグ形態の紅茶・緑茶・ウーロン茶と、粉末形態のココア・コーヒー・緑茶を対象に、時間の経過とともに抗インフルエンザ活性を測定した。紅茶と同様、ウーロン茶や緑茶においても抗インフルエンザ活性は見られたが、その数値は紅茶に及ばなかった。
「紅茶・緑茶・ウーロン茶」抗ウイルス活性の測定(中山幹男氏)

中山氏によると、「紅茶の有効成分テアフラビンは、効果のあるガレート基を2つ(エピガロカテキンガレートとエピカテキンガレート)持っている。これに対し、緑茶はガレート基を1つしか持たないため、紅茶の方がウイルスを無力化するスピードが飛躍的に速くなる」という。ここでいうガレート基とは成分の化学構造のこと。また、半発酵茶のウーロン茶は微量ながらテアフラビンを生成できるが、完全発酵した紅茶には生成量が及ばないため、結果に開きが見られた。
 
紅茶であっても、ミルクを加えた場合にはこの働きがなくなり、レモンを加えた場合、抗ウイルス活性が高まることが分かっている。砂糖はほとんど影響しない。
 
外出先では、ペットボトル入りの紅茶も手軽だが、「製造工程により成分が破壊されていたり、テアフラビンの含有量が減っていたりする場合があるため、ティーバッグやリーフで手淹れした紅茶を飲んでほしい」(中山氏)。
 
また近年、需要が高まるカフェインレス紅茶でも抗インフルエンザ活性が確認された。中山氏は「カフェインを抜く工程が製品によって多様なので、さらに検証を重ねる必要はある」としながらも、「カフェインが苦手な人や妊婦、子どもなどがカフェインレス紅茶を飲むことで感染の拡大を防ぐことができる」と話す。
 
〈中山幹男氏 プロフィール〉

バイオメディカル研究所特別研究員、獣医師・医学博士 中山幹男氏

バイオメディカル研究所特別研究員、獣医師・医学博士 中山幹男(なかやま・みきお)氏

東京都出身。日本獣医生命科学大卒(旧日本獣医畜産大獣医学部)。国立感染症研究所ウイルス第一部でインフルエンザウイルス、フラビウイルスの研究に携わる。茶から精製したカテキン類の抗インフルエンザ効果に関するメカニズムの解析で医学博士を授与される。2003年ペンタックス・ニューセラミック事業部、2007年NBCメッシュテックなどを経て、2018年以降はバイオメディカル研究所特別研究員として、消毒薬製剤の抗ウイルス効果の受託試験を担当。

〈食品産業新聞 2018年12月6日付より〉