“お茶はタダ”の常識を変えた「お~いお茶」、発売から30年で販売310億本

1989年に発売した「お~いお茶」と2019年現在の「お~いお茶」(伊藤園)
伊藤園の「お~いお茶」が、今年2月1日に発売30周年の節目を迎えた。同社は、1984年に緑茶の飲料化に成功し、翌年に世界初の緑茶飲料「缶入り煎茶」を発売。そして1989年2月1日に、「お~いお茶」にネーミングを変更した。発売から現在までの販売数量は310億本を突破し、縦に並べると約690万kmになり、地球から月までを9往復できる距離になるという(525mlPET換算)。

同社が「缶入り煎茶」を発売した1985年当時は、日本で“お茶はタダで飲めるもの”というのが常識だったが、同社の営業担当の社員が新幹線のホームで弁当を購入するときに、プラスチック入り緑茶が売られているのを見て、“お弁当と一緒に買っていただこう”と考えたという。その後、同社は弁当店やコンビニエンスストアへ営業を行うことで、取扱店舗を徐々に増やしていった。

そして、“お茶は買うもの”への流れを決定づけたのが、1989年発売の「お~いお茶」だ。この商品名は、家庭的な雰囲気を演出し、さらに売り場のショーケースの中から語りかけるもの、そして、当時、俳優・島田正吾さん(故人)がおっとりした口調で呼びかけるテレビCMで語りかけていた言葉を採用したという。この取り組みにより、89年度の売上金額は前年度比2倍以上、85年と比較すると6倍以上の約40億円に伸長した。

また、「お~いお茶」は、「世界初」、「業界初」の技術革新を行ってきたことでも知られている。そのひとつが、世界で初めての「ペットボトル入り緑茶」であること。開発の課題になったのは、緑茶抽出後2~3日で緑茶に含まれる成分が粒状の浮遊物として大量に発生し、沈殿する現象の「オリの発生」だ。見栄えが悪く、風味を損なうため、同社は天然の目の細かい茶こし(マイクロフィルター)を使用することで、透き通った液色を実現。この製法を開発したことが、1990年にペットボトル入り緑茶飲料(1.5L)の誕生につながったという。

業界初の取り組みは、「ホット対応ペットボトル入り緑茶」である。秋冬期が最需要期である緑茶を加温販売に対応したペットボトル製品を開発した。加温すると酸素がペットボトル容器を通過しやすくなり、酸化して品質が劣化してしまう。そこで、従来の原料茶葉の加工や抽出温度、時間などをすべて見直すとともに、酸素を通しにくいホット対応ペットボトル容器を開発し、2000年10月から発売。同時に、店舗に加温器の無償貸与などにより、新たな売り場を提案し、ホットペット市場を開拓した。現在では、冷めてしまったペットボトルのお茶を温めなおして飲めるように、電子レンジの加温に対応した製品を販売している。

国内の緑茶飲料の課題は、市場規模が20年前と比較して約4倍に伸長する一方で、茶農家の数や茶園の栽培面積が減少しているため、国内の緑茶生産量は減少傾向が続いていることだ。そこで同社は、原料茶葉の安定確保と品質の維持向上に向けて、「茶産地育成事業」に取り組んでいる。

今年の「お~いお茶」の活動は、新元号を記念した商品や日本全国ご当地パッケージの商品のほか、同ブランド史上最大の当選者数を誇る大型キャンペーン、緑茶の健康価値に関するフォーラムなどを5月以降に予定している。

世界的なスポーツイベントが相次いで日本で予定される中、日本の伝統飲料として、また健康価値の高い飲料として緑茶への注目は高まると予測される。「お~いお茶」の真価が問われる年になりそうだ。