清涼飲料業界が海洋ごみ問題に業界一丸となり取り組んでいる。PETボトルなどの容器包装を使用している事業者団体であり、国内の飲料メーカーが会員の全国清涼飲料連合会(全清飲)は、昨年11月29日に、「清涼飲料業界のプラスチック資源循環宣言」を発表した。これは、プラスチック資源循環や海洋プラスチック対策について、生活者や政府、自治体、NPOなど関連団体と連携しながら、2030年度までにPETボトルの100%有効利用を目指すもの。「混ぜればごみ、分ければ資源」の考えのもと、短・中・長期の取り組みを設定して資源循環の高度化を図り、海洋ごみゼロ世界の実現、持続可能な社会の実現に貢献する考えだ。

清涼飲料業界は、これまでも積極的に資源循環へ取り組んでおり、その結果、世界でも非常に高水準のPETリサイクル率を達成している。だが、現実的にはPETボトルが散乱しているという事実もあるため、これまでの取り組みより、もうひとつ上のレベルで取り組むための宣言となっている。全清飲の会員は大手から中小メーカーまでおり、それぞれ規模や事情は異なるが、プラスチック資源循環や、PETボトルの100%有効利用に向けベクトルを合わせ、業界を挙げて取り組んでいくことを決めている。
日米欧のPETボトルリサイクル率の推移

PETボトルリサイクル推進協議会調べ

〈自販機横の回収ボックスへの異物投棄が大きな妨げに〉
短期の取り組み項目である自販機での空容器の散乱防止対策では、自販機の回収ボックスを「自販機専用空容器リサイクルボックス」へ名称を統一している。本来は清涼飲料水の飲み終わった後の空容器のリサイクルボックスだが、現状では、家庭からのゴミや弁当の容器、中には使用済みの紙おむつや動物の死骸など、異物が非常に多く混入しているのが現状だ。取材を通じて感じるのは、これこそが回収した空き容器の品質を落とし、リサイクルの大きな妨げになっているということだ。また、容器内がゴミで一杯となり、本来入るべき空容器が入らないことも散乱の一因となっている。
 
全清飲では、18年12月中旬より実証実験を開始し、消費者啓発のステッカーを貼付したPETボトル専用と缶びん専用のリサイクルボックスを、一部自販機に設置している。実験後には、散乱状況、異物混入・分別状況を確認・検証し、同取り組みの拡大や対応を検討する。
 
自販機横という設置場所が問題なのか、ボックスが透明でないことが問題なのか、タバコのポイ捨て禁止条例のようなものが必要なのか。生活者の意識の変化を促すとともに、業界としての抜本的な対策も必要になってくるかもしれない。
 
一方、使用済みPETボトルを飲料用PETボトル樹脂に戻す循環型リサイクルの「ボトルtoボトル」は17年度、再生PET樹脂量で61.3千トンとなり、前年度比6.7%増加している。PETボトルへの再利用は新たな原油の使用を削減し、資源循環リサイクルとしての貢献が期待できるため、各社の意識が高まれば、今後も増加が見込まれる。

「自販機専用空容器リサイクルボックス」で検証が進む

「自販機専用空容器リサイクルボックス」で検証が進む

〈各社の取り組みは急ピッチ、「混ぜればごみ、分ければ資源」伝達〉
大手メーカーの資源循環に向けた動きも昨年から加速している。18年1月には、ザ コカ・コーラカンパニー(米国本社)が、2030年までにコカ・コーラ社製品の販売量に相当する缶・PET容器を全て回収・リサイクルし、廃棄物のない世界を目指すと発表。日本コカ・コーラは、「容器の2030年ビジョン」と命名し、取り組んでいる。
 
日本コカ・コーラ社の労働安全衛生・環境サステナビリティガバナンスの柴田勇人マネージャーは、海洋プラスチック問題について、「主に2つの問題があると考えており、ひとつは海ゴミ対策だ。こちらは分析をして方向性を決め、対策を進めるべく動いている。もうひとつは資源の循環戦略で、比較的レベルの高いグレードのベール(回収したPETボトルを圧縮し、梱包した立方体の状態のもの)を増やして、ボトルtoボトルとして循環できるようなスキームを他社とも協力して構築していくことが重要だと考えている」と話した。
 
そして、「容器2030ビジョン」について、「定量的にどれくらいのものを、何に対してリサイクルするかを明言するのは、非常にハードルが高い。しかし、アトランタ本社も地球環境に与えている影響は深刻であることを理解し、リーディングカンパニーとして対策を明確に打ち、他社の協力も得ながら取り組むことが重要だと考えている」とした。そんな中、同社は東京の本社内にリバースベンディングマシーン(RVM)を今年2月に導入したという。きれいなPETボトルを効率的に回収することに特化したものだ。柴田さんは、「きれいな資源を効率的に集めるためには、どのような取り組みが必要かを日本全体で考えなくてはならない。その第一歩として、まずは社内の様々な部門の社員が試すことで、全社で素晴らしいアイデアを出し合おうという目的で導入した」とし、資源循環の取り組みで成功したことは全清飲を通して他社にも伝え、大きく普及していきたいと話した。

日本コカ・コーラ社は本社にRVMを設置

日本コカ・コーラ社は本社にRVMを設置

サントリー食品インターナショナルは、国産最軽量のPETボトルの導入や国産最薄の商品ラベルを実用化、さらに植物由来原料のペットボトル導入などに取り組んできた。また、11年には協栄産業社と共同で、使用済みPETボトルを新たなPETボトルに再生する「メカニカルリサイクル」を日本で初めて開発し、リサイクルPETボトルを積極的に使用。昨年は、さらに行程を省くことで環境負荷低減と再生効率化を実現す技術(FtoPダイレクトリサイクル技術)を世界で初めて共同開発している。
 
中期目標としては、2025年までに国内清涼飲料事業における同社全ペットボトル重量の半数以上に再生PET素材を使用することを目指す。
 
同社の東文俊企画部長は、「PETボトルのリサイクルにもいろいろあり、形を変えてリサイクルするものと、同じPETボトルに戻すというものがあるが、究極のリサイクルはボトルからボトルという循環を常に作り続けることだと考えている。そのため、当社はFtoPFtoPの技術を活用し、BtoBを拡大していく方針だ。リサイクルのどこかの段階でゴミになってしまったら意味がないので、極力そちらを増やす方向で考えている。PETボトルだけでなく、キャップもラベルも含めて、軽量化やCO2削減には過去からずっと取り組んできた。今後も社会的責任として取り組んでいく」と話す。

サントリー食品インターナショナルの使用済みPETの有効利用の取り組み

サントリー食品インターナショナルの使用済みPETの有効利用の取り組み

アサヒ飲料は、ESGの取組みの強化を目的に、持続可能な社会の実現に向けて「容器包装2030」を今年1月に制定した。
 
3つの目標があり、「リサイクルPETボトル、環境配慮素材」については、2030年までに、プラスチック製容器包装(PETボトル、ラベル、キャップ、プラスチックボトル)の全重量の60%にリサイクルPET、植物由来の環境配慮素材などを使用することを目指す。「リデュース」では、ラベルレスボトルを拡大するなどプラスチック製容器包装の重量削減を目指す。「環境に配慮した新容器開発」は、プラスチック以外の容器や、新しい環境配慮素材の研究開発を目指す―としている。
 
これまでも環境配慮商品を推進してきたが、昨年はPETボトルに貼付しているロールラベルを削減し、「おいしい水」ブランドにおいてラベルレスボトルを発売している。同社担当者は、「お客様から、はがす手間を省けて捨てやすいという声があった。世の中に大切だと認知されたのではないか」としている。

アサヒ飲料はラベルレスを推進

アサヒ飲料はラベルレスを推進

キリンホールディングスは、今年2月に「プラスチック廃棄物課題」の解決に向けた取り組み方針「キリングループ プラスチックポリシー」を策定。プラスチックの持続可能な使用及び資源の循環を推進する考えだ。
 
3つの項目に分かれ、ひとつめは、「PETボトルの資源循環を推進します」。同グループのプラスチック容器包装等のほとんどは飲料ボトル用PET樹脂が占めており、その一部にリサイクル樹脂をすでに使用しているが、PETボトルの資源循環を推進するため、国内におけるリサイクル樹脂の割合を2027年までに50%に高めることを目指す。また、国や地域、業界団体等と協働しながら、良質な使用済PETボトルの効率的な回収・利用システムの構築を積極的に進めていく。
 
2つめは、「ワンウェイプラスチックの削減および他の素材への代替に努めます」を掲げた。グループ各社が提供するワンウェイプラスチックの削減に努めるとともに、他の素材への代替にも取り組んでいく。
 
3つめは、「PETボトル原料の持続性向上を目指します」。これまでも環境負荷軽減の観点からPETボトルの軽量化を継続的に進めてきたが、国産最軽量の大容量PETなどでさらなる軽量化を目指す。また、PETボトル原料の持続性向上のため、石油資源からの脱却に向けた非可食性植物由来のPETボトル樹脂導入の検討も進める考えだ。

キリンは本社入り口で資源循環を提案

キリンは本社入り口で資源循環の推進活動を紹介

最大手のコカ・コーラとサントリー食品の2社が先行し、今年に入ってアサヒとキリンが自社の取り組み目標を打ち出すなど、清涼飲料業界では各社の取り組みが急速に活発化している。PETボトルは再栓ができ、形状の持ちやすさなどから、どこにでも持ち運べて、いつでも水分を摂取できるという特徴が、生活者から支持されて販売数量が伸びてきた。夏場の熱中症対策においても、多くの人々が利用している容器形態だ。持続的な社会に向けて、まずは、メーカー、行政、NGO、そして生活者のリサイクルへの意識変革が求められそうだ。
 
〈食品産業新聞 2019年3月18日号〉