缶コーヒーで進む“コト消費”、ガンダム・ルパン三世などタイアップや豪華プレゼントを各社展開

コカ・コーラシステム「ジョージア」は「機動戦士ガンダム」グッズが当たるキャンペーンを実施
〈缶コーヒーユーザーが求めるわかりやすい施策へ変換〉
9月に入り、秋冬向けの缶コーヒー施策が各社で展開されている。今秋の特徴は、185gを中心とするショート缶(SOT缶)において、新製品導入以上にプロモーションに力を入れるメーカーが多いことだ。500mlペットコーヒーの登場後、SOT缶製品の戦略は既存ユーザーの囲い込みをいっそう重視する傾向になり、そのためには新製品よりアニメとのタイアップやキャンペーン施策などの方が実際の売れ行きにつながると捉えるメーカーが増えたためである。缶コーヒーは、新製品などの“モノ”に魅かれて購入するというより、共感できる“コト”に魅かれて購入されるケースが増えており、各社の施策も変化している。

コカ・コーラシステムは、秋の「ジョージア ブランドキャンペーン」を9月2日からスタートした。“がんばるあなたに、最高の休息を。”をテーマに、日々ひたむきに働いている人々へのご褒美として、ドバイの海中ホテルの旅などをプレゼントする内容だ。

秋の「ジョージア ブランドキャンペーン」ではドバイの海中ホテルの旅などをプレゼント

秋の「ジョージア ブランドキャンペーン」ではドバイの海中ホテルの旅などをプレゼント

缶コーヒーの秋冬戦略では、同キャンペーンを中心に置き、周辺施策として同日リニューアルする「ジョージア グラン 微糖」などの製品展開が柱となる。また、対象自販機で対象製品を購入すると、「機動戦士ガンダム」のキャラクターをデザインしたオリジナルグッズが120万人に当たる施策なども行う。
 
日本コカ・コーラ社コーヒーグループの新田祐一郎グループマネジャーは、「毎年のように主力のSOT缶をリニューアルし、おいしくなったと伝えてきたが、ここ数年間は期待ほどは数字が動かなかったというのが本音だ。一方で、製品は変えずに、“ジャンプ”や“ガンダム”とタイアップした企画は非常に効果的だった。お客様が何を期待されているのかということを、もっと正しく考える必要がある。プロモーショナルな訴求に寄ったニュースを作り、自社ブランドに目を向けてもらう施策が正しい方向だと、現時点では考えている」と話す。
 
ボトル缶では、「エメラルドマウンテンブレンド プレミアム」(260ml)を9月9日から期間限定で発売する。これはエメマンブランドのSOT缶を再訴求するねらいが大きいという。
 
アサヒ飲料の展開する「ワンダ」は、「今だけのルパンWONDA」キャンペーンを、8月下旬から開始した。ルパン三世のキャラクターが描かれたSOT缶「ワンダ モーニングショット」12種、「ワンダ 金の微糖」12種の全24種を展開し、ポイントを貯めて応募するプレゼント企画も行っている。

アサヒ飲料「ワンダ」はルパン三世のキャラクター缶を展開

アサヒ飲料は「今だけのルパンWONDA」キャンペーンを開始、ルパン三世のキャラクター缶を展開

同社マーケティング本部コーヒーグループの河口文彦グループリーダーは、「SOT缶の秋冬戦略は、ブランドのアクティビティを高めるため、同キャンペーンを活用して、広告とプロモーション、商品を一貫して提案する。デザイン缶は、店頭でしっかり伝わることを目指した。40~50代の購入喚起を図りたい」と話す。
 
一方、発売20周年を迎えるキリンビバレッジの「ファイア」は、他社とは異なり主力品の大幅リニューアルする施策に注力する。原点回帰したパッケージやコミュニケーションを展開するもの。今年は、「挽きたて微糖」に加え、「ブラック」も10月8日からリニューアルし、この2品をフラッグシップ製品として打ち出す。

キリンビバレッジ「ファイア」は「挽きたて微糖」「ブラック」をリニューアル

キリンビバレッジ「ファイア」は「挽きたて微糖」「ブラック」をリニューアル

同社マーケティング本部の大竹野晋平主任は、「RTDコーヒーの中で、SOT缶の販売構成比(手売り)はまだまだ大きく、約45%を占めている。また、新しい製品に興味を持たれるお客様は多いことが当社の調べでわかっており、“ファイア”は20周年を機に、改めてお客様に何を提供できるか考え、主力品を大きくリニューアルした。昨年は“癒し”の価値を訴求していたが、今秋は働く人たちの気持ちを鼓舞するような価値を提供していきたい」と語った。
 
※RTD=Ready to Drink、ふたを開けてすぐ飲める飲料。
 
また、サントリー食品インターナショナルの「ボス」も、果敢にSOT缶ユーザーの新規需要開拓を図る。振って泡立つ設計の「カフェ・ド・ボス ふんわりカプチーノ」と、契約農園豆使用の「カフェ・ド・ボス ほろあまエスプレッソ」を9月3日から発売し、レトロかわいいパッケージと新しい味わいにより、SOT缶ならではの“コーヒーで一服”の価値を、若年層など新規顧客創造に向けて訴求する。

サントリー食品インターナショナルは「カフェ・ド・ボス ふんわりカプチーノ」「カフェ・ド・ボス ほろあまエスプレッソ」を発売

サントリー食品インターナショナルは「カフェ・ド・ボス ふんわりカプチーノ」「カフェ・ド・ボス ほろあまエスプレッソ」を発売

デザイン缶や注目度の高いキャンペーンが、新製品やリニューアル製品の発売以上に、ユーザーにとってわかりやすい価値として受け入れられるようになったことで、缶コーヒーは中味の違いだけではない競争が激しくなっている。一方で、すぐに結果に結びつくかはわからないものの、ブランド力を高めるために、改めて主力製品の強化や若年層開拓に向けた新製品導入などに取り組む企業もあり、各社の缶コーヒー戦略は生活者のニーズ同様、多様になってきている。
 
〈食品産業新聞 2019年9月5日号、一部改稿〉