コーヒー飲料の市場は、2019年1~9月累計で前年実績を約2%下回ったもようだ(飲料各社の聞き取りから推定)。容器別では、500mlPET製品が実績を大きく伸ばした一方、185g中心のSOT缶(ステイ・オン・タブ缶、別称=ショート缶)が前年より約5%下回るとともに、ボトル缶が2ケタ減となった。

液量ベースでは2018年実績において、すでにPET容器がいわゆる“缶コーヒー”のSOT缶を初めて上回るほど拡大している。ただ、最近では容器ごとに得意・不得意分野があることを各社とも認識しており、それに対応した取り組みが進んでいる。短時間の休息で気分転換したいニーズにはSOT缶を提案し、嗜好性を求めるユーザーに向けてはSOT缶とボトル缶のブラックを強化、そして、パーソナルサイズのPETコーヒーは、若年層や女性層からの人気も高いため、各社ともカフェラテ製品の投入に注力している。
「パーソナルサイズコーヒーの時代変遷」

「パーソナルサイズコーヒーの時代変遷」

一方、900mlPETボトルコーヒーは、室内で飲まれることが多いことから、アイスコーヒーの通年飲用が進行している。今年は、簡便性の高さを生かし、レンジで温めるホット提案も目立ってきた。コーヒー飲料は、特定の容器だけがもてはやされる時代は過ぎ、生活者の価値観や飲用シーンの多様化に合わせ、それぞれの容器特性に合った提案が広がっている。
 
〈“もはやブームではない”PETコーヒーが定着〉
清涼飲料の市場全体の容器構成比(2018年度、液量ベース)は、PETボトルが74.6%で缶容器は12.4%。だが、コーヒー飲料においては、PETボトル38.7%で、缶は52.9%あり、コーヒーにおける缶の構成比は高い(全国清涼飲料連合会調べ)。

「コーヒー飲料等の生産量と販売金額の推移」

ただ、そのコーヒーも急速にPETボトルの構成比が高まっている。缶製品を飲みきり型のSOT缶と、再栓できるボトル缶に分けて比べると、PETボトル(1265千kl)がSOT缶(1118千kl)を、昨年は液量ベースで逆転した(ボトル缶は610千kl)。
 
本数ベースでは、まだまだSOT缶が多いものの、コーヒー飲料において、2018年はエポックメイキングの年といえるだろう。PET飲料は、1996年からパーソナルサイズが登場しており、若年層にとっては再栓できることは当たり前の価値になっているため、PETの構成比が高まることはうなずける。PETコーヒーは、一時のブームではなく市場に定着した。
 
しかし、飲用シーンや生活者の求める味覚は多様化しており、特定の容器だけではそのニーズに応えきれないこともわかってきた。そこで、本格感のあるブラックコーヒーや濃厚なカフェラテなどは、SOT缶やボトル缶で訴求するケースが増えており、すっきりとしたゴクゴク飲めるブラックコーヒーや、さっぱりとした後味のカフェラテは、PETボトルで数多くの製品が今年も発売されている。

「コーヒー飲料等の容器別生産量推移」「清涼飲料品目別容器別シェア(2018年)」

〈容器特性に合わせた製品提案が活発化〉
500ml容量帯のPET製品の市場は、「クラフトボス」(サントリー食品)が引き続き牽引している。そして、今年は「ファイア ワンデイ ブラック」(キリンビバレッジ)や、「ジョージア ジャパン クラフトマン 微糖」(コカ・コーラシステム)もヒットした。
 
カテゴリーのパイオニアであり、働く人が“ちびだら”で飲用する(ちびだらだら飲む)シーンの提案により市場を開拓したサントリー食品の「クラフトボス」(500mlPET)は、ブラック、ラテ、ブラウンの3品体制を確立。今年は紅茶カテゴリーにも拡張し、発売3年目で3000万箱突破見込みとなるなど、快走を続けている。
 
コカ・コーラシステムは、6月発売の「ジョージア ジャパン クラフトマン 微糖」(同)が、“微糖”をストレートに訴求した点が中味設計とともに支持された。自販機へのPET製品導入も今春から加速し、売り上げを拡大している。
 
注目は、同カテゴリーで最も売れ筋であるラテタイプを主戦場として、各社の取り組みが活発化していることだ。伊藤園は、無糖タイプの「タリーズコーヒー スムース ラテ」(500mlPET)が、女性と40~50代からの人気を得ている。今秋からはホット&コールド兼用に刷新し、販売店での業務効率化も図り、導入を促進する考えだ。
 
アサヒ飲料は、ミルク入りPET飲料の強化を図り、「ワンダ ホワイティラテ」(480mlPET)を10月1日から発売した。ミルクにこだわるとともに、カフェインを極力減らした設計が特徴で、コーヒーが苦手な人にもアプローチする。差別化された新たなラテとして注目されそうだ。
 
UCC上島珈琲の「BEANS&ROASTERS ミルク好きのラテ」(450mlPET、9月23日発売)は、牛乳を贅沢に使用したすっきり甘いミルク感に、コーヒーがほんのり香る設計で、幅広いユーザーの取り込みを図っている。
 
一方、“ちびだら飲み”のPETコーヒーにはない価値があることで再注目されているのが、日本のコーヒー飲料の代名詞であるSOT缶だ。短い時間でもしっかり休息を取り、気分転換したいという生活者のニーズに、飲みきりタイプの濃厚な味わいで、“ひと休み”の価値を提供している。
 
SOT缶の秋冬製品で注目を集めているのは、リニューアルでコーヒーの味わいを高めた「ジョージア グラン 微糖」(コカ・コーラ)、PETで新規ユーザー獲得に成功した知見を活かした「カフェ・ド・ボス」(サントリー)、20周年を機に原点回帰で火にこだわり抜いた「ファイア 挽きたて微糖」(キリン)などだ。また、他ブランドの春から好調な製品としては、ブラックのパイオニアである「UCC BLACK無糖」や、伊藤園の「タリーズ バリスタズ デミタス」がある。どちらも嗜好性の高さを訴求する製品となっている。
 
そして、SOT缶で興味深い活動では、パッケージのデザインの工夫がある。その代表例が、「ジョージア」の“機動戦士ガンダム”、「ワンダ」の“ルパン三世”のデザイン缶である。主力製品のパッケージデザインに、40~50代の好む人気アニメキャラクターを採用することで、トライアルとリピート購買をねらった施策だ。表面化していない生活者の楽しさを求めるニーズに応えることで、人気製品となっている。
 
キャラクターではないが、「カフェ・ド・ボス」も、若年層に“自分向け”と思ってもらえるような、おしゃれで明るいトーンのデザインを採用したことで多くのトライアル獲得に成功し、SOT缶自体が古臭いものではないことを証明した。
 
働き方改革など、生活者を取り巻く環境の変化を受け、約10年間で市場構造が地殻変動し、SOT缶、ボトル缶、PETなど、さまざまな容器形態が注目されてきたコーヒー飲料市場。特定の容器で全てのニーズに応えるのではなく、飲用シーンやユーザーに応じて、それぞれの容器が最大の効果を発揮できるような取り組みに、各社が挑戦している。