野菜飲料、コロナ禍で大容量中心に上昇、自己防衛意識から栄養バランスに注目

量販店の野菜果汁飲料売り場
新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、人々の自己防衛意識が高まり、栄養バランスの良い野菜飲料に人々の関心が集まったことで、2020年1~4月の野菜飲料市場は、前年を上回る販売実績で推移した。

清涼飲料全体の4月単月が2割減と大きく実績を落とす中にあって、特異な動きをしている。野菜飲料は通年でも2~3%伸びる見込みだ。特に家庭内需要の増加により大型サイズのPETや紙パック商品を中心に伸びている。

野菜飲料市場は、生活者の健康志向の高まりから成長を続け、3年ほど前からはトマトジュースの人気も高まって市場を押し上げた。ただ、2019年は、トクホ茶や乳酸菌、プロテインなどさまざまな健康軸の商品への注目が高まり、野菜飲料に影響が出ていた。春の大容量の一部値上げも響き、秋以降に売上を回復していったがマイナスで着地した。今年は、コロナ禍で人々の健康意識が高まり、野菜飲料はプラスで推移している。「1~2月と3~4月を比較すると、野菜飲料はどのカテゴリーにおいても間口が広がった。Eコマースでの出荷が顕著に伸びている」(メーカー)状況で、買い物の選択肢でECを取り入れる人が増えたとする。

カテゴリーでは、「野菜生活100」(カゴメ)や「充実野菜」(伊藤園)など、飲みやすさが特徴の野菜・果汁ミックス飲料を中心にユーザーが拡大し、特に、女性の購入率と量が増えたという。家族の健康のために、大型サイズを中心に購入される傾向が続いたという。

トマトジュースは、春夏に向けの施策が満足にできていない中で比較的順調に推移し、野菜100%飲料はヘビーユーザーに支えられ、プラスになっている。備蓄商材としても需要が高い。

注目商品では、伊藤園の「ビタミン野菜」が挙げられる。もともと売れ筋商品だったが、コロナ禍でビタミンが注目され、栄養価値の高さから大きく伸長している。需要の高まりを受け、缶とPETも急遽導入する。

新商品では、キッコーマン飲料の「デルモンテ つぶ野菜」の存在感が高まりそうだ。徹底的にユーザーの声を聞き、野菜・果実ミックスの課題だった“野菜を摂っている実感”を、つぶつぶとした食感で実現した意欲的な商品だ。

そして、コロナ禍で飲料の新商品の多くが苦戦する中、カゴメの「野菜生活SOY+」は計画以上の販売となった。豆乳と野菜が同時に摂れる設計で、従来の野菜飲料を飲んでいなかったユーザーへのアプローチが成功している。

野菜飲料市場の継続的な成長に向けては、新たに入ってきたユーザーをつなぎとめることが重要だ。そのために、栄養価値の高い商品の展開と、その価値の伝達が課題となる。また、野菜の栄養を保存できる本質価値に着目し、備蓄需要を訴求する活動も進んでいる。 

〈果汁飲料は“おいしさ”以外の魅力も、“栄養価値”と“ハッピー”提供で習慣化へ〉
一方、果汁飲料市場は、前年実績は下回ったものの、今年の落ち込みは少ない。こちらも大容量サイズを中心に健闘している。とはいえ、下降傾向は続いており、2019年も前年比5%減となった。おいしさの面ではさまざまな飲料の中でも圧倒的に有利であり、それは、他の飲料カテゴリーやアルコールなどで果汁が多く使われていることからもわかる。ただ、健康志向から甘さ離れが進むとともに、飲む理由がはっきりしなかったことで、近年は元気がなかった。そのような市場環境の中で成長が続いているのは、栄養成分の入った商品だ。「トロピカーナ エッセンシャルズ」(キリンビバレッジ)が市場を牽引しており、今年も新商品「エッセンシャルズプラス」からスムージータイプを投入した。他にも「ドール フルーツスムージー」(雪印メグミルク)や「世界の果実」(伊藤園)など、健康的なアイテムが一気に増えている。昨年、日本で発売を開始したイノセント社の果汁100%ドリンクも、市場活性化の起爆剤になりそうだ。

果汁飲料はおいしさの価値訴求にとどまらず、フルーツ摂取の重要性の伝達や栄養入り商品の展開を行うことで市場活性化が期待できる。果汁の本質価値のひとつである楽しさや幸福感とともに、伝えられるかがユーザー拡大のカギになる。