コロナ禍で無糖炭酸水が市場拡大、リフレッシュメントと割材利用で家庭内需要高まる

飲料各社が展開する炭酸水
コロナ禍において、炭酸水市場が活性化している。外出自粛など閉塞感が漂う中で、炭酸水に爽快感やリフレッシュを求める生活者が増え、家庭内での消費が拡大したことが要因だ。飲用者は40~50代が多いが、ユーザーは拡大傾向にある。

無糖と強炭酸という特徴が多くの人々に受け入れられ、どんな場面でも飲まれている傾向にあるという。「炭酸水はもともとマルチユースだと捉えている。朝や昼間の仕事中、家事をしながら、そして夕食時の直接飲用やお酒の割材としての飲用も増えている」(サントリー食品インターナショナル)。さらに、最近では、もやもやした閉塞感の中、水やお茶では物足りないため、炭酸水にリフレッシュメントを求める人々も増加している。「炭酸水市場の好調は、コロナの影響で運動不足が懸念され、健康志向がより高まったという背景もある。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、生活が一気に元に戻ることは考えにくく、無糖炭酸市場はさらに伸びる」(キリンビバレッジ)。

さらに、外出自粛時は、レストランや居酒屋など外食を控える傾向から、自宅で“宅飲み”が増えており、ウイスキーや焼酎などお酒の割り材としての利用も炭酸水の伸長につながった。

炭酸水市場は、コロナ禍前から拡大を続けていた。プレーンタイプの炭酸水の生産量は2019年に31万3700キロリットルとなり、10年前から約8倍伸長している(全国清涼飲料連合会調べ)。清涼飲料市場の中で最も勢いのあるカテゴリーだ。ユーザーが拡大したことから、炭酸水のラインアップも広がっており、果汁/フレーバー入りタイプの炭酸水は、2019年に22万2000キロリットルまで増加し、5年前から約1.9倍になった(全国清涼飲料連合会調べ)。

炭酸水(プレーン)の生産量推移

炭酸水(プレーン)の生産量推移

 
このような状況から、各社は次々と炭酸水の施策を打ち出し、市場はさらに活性化している。トップブランドのアサヒ飲料の「ウィルキンソン」は、「タンサン」「タンサンレモン」のパッケージに炭酸水市場売上ナンバーワンであることを明記し、信頼と品質を伝達することでブランドロイヤリティの強化と新規ユーザーの拡大を図っている。また、本体とレモンを中心に「刺激、強め。」を継続的に訴求し、新商品も投入。今年5月は前年比9%増で推移している。
 
サントリー食品インターナショナルは、「サントリー天然水スパークリング」(プレーン、レモン)を今年3月にリニューアル。特に、レモンはリニューアル前よりユーザーが約1.6倍増えているという。そして、新しいチャレンジとして、「サントリー天然水SPARKLE ジンジャー&カフェイン」を6月9日から発売。「炭酸水の価値としては、ヘルシーに飲める無糖であることが大切。その無糖の枠組みの中でどれだけ飲みごたえや、頑張れる力を引き出せる味わいにできるかチャレンジした」(サントリー食品)。
 
コカ・コーラシステムは、同社史上最高のガスボリュームによる強い刺激とキレのある味わいにこだわった「ザ・タンサン ストロング」「ザ・タンサン レモン」を中心に販売。「特にオンラインでの販売が拡大しており、家庭内での飲用が進んでいる」(日本コカ・コーラ)。
 
キリンビバレッジは、「キリンレモン スパークリング 無糖」を6月2日発売した。90年以上歴史のある「キリンレモン」だからこそ、レモンにこだわった商品にしたという。「少しでもみなさんの元気が出るようにキリンレモンブランドがお手伝いできれば」と話す(キリンビバレッジ)。レモンが強いのでハイボールなどにも合いそうだ。
 
レモンの会社として、ポッカサッポロフード&ビバレッジもレモン系の新商品を投入。レモン1個分の果汁が入っている無糖でカロリーゼロの「キレートレモン 無糖スパークリング」を6月1日から発売している。
 
伊藤園は、輪切り果実を抽出し、 果実そのものの味わいを引き出した「輪切りゆずの炭酸水」を3月から発売した。香料・保存料・人工甘味料の添加物を使用していないことが特徴だ。
 
コロナ禍で閉塞感のある中、炭酸水市場は無糖という健康感と、強炭酸というリフレッシュメントの価値により、40~50代の心をつかんで拡大してきた。レモンを中心にフレーバー商品も各社から次々投入され、勢いは止まりそうにない。ただ、清涼飲料市場全体を見渡すと、都心部のコンビニや自販機、飲食店での販売が減少し、4~5月は販売数量が前年より2割減となっている。飲料市場活性化に向け、炭酸水がさらにはじけることができるか注目だ。