「クラフトボス」5年目の大刷新で成長、コロナ禍の閉塞感が“変える”強い決意に/サントリー食品インターナショナル

サントリー「クラフトボス」(ブラック・ラテ・微糖)
サントリーのコーヒーブランド「クラフトボス」(500mlPET他)は、2021年3月に大きくリニューアルした。味覚とともに特徴的だった容器の寸胴(ずんどう)の形状も大胆に変更している。発売から1カ月間の販売水準は、リニューアル前1カ月の水準と比較して2〜3割増で推移と成功を収めており、ユーザーが増加している状況だ。

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2017年の発売以来、「クラフトボス」はオフィスワーカーを中心に「ちびだら飲みコーヒー」という新ジャンルを創出し、シリーズ計で2019年、2020年は2年連続で年間3000万ケースを突破するなど、500mlペットボトルコーヒーの市場をけん引してきた。

新市場を創造し、大成功を収めているブランドを大きく変えるのは、ユーザーが流出する恐れがあり簡単ではない。なぜ、「クラフトボス」は変わることを選んだのか。それは、“働く人の相棒”をテーマに活動を続ける「ボス」ブランドにとって、コロナ禍で人々の働き方が変わったことが背景にあるという。サントリー食品インターナショナルのジャパン事業本部の大塚匠課長に話を聞いた。

――「クラフトボス」はこれまで順調な販売を続けてきましたが、今回大きくリニューアルしたのはなぜですか。

「クラフトボス」には、2つの課題がありました。ひとつは、ペットボトルコーヒーの新規ユーザーが、創成期の2017年と、競合が次々と参入してきた2018年に膨らんだものの、その後ほとんど入ってこなかったことです。

――市場に定着する製品としない製品で勝負がはっきり分かれ、「クラフトボス」を含めて数種類のブランドに集約された。その結果、市場活性化の勢いが落ち着き、ペットボトルコーヒー市場の踊り場を招いたということですね。

一方、飲用率という点では、まだ拡大の余地が大きいと感じています。「クラフトボス」が36%であるのに対して、ボスの缶コーヒーは53%あります(コーヒー週1以上の飲用者における飲用率経験率)。ペットボトルコーヒーを飲んだことがないお客様が6割以上いるため、新たな風を吹かすことでお客様を増やせる可能性はあると考えています。

2つめの課題は、コロナ禍でお客様が閉塞感を感じている中、「クラフトボス」は“働く人の相棒”としての使命を、存分に果たすことができなかったのではないかということです。

――“働く人の相棒”への原点回帰を目指すということですね。

もともと「クラフトボス」シリーズは、“働き方改革”という流れも含めた昨今の働き方の裏側にあるお客様の閉塞感を解放していきたいという思いで開発した製品です。だからこそ、コロナ禍のような最も強い閉塞感のある時には、もっと貢献していかなくてはならないとずっと考えていました。

2020年はメッセージ広告などには取り組んだものの、コーヒー製品としては新たな取り組みはできませんでした。2021年は、もう一度「クラフトボス」を強化することで、大変な時代の中で働く人たちへ前向きなメッセージを発信し、“働く人の相棒”として背中を少しでも後押ししていきたいと考えています。

そのような考えから、好調なブランドを大きく変更していいのかと思った部分もありましたが、「クラフトボス」コーヒーシリーズの大刷新を決断しました。

――リニューアルの具体的な取り組みは。

ボトルデザインは、もともとあったガラス瓶のような印象を強化するため、エンボス(デコボコ)を前面に配置するとともに、より透明な印象にするため、ラベルの面積を狭くしました。エンボス加工はボコボコした触り心地で、持たれた方は愛着を感じていただけるのではないかと思っています。

中味の味わいは、注ぎたてのようなクリアなおいしさをテーマに、コーヒー豆を厳選し、抽出した5種類のコーヒーを絶妙なバランスでブレンドしました。新しい「クラフトボス ブラック」では、焙煎から抽出方法まで見直し、雑味を抑え、香りを豊かにしています。「クラフトボス ラテ」も味わいとキレを感じられるミルクの配合(乳脂肪と乳たんぱくの比率)にし、よりゴクゴク飲んでもすっきりした味わいを実現しました。

――容器・パッケージの大幅な変更には驚きました。

勝負は、店頭で「クラフトボス」とわかるかどうか。そして、その変更が魅力的な方へ行っているかどうか。クオリティを上げて、より透明感を高めたことを、お客様はどのように感じられるのか。その点は、かなり細かい部分も含めて何度もやり直しました。

――コロナ禍での開発、そして発売となりました。

開発にあたっては、変えることを目的化しないで、変える意味を丁寧にチームで議論することを心がけました。議論を始めた2019年秋から、働く人たちの閉塞感に、「クラフトボス」はどのように応えていけるかということをずっとチームで議論を重ねていました。

どうしても、競合製品の動向に目が行きがちになりますが、もう一度自分たちのお客様に提供する意味合いや、意義を問い直して時間をかけて議論してきました。今は、大刷新した「クラフトボス」を多くのお客様が支持して下さっており、よかったと考えています。

発売にあたっては、閉塞感を解放しようと思って変更したことが、逆にお客様の期待を裏切ることにつながりかねないという思いも持ちながら準備をしてきました。そのため、2021年1月末から発売日の3月23日まで長い時間をかけて、新製品を発売するような気持ちで情報を発信してきました。ただのリニューアルでなく、大型新製品を発売する気持ちで取り組みました。

――発売後のユーザーからの反応は。

“久しぶりに飲んだ”という方や、“初めて飲んだ”“苦くなくて私にも飲める”という声を多くいただいており、ホッとしています。

もうひとつは、ボコボコなエンボスのボトルを“チャーミング”だと捉えて下さり、外で撮影してSNSに載せてくださる方が増えています。従来品はパソコンの前での撮影が多い印象でしたが、そのあたりも傾向が変わってきたと感じています。

また、ボトルがスリムになったことで、“ドリンクホルダーに入らない”というこれまでの課題も解消しました。発売当初は、飲用シーンを想起していただくため、ボテッとしたものをデスクの横に置いていただくねらいで作っていました。5年目にして、運転時に飲みたいというドライバーの皆様のニーズに応えることができて嬉しく思います。

5年前までは、コーヒー飲料といえば缶コーヒーが代名詞だった。しかし、2017年の「クラフトボス」誕生以降は、500mlサイズのペットボトルコーヒーが伸長し、コーヒー飲料の販売構成比で約27%まで高まっている(2020年時点、販売箱数ベース)。2021年には3割を突破する見込みだ。

“クラフトボスショック”で日本のコーヒー飲料市場は大きく変わった。購買行動は、缶コーヒーからペットボトルコーヒーへの移行が加速したことは間違いない。だが、本質的な変化は、若い世代や女性を含め多くの働く人にとって、仕事中に飲む飲料の選択肢が広がったことだろう。

「クラフトボス」の5年目の大刷新は、コロナ禍で今の働き方に閉塞感を持つ人たちの背中を後押しする存在を目指して行われた。より多くの“働く人の相棒”になるため、いっそう認知を高め、トライアル促進を促す活動を継続強化するもようだ。