サントリー“植物由来原料100%”のペットボトル開発、非可食ウッドチップ使用の試作品完成

植物由来原料100%使用ペットボトルと植物由来原料30%ペットボトル
サントリーグループは12月3日、米国バイオ化学ベンチャー企業・アネロテック社と進めてきた植物由来原料100%使用ペットボトルの開発に成功し、試作品が完成したことを発表した。

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サントリーによれば、食物性の材料でないもので作られた、植物由来原料100%を使用したペットボトルは世界初という。石油由来原料100%使用ペットボトルと比較した場合、CO2削減が期待できる。

サントリーグループは、「プラスチック基本方針」(2019年策定)で、2030年までにグローバルで使用するすべてのペットボトルに、リサイクル素材あるいは植物由来素材のみを使用し、化石由来原料の新規使用をゼロにすることで、100%サステナブル化を目指している。

12月3日に都内で開かれた「植物由来原料100%使用ペットボトル試作品完成記者発表会」で、サントリーホールディングス執行役員の福本ともみサステナビリティ経営推進本部長は次のように語る。

「持続可能な社会の実現に向け、私たちはまず一度使用されたペットボトルを、もう一度ペットボトルに再生して、使用するという姿を目指したい。ただし、回収の面で、もう一度ボトルに使用できるだけの品質のものをどれだけ集められるか、そして今後に需要が拡大していくことを考えると、新規にボトルを投入することも必要になっていく。そうした時に、石油由来のものではなく、持続可能な天然資源である植物由来素材のものを使用していきたいと考えている」。

植物由来素材(バイオ)のペットボトル開発では、ペットボトル原料の30%を構成する「モノエチレングリコール」を植物由来原料(サトウキビのとろみを生成する際に発生する残渣の廃糖蜜)で生成した、植物由来原料30%のペットボトルを2013年から「サントリー天然水」に導入した。

残りの70%を構成するテレフタル酸の前駆体「パラキシレン」を、植物由来素材から生成すべく、2012年から米国バイオ化学ベンチャー企業・アネロテック社と植物由来原料100%使用ペットボトルの共同開発を開始している。

サントリーMONOZUKURIエキスパート社執行役員の横井恒彦SCM本部包材部長は、「ペットボトル(成分)の3割を占めるモノエチレングリコールは、すでに廃糖蜜から生成された原料が世の中には存在している。残りの7割を占めるテレフタル酸を、植物由来素材であるウッドチップから作るという技術を開発しようとするアネロテック社ととともに、技術開発に取り組んできた。2012年から研究を開始し、2019年に(植物由来原料100%使用ペットボトルの)技術を確立できた」とした。

サントリーホールディングス 福本部長、サントリーMONOZUKURIエキスパート社 横井部長

サントリーホールディングス 福本執行役員、サントリーMONOZUKURIエキスパート社 横井執行役員

 
同社によれば、「パラキシレン」を植物由来素材で生成するのは容易ではなく、既往技術では素材を複数段階に渡って変換する必要があるが、今回、熱分解と触媒反応により、ワンステップで生成できる技術の開発に成功したという。プロセスがシンプルなため、使用エネルギーを低く抑えられることが特徴という。
 
テレフタル酸の代替分(全体の70%)に使用する素材は、食料用原料のサプライチェーンに影響が出ないよう、非可食のウッドチップのみから生成している。今回用いられたウッドチップは、米国のマツを採用しているが、日本のスギなど他の植物を使うこともできるという。
 
サントリーは、ペットボトルの環境負荷軽減に向けて「2R+B」を進めており、リデュース(使う量を減らす)、リサイクル(繰り返し使う)、これに加えて石油由来原料を再生可能な原料のバイオ(植物由来の資源)に代替していくことに取り組んでいる。
 
同社は、リデュースで国内最軽量クラスのペットボトルとラベルを実現しており、リサイクルでは、2012年からボトルからボトルに水平リサイクルする「ボトルtoボトル」に取り組み、2020年の再生ペットボトルの使用比率は26%を達成、2022年には50%まで高める計画としている。