SM(食品スーパー)の出店速度が鈍化してきている。

高齢化と人口減少で、国内食品市場そのものが縮小していることが大きな背景だが、ドラッグストアやホームセンターなどの異業態が食品販売に本腰を入れ始めたこと、大手CVS(コンビニエンスストア)の出店速度が落ちていないことが大きく影響している。食品の販売チャネルが増え、より近所で便利に割安に食品を購入できるようになり、SMまで行かなくても生活できるようになってきた。

生鮮食品や惣菜を店内で加工するSMは典型的な労働集約型の業種。人手不足の中、新店の従業員を集め切れないケースも増えている。出店より既存店の維持・活性化に投資を振り向けているSMも多く、CVSとドラッグの攻勢に対し、受け身にならざるを得ない厳しい状況が続く。

売り場面積300~500坪の標準的なSMを運営する場合、従業員は8時間換算で最低50人程度は必要になる。厨房などの設備投資も必要で、1店舗出店にかかる負担は大きい、一方、CVSやドラッグストア1店舗の従業員はSMの10分の1程度で済む。厨房や大型のバックスペースも必要なく、イニシャルコストも低いため、CVSとドラッグストアは高水準での出店速度を維持できている。

ドラッグストアの標準的な出店基準は商圏人口1万人に1店だが、業界内では7000人程度でも出店できるモデル構築が進んでいる。カギを握るのは食品の拡充で、従来のドライ食品、日配品に加え、弁当・惣菜、生鮮食品の扱いを始めるドラッグストアも増えてきた。それらを供給するベンダーも増えており、ノウハウが無くても弁当やサラダ、精肉パックなどを販売できるようになってきた。

地方では人口数千人規模の自治体でSMは無いがCVSとドラッグストアはあるというところは多い。ドラッグストアはローコスト運営ゆえに、人口が少なくても出店できるが、食品の価格を抑えられるというメリットもある。地方は生活インフラに掛かるコストが、都会よりもどうしても割高になる。しかし、ドラッグストアの食品に関すれば、地方では大きな割安感になり、地方生活者にとっては、その存在感は年々重要度を増していると言える。

綿半ホームエイド(長野)はもともとホームセンターだったが、ホームセンターに食品を加えたスーパーセンター業態に転換して売上高は右肩上がりを続けている。

05年3月期に日配品から食品の扱いを始め、08年3月期に生鮮食品を導入した。この間ホームセンター部門の売り上げは微増だが、食品の売り上げがオンし、全体の売上高は10年間で2倍になっている。同社は前期、首都圏から山梨、長野にホームセンターを展開する「Jマート」を買収した。綿半ホールディングスの野原勇社長は「Jマートにも食品を導入して売上高を倍増させる」と話す。

バローホールディングス(岐阜)はSM「バロー」が主力業態だが前期、グループのドラッグストア「Vドラッグ」2店に惣菜とベーカリーを導入した。また、直営の大型ホームセンターに農産物直売所と精肉売り場を導入した。両業態とも盛況だという。田代正美社長は「SMはコストがかかるということが身体から抜け切れない。(ローコスト運営の)ドラッグストアやホームセンターからSMをつくるという発想もある」と話す。田代社長は今後の人件費や原料価格の高騰などを考慮すると、高コスト体質のSM業界は危機に瀕すると指摘し、「(ローコスト運営の)全く新しいSMの開発に乗り出し、もう一度革新的な企業を目指す」と話している。