インアゴーラ、越境ECに新システム「WJS」構想 日本商品を手軽に中国へ

構想イメージ
〈伊藤忠らの出資で累計123.5億円を調達〉
越境EC(電子商取引)事業を展開するインアゴーラ(Inagora、翁永飆〈おうえいひょう〉社長、東京都港区)は22日、煩雑な中国への越境ECを手軽なものにする商品流通システム「WonderJapan Cross Border Syndication」(WJS、ワンダージャパンクロスボーダーシンジケーション)の構想を発表した。

インアゴーラは2014年12月、オフィスソフトやセキュリティーソフトを展開するキングソフト会長(当時)の翁氏らにより設立。日本製商品に特化した中国のユーザー向けECプラットホーム「豌豆プラットフォーム」を運営し、約2600ブランドの4万アイテムを扱っている。

今年10月31日には、伊藤忠商事(岡藤正広社長)、KDDI、SBIホールディングスなどから、第三者割当増資による合計約6800万ドル(約76.5億円)の資金調達を実施。2016年2月からの調達額は累計1億900万ドル(約123.5億円)に達した。この資金を人員増強、物流拠点の拡充、物流力の強化などに活用し、構想の実現を図る。

インアゴーラは今回の構想で、①商品マスターのデータベース化②通関業務のサポート③中国消費者向けの新商品情報拡散④日本企業と中国の販売チャネルのシステム連携⑤物流業務の受託⑥販売情報のフィードバックによるマーケティング支援――などを実施し、日本企業が手軽に中国市場へ進出できる環境を築く。

同日、都内で開催した事業戦略発表会で、翁社長は「東京・青海の倉庫から中国の消費者まで、最低単価700円、最短3日で配送を行う。現在、日中間には中間流通システムが存在せず、中国では価格の混乱、日本では欠品の多発が起きている。日本の良い商品を健全に中国に流通するサポートをしたい」などと語った。伊藤忠商事の鈴木善久専務は、「今回は約42.5億円を出資する。伊藤忠グループが持つ流通を支えるためのネットワークを活用し、インアゴーラを次のステージに成長させる。日中をつなぐ最強のECプラットホームを作りたい」などと述べた。

今後、インアゴーラは構想に賛同する大手流通・卸らとワークグループを組織し、共同で事業化を検討していく。22日時点での賛同企業は12社(あらた、伊藤忠食品、大木、加藤産業、国分首都圏、全農パールライス、中央物産、ときわ商会、日本アクセス、日本酒類販売、ピップ、三菱食品)。

〈食品産業新聞2017年11月30日付より〉

左から伊藤忠商事・鈴木専務、インアゴーラ・翁社長、KDDI・森田圭執行役員

左から伊藤忠商事・鈴木専務、インアゴーラ・翁社長、KDDI・森田圭執行役員