〈新春インタビュー2018〉サミット代表取締役社長・竹野浩樹氏 来店したくなる店づくりに重点

サミット(東京都杉並区)は17年4月に中期経営計画を発表した。「サミットが日本のスーパーマーケットを楽しくする」をテーマに、来店したくなる店づくりに最も重点を置き、リアル店舗の存在感を磨く。従業員同士が楽しそうな店には、自然と顧客が集まってくるとし、従業員が会社の成長ストーリーを共有し、自ら動くような人づくりを行ってきた。17年度中間期は既存店ベースの客数が3期連続で伸び、同社の取り組みが着実に成果を出している。

――17年は組織作り、人材育成の成果が出てきた
「チャレンジtoチェンジ」をテーマに、まず自分が変わって会社も変える。まずムーブメントを作り、業績以上にいい感じになってきた。若い人に集まってもらい、サミットの未来を考える「ミラサミ」も動き出した。パートも含めた全員で行動し、流れの中で人を育成していく。

流通業界は今まで、強いトップの言うとおりにやってきた。しかし、何が起こるかわからない世の中。店ごとに、自分で考えて行動して対応していかなければならない。そうやって組織作り、人づくりをしている。

従業員起点で楽しく働ければ、それを見た顧客が我々を支援してくれ、「サミットが日本のスーパーマーケットを楽しくする」という事業ビジョンの実現につながると考えている。パートとのコミュニケーションをよくし、離職率を毎月フォローしながら、せっかく入った人に長く働いてもらえるよう、この組織に所属していてよかったと思えるようなしくみを作り続ける。流通ならサミットで働きたいと思わせるような処遇と働きやすい職場を目指す。それが人手不足への対応にも繋がる。

現場は俯瞰できない。マネジメントが俯瞰してボトルネックをみつける。18年は売り場も接客もさらに進化させていく。

〈地域別MDでネットに対抗〉
――ドラッグやネットがシェアを奪ってきているが、グロサリーでどう売り上げを上げていくのか

地域別MDで対応している。ドラッグは品揃えが限られ、ネットでは品揃えを包括的に見られない。地域や個店別に、顧客の買い物スイッチが入るよう、価格だけでなく接客、品揃えや商品の並び方などにこだわっている。これらが支持されて客数が増えている。

箱売りの飲料、コメ、紙などネットで強いと言われているものも、当社では売り上げが落ちていないので、現時点でネットの脅威はあまり見えない。

海外と日本は違う。日本はCVSが徒歩圏内にあるところが多く、SMも深夜まで営業している。世の中が求める少量化や即食化、簡便化が身近にある。一方、ネットはまだそこまで対応できていない。そこをしっかり追求していくことで、リアル店舗はネットと明らかな差別化ができる。リアルの世界でやれることはまだたくさんある。

高齢化、買い物弱者への対応はコストとして負担していく。サービスの一環としてどこまでできるか。米国のインスタカートのように、買い物代行業と組むことも考えていきたい。

――ハイタッチな接客やイートインの「サミcafé」など、来店したくなる店づくりを強化している

「ハイタッチな接客」のレベルを上げることを11月から始めている。猛烈な接客プロのような集団のモデル店を作り、そこから波及させる。「ハイタッチな接客」のイメージはパートまで含めて理解してくれて、実際に接客レベルは上がってきているが、どこまでやるべきなのかがわからないので、突き抜ける店を作ってみて、そこを標準にしてそこまで上げる。

やらされている感があってはだめで、モデル店は募集して、各ブロックに1店舗ずつある。王子桜田通り店(東京都北区、17年3月開店)は、もともと接客ナンバーワンになると宣言している店舗で、そこいうところが手を上げてきている。

――PC(プロセスセンター)の活用や母店から周辺店舗に商品供給する取り組みも他社では増えている。中長期の物流計画は

2018年~19年に精肉中心のPCが稼働する。あわせて都心への出店も計画している。賃料が高いので、バックヤードの縮小も課題だ。それにあわせて新しい物流を構築する必要がある。一方で、(精肉部門が店内で販売する素材を調理する)グリルキッチンなどで、出来立ても強化していく。即食系商品は最終工程のインストア加工にはこだわっていく。PCやメーカーを活用して、キット化による効率化も行っていく。

――成城店(東京都世田谷区、2011年10月開店)から導入した新MDを進化させてきた。他社はバイオーダーやグローサラントなどを導入している

新MDは「素材の惣菜化」から始まり、今後は惣菜の冷凍化なども考えられる。広義の惣菜という意味では、違う切り口の惣菜も増やしていく。MDの広がりを模索中だ。ただ、我々は外食をやるのではない。今は料理の手間を省きたいから惣菜になる。我々は家事の代行業だ。バイオーダーはできたての最先端だが、SMがそこまでやるべきか。その前にやるべきことがまだあると思う。

〈出店加速、都心へ小型店も〉
――来期以降出店を加速させる。その中に都心への小型店も含まれている

当社は山手線内に既存店が2店ある。千駄木店(東京都文京区)は売り場面積200坪の小型店だが、年商20億円の実績がある。バックヤードは狭いが、効率よくインストア加工も行っている。久我山店(同杉並区)が150坪、笹塚店(同渋谷区)が180坪など小型店のDNAはある。

SMなのでCVSのような不足感のあるMDはだめ。新MDを取り込んだ200坪の店とはどういうものか。レジ前を酒売り場にすれば、昼間にレジに顧客が並んでも迷惑にならない、ベーカリーは是非入れたいなど、いろいろ考えている。都心は夜間の5倍の昼間人口があり、これをどう取り込むか。ワンフロアにこだわらず、2フロアでもいいと考えている。

〈食品産業新聞 2018年1月1日付より〉