〈新春インタビュー2018〉イオンアグリ創造 代表取締役社長・福永庸明氏 若者が働ける環境整備が重要

イオンアグリ創造(千葉市)は、2009年7月に茨城県牛久市の耕作放棄地対策事業への参画を機に、第1号農場を開場した。現在では全国21カ所、計350haの直営農場と、約70カ所のパートナー農場から、年間約100品目の農産物を生産し、イオングループ各店舗に供給・販売している。収穫した野菜を24時間以内に店舗に供給する「朝採れ商品」など、付加価値の高い商品に強みを持つ。

17年1月には直営農場初の有機JAS認定を取得。6月には埼玉県久喜市に次世代施設園芸埼玉拠点が稼働した。社員数は正社員163人、パートを含め500人だが、退職者はほぼおらず、社員全体の40%が女性で、農場長も女性が多いという。

――事業の概要について

北海道から大分まで、全国21カ所で農場を展開している。全農場で、世界基準の農業生産工程管理「GLOBAL G.A.P.」(グローバルGAP)を取得しており、食品の安全、働いている従業員の安全性、環境に対する保全を生産工程の中の大きな柱として取り組んでいる。当社の従業員がトラクターに乗り、肥料を撒いて、農地を耕すなど、自分達で農業を行っている。

平均年齢は28歳で、農業界の平均年齢69歳の半分以下の若さだ。2014年から新卒採用を本格的に開始した。初年度は1万人のエントリー、4000人の応募があり、実質40人を雇用した。100倍の倍率で優秀な学生が入った。大学院で修士号や博士号を取得した人も農業をやりたいと入社している。農業に若い人が来ないのではなく、働く環境さえ整えると、農業をしたいと思っている。

――貴社の強みについて

「今朝採り商品」として、24時間以内に店舗に商品を届け、収穫時間も記載している。時間の記載は根拠が必要となる。すべての商品をバイヤーが確認することはできないため、通常のSMでは難しい。グループとして農業を行うところと販売を行うところがあるからこそ可能な取り組みだ。

24時間以内に店舗に提供する取り組みは、全国100店舗以上で実施し、収穫時間の記載は60店舗で実施している。関西では兵庫三木里脇農場(三木市)から商品を納入し、ダイエー神戸三宮店(神戸市中央区)でコーナーを設けている。先般のブラックフライデーでは、野菜のセット販売を行った。予約をしてもらい、後ほど収穫したものをお客にダイレクトに届ける。鮮度を重視し、お客に収穫体験もしてもらうという、グループ初の取り組みとなった。こういった形で農場の現場と小売とお客が繋がっていくことが大事だ。

――6月に稼働した次世代施設園芸埼玉拠点について

我々はここでトマトを栽培している。日本ではまだ確立されていない「低段密植栽培」を採用している。トマトは基本的に長段栽培で、長く伸ばして30~40段ほどにするが、これは4段くらいにとどめて、もう一度新しく苗を植えて収穫する方法だ。農業現場では、長段になると高いところの収穫が必要になる。当社でも高齢者をパート雇用しており、安全性を考えて、胸元くらいの高さで収穫できるトマトの栽培方法の確立にチャレンジしている。この農場の特徴は、木で赤くなったトマトを収穫し、店舗に供給していることだ。トマトは基本的には青い状態で収穫し、流通過程で赤くしているが、24時間以内に店舗に届けることができるので、真っ赤に熟した状態で収穫できる。お客からもメールや電話をいただくなど評価が高く、おいしさにつながっていると実感している。夏場にトマトがあまり出ず、真っ青なトマトが店頭に並んでいる時も、真っ赤なトマトを供給することができる。「イオンスタイル高崎駅前店」(群馬県高崎市)の店頭では、「比べてください!この赤さ!」とPOPで訴求し好評だった。

また、我々の農場では有機JASの認証を取得し、基盤となるグローバルGAPの上に自分たちの付加価値を加えるための取り組みを始めている。現在は、埼玉日高農場(日高市)、福井あわら農場(あわら市)、大分臼杵農場(臼杵市)、大分九重農場(玖珠郡)の4農場で取得しており、兵庫三木里脇農場でも取得に向けてチャレンジしている。

〈“今朝採り商品”は「高くても購入する」との声〉
――販売店舗と価格は

全国で数百店舗に供給しているが、キャベツや白菜など単品で、ダイエーのようなコーナー展開ができているのは60店舗ほど。グループ全体への供給量は1%に届くかどうかだ。グループ全体の農産物を考えると、当社だけで100%提供することは考えられない。パートナー農場と一緒になって、安全性や鮮度を供給していく。

お客のアンケートでは、「今朝採り商品」であれば1.2倍から1.3倍でも購入するという声があり、そのくらいの単価で販売している。「今朝採り商品」でない場合は市場の相場に引っ張られる部分はある。

〈次の農業の形をつくる〉
――今後の目指す方向性は

農業には様々な課題がある。高齢化や耕作放棄地だけでなく、農業自体に労働基準監督署の適用除外があり、休日なし、残業なしと書いている。深夜労働以外は基本的に残業代をつけなくてもいい。そういった農業のあり方はおかしい。児童労働ですら農業の場合は容認されている。家族経営でもともと行っていた背景もあるが、世界の流れはフェアトレードで、児童労働は駄目と考えられている。法律自体を変えていかないといけない。克服していく必要のある課題だ。

――黒字化までの道のりは

農場ごとで見ると、黒字化できているところも出ているが、1つの農場は黒字化に最低5年はかかる。耕作放棄地から始めるケースが多いので、農場トータルでみるとまだまだで、10年くらいで形にしていきたい。残業代も支払っており、他の農業者に比べて人件費の負担は大きい。しかし、これができないとこの先の農業はないかもしれない。何とか次の農業の形を当社がつくりたいと思っている。

〈食品産業新聞 2018年1月1日付より〉