VTuberは新たなカリスマ販売員となり得るか 「バーチャルプロショッパー」本格提供開始、量販店に導入も

「リテールテックJAPAN」アドパック社のブースで展示された「バーチャルプロショッパー」
VTuberは新たなカリスマ販売員となり得るか――。大手量販店などに販促提案を行うアドパック社(大阪市中央区)はこのほど、VTuberの技術を応用した「バーチャルプロショッパー」による“対面販売”で販促を図る「バーチャルプロショッパー・ソリューション」の本格提供を開始。すでに昨年12月にはスーパーの平和堂で採用され、今年3月から別のチェーン店でも採用が決まっている。

VTuber(ブイチューバー)は、クリエイターなど実在の人物の代わりにWEB上の動画に登場し、配信を行うCGキャラクターのこと。動画投稿サイト「You Tube」上で使われた「Virtual YouTuber」(バーチャルユーチューバー)から始まっている。

3月5~8日に開かれた展示会「リテールテックJAPAN」(東京ビッグサイト)会場で、アドパック社はスクリーン上の3Dの女性キャラクターと実際に対話できる展示を行った。キャラクターの動きや表情は、モーションキャプチャーなどの技術により、離れたスタジオに実在する人間の動きに合わせてリアルタイムで変化する。

小売業界ではAI(人工知能)による接客も将来的には期待されているが、「柔軟性の高い会話はまだ難しい」(アドパック社担当者)。「バーチャルプロショッパー・ソリューション」では、販売の訓練を受けたスタッフらがキャラクターに扮することで、より親近感を持ってもらえるようになる。「AIとは違い人が動かしているため、対面と変わらないコミュニケーションを行えることも特徴」(同)。

〈平和堂ではPB商品の売り上げが増加〉
「バーチャルプロショッパー・ソリューション」では、「バーチャルLIVEな買物体験」をテーマに掲げている。導入先企業のオリジナルのアバター(キャラクター)や、既存の所属アバターによる対面販売を通じて、各企業のファン拡大や商品販売を図る。また、店頭で伝えきることが難しい複雑な説明を必要とする商品やサービスについては、SNSの投稿などで、自宅など店外での視聴を視野にアバターから訴求できる。

同ソリューションは、複数の法人・個人で構成されたプロジェクト「バーチャルプロショッパーコミュニケーションズ」と共同で開発した。販売スキルの高い人材の派遣や育成、アバター化の支援と、現場向けに最適化されたVTuber生成システムを提供できる。

この技術の実用化第1弾は、昨年12月に小売業で初めてVTuberを起用した平和堂だ。店頭の大型モニターで1日4回のライブ配信による対面販売やコミュニケーションイベントを実施した。プライベートブランド商品「E-WA!とろ~りおいしい生プチシュー」の提案を行ったところ、販売が前週比で約3倍にも伸びたという。若者だけでなく高齢者の参加者も多かった。

平和堂公式VTuber「鳩乃 幸」イメージ(上)と、昨年12月1日にビバシティ平和堂(滋賀県彦根市)で開催したイベントの模様(下)

平和堂公式VTuber「鳩乃 幸」イメージ(上)と、昨年12月1日にビバシティ平和堂(滋賀県彦根市)で開催したイベントの模様(下)

アドパック社の担当者によると、VTuberを起用したライブ配信を見た人が「ライブ配信を行っていないデジタルサイネージ(平面ディスプレイなどの映像広告)もしっかりと見てくれるようになった」という。
 
小売業では多くの店舗で人手不足に悩んでおり、商品提案に割ける余裕は少なくなっている。若手人材の流出も多いため、販売員の育成も難しい状況だ。VTuber起用が、これらの問題解決につながることも期待できる。
 
〈冷食日報 2019年3月14日付〉